第5話

199x年4月5日、ある男の子が至って健康な赤ん坊としてこの世に生まれた。両親ともに優しい心を持っていて、息子を健全に育てるには申し分ない親である。父親は大手企業の社長であるため、お金にはかなり余裕のある裕福な家庭であった。

 男の子は5才になったときには、その優れた容姿が露になった。正確も可愛らしく愛嬌があって、周りの大人たちはもちろん、同級生にも慕われた。

10才になったときには、男の子はとてつもなくモテ始めた。その優れた美貌に加えて運動神経も抜群、成績も常に学内1位に入り込んでいたため、それらに惹かれる子供はたくさんいたのだろう。また、彼の性格は非の打ち所がこれといってなく、正義感も強かったので、僻みや妬みはあまり受けなかった。

中学生なると、彼は野球部に所属して活躍した。彼はチームを引っ張って行く力量もあったので、彼の野球チームは一致団結し、全国大会に優勝することもできた。そして、中学三年になるとその野球の才能が買われて多くの高校から推薦をもらったが、彼は別に行きたい国際系の学校があったため、そこに一般入試で入学した。もともと勉強はできたので苦労はあまりなかった。

 高校に入ると、彼は一生懸命勉強をし始めた。彼は外交官になることを決意したからだ。1年の時から彼は成績1位をキープし続けた。かと言って、彼は勉強だけをしていたわけではなく、友だちと遊んだりもしたし、それなりに恋愛もしていた。周りの人たちはきっと羨望の眼差しを彼に向けずにはいられなかっただろう。

 そして時は流れて、大学や公務員試験を経て、彼は外交官になった。夢が叶ったのである。その後結婚し、家族もできてこれ以上ない幸せを彼は手に入れた。

 「ああ、私はなんて〈幸せ者〉なんだろう…」

 彼はそう呟いた。


・・・・・・・・・・・・・


 「そして彼は、これから先も幸せに暮らし続けましたとさ。おしまいです!」

 と、天国の来世相談係は神様に報告した。 

 「ふむ…やはり恵まれすぎている…彼は最早、超幸運の才能だけでなく、あらゆる才能を有しているではないか!」神は少し怒っているようだった。

 「左様でございますね…」相談係は〈やってしまった〉といった具合に後悔しているようだった。

 「うむうう…この男はもう生まれてしまったから仕方ないが、今度からはいくら徳ポイントが貯まってたとしても〈幸運〉だけは授けないように!」神は厳しい口調で言った。  

 「りょ、了解であります!」相談係の女の子は頭を下げた。

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