第四十八話 JUST DO IT‼︎
その後―――
教室に戻ると、干物みたいになったカルティエに迎えられた。
「……どうかしたのか?」
「いえ……なんといいますか、久し振りのアウェー感に参っていまして……」
苦笑めいた顔でぐったりと項垂れつつ、カルティエはチラリと辺りを
壁があった。
物理的な障害ではない。しかし誰の目に見ても明らかな形で――見えない壁が、カルティエとアランの周りに構築されているのだ。
二人は中央列にある一番後ろの卓に着いている。他にも空いている席はあるのだが、実質占領している形だ。それだけでなく、周りの卓にも人気がない。
皆が、一つ以上の間隔を空けて座っている。
明らかに避けられていた。
原因はカルティエ――より正確に言うならば、彼女の父親とその旗下にある組織であることは疑いようもない。この国において、
それを理不尽だと憤るのは簡単だ。
しかしこの場合、カルティエ自身が過去に色々と
大して気にすることなく、アランはカルティエの隣に座る。
それから程なくして、ジュニアが教室に戻って来た。
自然な体で、小柄な少年の背中を目で追う。先程の
彼は元の席に座ると、静かに講義の準備を始める。
一方で、未だにアランを観察する素振りを続けていた。
「…………」
「…………」
―――気にする必要はない。
そう判断し、アランはカルティエと談笑を交えつつ、次に始まる講義に備えた。
ダーレスはいない。アランやカルティエが言うところの『例のアレ』が原因で、
それからとっとと退散したウィルバーに続き、カルティエもまた昨夜アランから依頼された武装の制作を急ぎたいということで、早々に帰っている。残されたアランもその場を後にして、現在はオルガン・アカデミーの敷地内にて自主トレーニングに精を出していた。
まずはランニングから。
幾つかある校庭の一つと、近くに建っている教棟の周りを走る。四十キロメートルを目安として軽く流し、体を温める目算だ。筋肉の鍛錬や、白兵戦などに用いる技術の錬磨はその後に行う。
体操を行い、程々に身体を解してから開始する。
黒い少年が走る姿を、街に設置された監視カメラのレンズが確と捉えていた。
* * *
強い人に憧れていた。
雨にも負けず、風にも負けず。どんな問題も解決できて、誰の力を借りることなくひとりで戦えて、それでも仲間がいればもっともっと何百倍もの力を発揮できて。
映画の中のヒーローみたいな、そんな人になりたかった。
それがジュニアの願い。叶えてみたい夢だ。
だからこそ彼は、自分が嫌いだった。
小柄で貧弱で引っ込み思案。話すのが苦手で、いつもおどおどとしていて頼りない。いじめっ子にやり返すどころか、言い返すことも出来ない。止めさせる方法や能力があっても、実行する度胸がない。
端的に言って弱虫。そして、そんな自分が嫌いで嫌いで仕方ない。それがアブドゥル・アルハザード・ジュニアという少年だった。
―――カウンセリングを受けた方がいいよ。
―――それはもう済んだことだろ?
―――過ぎたことにいつまでも囚われていては駄目だ。
(
全く以ってその通りだ。反論のしようもない。
だからせめて、放っておいて欲しい。だけど、そんなことさえ言えない。自分の弱さが恨めしくて歯痒かった。
変わりたい。
強くなりたい。
……正義の味方になりたいなんて、大それたことは考えてない。
ただ――
そんなジュニアにとって、アラン・ウィックはまさに理想そのものだった。
肉体的な面は言うに及ばず。不動であり不退。不屈にして何者をも寄せ付けない、卓越した精神力。彼が持つ意志の強さは異次元的であり、傍目にも常人のソレとは隔絶しているのが分かる。
例えば、以前に青空教会が起こした自殺騒動。
アランは敵の
どうすれば、彼のようになれるのか。ジュニアには分からない。
だが分からなくても、分からないなりに努力することは出来る。
「……よし」
制御下に置いた監視カメラの映像を自身の携帯端末で確認し、ジュニアは決意を秘めた表情で頷く。
彼がまず思い付いたのは模倣だった。
アランが行っている鍛錬を観察し、トレースする。……と言えば簡単にも思えるが、そう易々と問屋が卸してくれるのなら誰も苦労などしない。
軽い準備運動の後に、アランはランニングを始めた。その距離は
マラソンの世界記録は二時間一分九秒。それを考えれば、アランのスコアは超人的であると言って差し支えない。
しかも走り終えた後の彼の呼吸はほとんど乱れていない。
完全に規格外であった。
その後も、アランの様子は録画されている。
長い三つ編みを団子状に
アランと同じペースで走れるとは思っていない。ほとんど運動をしたことがないのだ。走り終えるには、きっと十倍かそれ以上の時間が掛かるだろう。酷く苦しいに違いない。それでも、ジュニアは走った。
やらなければ何も始まらないから。
弱くて嫌いな自分を変えるには、こうするしかないと思ったから。
だから、ジュニアは走る。
一周目。既に息が上がっている。
五周目。脇腹と
十周目。ほとんど歩いているのと変わらない速度でしか走れなくなった。
百周目。当に空は暗くなっているが、まだノルマには届かない。
「―――……はあっ、は……ッ! はあ、はあ、はぁあ……っ」
五時間以上かけて、ジュニアは四十キロメートルを走り抜いた。
冷たい夜気が、熱く蒸れた身体を洗う。しかし寒さは全く感じない。むしろ――十年以上前にあった異常気象『夏』の時よりも暑く感じた。
心臓が、一秒毎に炸裂する爆弾になっている。耳鳴りが酷い。沸騰した薬缶みたいに体から湯気が立ち昇り、全身から汗が噴き出ている。どれだけ息を吸っても苦しい。否、そもそもきちんと酸素を肺に取り込めていない。
舗装された硬い地面に膝を突いて
「つ、つぎ……! つぎ、は、筋トレ……っ! 腕立てと、腹筋、を……それから、えぇっと……―――わぷっ!?」
不意に、ジュニアの頭に冷たいタオルが投げ付けられた。
「…………はぇ……?」
何だろう、と顔を上げる。そして目の前に立っている人物が誰なのか認識した瞬間、ジュニアは目を丸くした。
「う、うぃっく、さん……?」
「無理に喋らなくていい。休憩は大事だ。無茶をすると死ぬぞ。―――ほら、これを飲め」
「……っ!」
淡々と告げて、手にしていたスポーツドリンクのペットボトルを差し出す。ジュニアは一も二もなくそれを受け取り、浴びるように中身を呷った。
普段のジュニアなら遠慮して受け取るのを尻込みするところだが、そんな余裕はなかった。喉を鳴らして、勢いよく飲む。飲んだ端から水分と塩分が全身に染み渡る。そんな風に感じるほど、肉体が飢え乾いていた。
「―――ぷはっ! はあ、はあ」
三分の二ほど飲んだところで口を離し、今度は呼吸に専念する。
先程までとは違って、きちんと息が吸えた。濡れた口元を袖で拭いつつ、呼吸を繰り返す。荒んでいた肺の活動は、時間を掛けて少しずつ緩やかになっていった。
火照っていた体が、段々と冷めていく。
「残りは少しずつ、ゆっくりと飲むように。それから、ここは邪魔になる。休むなら向こうのベンチにした方がいい。立てるか?」
ジュニアは頷くと、差し出されたアランの手を取って立ち上がった。
二人は傍にあった壁際のベンチに移動し、座り込む。
「…………」
「…………」
沈黙が降りた。
場に満ちるのは、疎らに行き交う人々の雑踏のみ。アランとジュニアは、無言で右へ左へ流れていく人の波を眺めている。
「あの……―――」
「―――君さ。なんで強くなりたいんだ?」
ジュニアには一切目を向けず、彼の言葉を遮るようにしてアランは問い掛けた。
「失礼だとは思ったが、一部始終は見させて貰った。君が一時の感情に任せて適当なことを言っている訳じゃないことは認める。だからこそ聞くんだが……―――なんで強くなんかなりたいんだ?」
次に言う台詞の如何によっては、アランはそのまま立ち去ってしまうだろう。
なんとはなしにそう確信し、ジュニアは俯きがちに逡巡する。考えを巡らせる。
自分の中に答えは一つしかない。だが、それをどんな風に形にしたものか。それが悩ましかった。
暫く考えてから、ジュニアは口を開く。
「……大事なものを、護れなかったから……だと、思います」
「そうか。……何があったか、訊いてもいいか?」
頷き、ジュニアは語り始めた。
それは実に在り来たりで、どこかで聞いたような話。
ただの、理不尽な不幸だった。
ジュニアが五歳の頃。
彼と彼の母親は、青空教会の一派と思われるカルト集団に拉致された。
『星の智慧派教団』。
マニトゥによる管理社会を圧政と説き、人民の解放を
青空を取り戻すことをスローガンとし、ヒュペルボレオスの上層部を目の敵とする者達。歴史上、そういった組織の存在は珍しくはないが、彼等はより輪を掛けて頭の
彼等は、『神』を信仰していた。
星辰が揃った来るべき日――神は降臨し、居丈高な権力者達を討ち滅ぼし、世界に青空をもたらす。そんな素晴らしい存在を妄想し、崇め奉っていた。
ジュニアと彼の母を
彼等はジュニアの母親の左手の小指を切断し、半裸にして、彼女の子供であるジュニアともう一人拉致して来た少年の三人を並べて写真を撮影。彼等の父にして夫――ヒュペルボレオスの要人であり、高名な碩学だった十六代目アブドゥル・アルハザードへと送り付けた。
身代金――五百万ドルを要求する手紙を同封して。
紛れもなく犯罪行為である。故にマニトゥを始めとして
身代金の用意とは別に、犯行グループの拠点の特定と人質の確保を同時進行する。誘拐事件における常套的な措置だ。
カチナ・オルガンは懸命に働いたが、しかし犯人達や人質の居所は
そのまま事件発生から一週間後、人質と身代金とを交換する約束の日が訪れる。
その日。
受け渡しの現場を、
警察から情報が漏れていたのだ。
警察はカチナ・オルガンと同じく国営の機関であるが、事実上の下部組織という扱いであり、カチナ・オルガンから要請があった場合、警察は捜査で得た情報の全てを提供しなければならない。一方で、カチナ・オルガンの情報が警察に開示されることはない。
また担当していた事件の捜査権の移譲を強制されることも多いため、警察組織の人間のほとんどがカチナ・オルガンの存在を疎んじている。
そういった背景があり、警察はカチナ・オルガンへの意趣返しとして意図的にトライアドの下層構成員に情報を売った。商売敵の足を引っ張り、その上で手柄を横取りする――そんな下らない思惑で、だ。
結果、トライアドはまんまと人質と身代金の両方を奪い取って逃走することに成功したのである。
しかし彼等の犯行は計画性のへったくれもない行き当たりばったりな独断行動であり、従って組織の支援は受けられなかった。後ろ盾のない彼等は数日と経たない内に、実に呆気なく逮捕される。
無事に確保された人質は、一人だけだった。それがジュニアである。
ジュニアの母は、下水道からその遺体が発見された。
遺体の状態は非常に凄惨であり、第一発見者であった下水道の整備士は「見付けた時は豚の死骸だと思った」と証言している。
原型を留めないほどに遺体は破壊されていたが、直接の死因は窒息死だった。
手足の指と、腕と足それぞれ肘及び膝の下部分が全て切断され、鼻は削がれ、目玉も両方とも抉り取られていた。首を絞められたことで膨らんだ舌が口から突き出ており、歯は前歯の上下が三本ずつ残っているだけだった。また頭部には幾つもの殴打の痕跡があり、
暴行による殴打は腹部にも集中しており、肝臓が破裂していた。そして陰部は執拗に破壊されており、膣には複数人によるものと思われる激しい強姦の痕跡と、爆竹や瓶などの異物を挿入され内部で破裂させたと思わしい傷が残っていた。
手足の切断や鼻、歯、目玉の破壊は星の智慧派教団が。それ以外の暴行は、全て
前者は教義に則った儀式の一環として。
後者はただ単に、身勝手な暴力の捌け口として彼女を貪り尽くした。
そしてジュニアは――被害者の子供であった彼は、その全てを間近で観せられた。
幸いにも彼には怪我一つなかったが。
幼かった彼が心に負った傷は、計り知れない。
総じて、あまりにも理不尽な不幸だと言えた。
大抵の人間は、先の遺体の状態を聞いただけで胸を悪くするだろう。人によってはショックで嘔吐し、果ては失神してしまうこともあるかもしれない。
凶悪な事件だ。
だが話の構造としては在り来たりだ。歴史を紐解けば、似たような事件は幾らでも挙げることができる。映画や小説などの創作物の中にもあるだろう。人類が慢性的に抱えている、悪意という名の病。これは、それが発露しただけの話だ。
それ故にあまりにも退屈で、これ以上ないというくらいシンプルに
「……あの時。おれが強ければ、なにかが変わった……とは、思いません。でも、もう二度と、あんな思いは、したくない。絶対に、嫌なんです」
だから、力が欲しい。
許せないものを、
星の智慧派教団と
それで事件は終わった。めでたく解決し、大団円を迎えた。
めでたし、めでたし――というけれど。
「……よく、言われるんです。『犯人、きちんと捕まってよかったね』、って。『裁きが下ったんだから満足でしょ』、って。……ええ、おれは、満足です。
樹に空いた洞のような、透き通って見える硝子玉のような。
言葉とは裏腹に、病的に傷んだ心根を剥き出しにして、ジュニアは言う。
「でも、母さんがどう思ってるかなんて、分からないじゃないですか。母さんは、納得してるでしょうか。あんなに苦しんだのに。痛い、助けてって、何度も叫んでたのに。なのに犯人達は処刑台で首を括られて、ちっとも苦しまずに死んで。他の人達は今も刑務所でのうのうと生きてて。私欲のために、バカみたいな考えで情報を流した人とかは、ただ社会的な罰を受けただけで、刑務所にも入らずに隠居して。それで終わりだって、
顔を伏せ、歯を食い縛る。骨の軋む音がはっきりと聞こえた。
後半の語調は
「…………」
アランはただ、黙してジュニアの告白を聞く。
「……でも、もう、おれにできること、ないから。だから、おれ、自分と同じ思いをする人を、一人でも減らしたいん、です。だから、『ココペリ』を目指して、て。強くなりたいのも、それが理由、です……!」
面を上げるジュニア。その顔には、晴れ晴れとした笑みが張り付いている。童顔に気迫を込めて「みんなの為に強くなりたい」とうそぶく姿は健気過ぎた。
―――痛ましい。
健全なようでいて、あまりにも不健全極まりない。
怒りは原動力になる。燃え盛る激情の前では、困難など何一つとして存在しない。しかしその一方で、長く持続させることは
感情と記憶は、時が経つにつれて風化する。
同じ怒りをずっと抱え続けることは不可能だ。誰にも出来はしない。だが仮に、もしも可能な者がいるのなら……―――ソレは、
そういう意味では、ジュニアは実に人間らしいと言える。過去に囚われてはいるものの、必死で前を向こうとしているのだ。その志が立派であることは疑いようもない。
(……聞くんじゃなかった)
アランは顔を両手で覆い、鬱々とした調子で溜息を漏らす。
どうかしたのか、とジュニアが小首を傾げる。そんなジュニアを無視して、アランは立ち上がった。
「君の動機は理解した。納得もできた。……俺でよければ、鍛えてやってもいい」
「……ッ! ほんとですか!?」
「ああ。だけど、そうだな……俺の前でそうやって取り繕うのは止めろ」
言われていることが分からず、ジュニアは首を傾げる。
アランは言葉を重ねた。
「いや、言い方が悪かったな。君の場合、
「それは……いや……そんな、こと、は……」
「取り繕うなと言っただろう」
「わわっ!? い、いひゃい、いひゃいれふっ!?」
手が伸びて、ジュニアの頬を軽く抓った。
ぐにぐにと頬肉を指先で弄びながら、アランは言う。
「何を否定することがある? 憎い奴や嫌いな奴に『不幸になれ』と願うこと――これは人間として、ある意味でとても健全な反応だ。分かるか?
どんな罪も、罰を受ければ許されるのか?
傷付けられた尊厳が、それで癒えるのか?
謝ったら許されるのか?
謝られたら許さなければならないのか?
答えは否だ。絶対に、断じて―――――否だ。
許さないこと。それもまた、人が持つ権利だ。誰にも違えることの出来ない唯一の理だ。決して侵害されてはならない。何人であろうと、阻むことは許されない。
「―――――」
呆けた風に、ジュニアが目を丸くする。
まるで天啓を受けたかのような表情だ。
実際、彼にとってアランの言葉には、それだけの衝撃があった。
『許さない』ことを許さない。『許せない』ことすら認めない。
周りにいるのは、過ちを赦すことを美徳として尊び、その在り方を押し付けてくる――非常に
当たり前のことではある。
法治国家において、私的な報復は絶対に肯定されない。どんな極悪人であろうと人権がある。故に犯罪者は罪を償うためではなく、社会復帰のために刑務所で更生するのだ。
どれだけ憎くても、
それが出来ない者は、異常者の烙印を押される。
だからジュニアは、自身の心の裡を誰にも打ち明けられなかった。……打ち明けようとすら、思えなかった。
けれどアランは、ジュニアがずっと独りで抱え続けた衝動を肯定した。誰よりも真摯に向き合ってくれた。
嬉しかった。
胸の奥底から、熱いものが込み上げてくる。気が付けば、ジュニアは泣いていた。
アランは無言でジュニアの頭にタオルを被せてやる。
その姿を見て、ふと――思った。
まるで――昔の自分を見ているようだ。
アランは辺りを見回す。だが、黒い犬の姿はどこにもなかった。
(そういえば、最近は見かけないな。……いや、当たり前か。俺がこの手で縊り殺したんだから)
壊れて解離した精神はそのままに。しかし、以前の青空教会の事件以来――黒い犬の面の子供は、すっかりアランの前から消え去っていた。
両手を見詰め、呆ける。
暫くして、ジュニアの呼び掛ける声で現実に引き戻された。
「あの、大丈夫、ですか?」
「……大丈夫だ。それより行くぞ。お望み通り、今から徹底的にみっちりと鍛えてやる。止めたいって言っても聞かないからな、覚悟しろよ」
「はい……! よろしくお願いします、ウィックさんッ! いえ、教官!」
「教官はやめろ。アランでいい」
立ち上がり、深く頭を下げるジュニア。その頬を、再び抓る。
満足したところで開放してやり、アランは踵を返して歩き出した。その後を駆け足気味にジュニアが追う。
アランは案を指折り数えながら、トレーニングメニューを考える。
「基本はランニングと障害物走に、腕立て伏せや腹筋なんかの筋トレ、それから組手とか体捌きの格闘訓練と……あとは、そうだな……適性の問題があるが……」
ちらり、と横目でジュニアを見やる。
そして脈絡なく、問い掛けを投げた。
「ジュニア。こと白兵戦闘における最適解――有り体に言って、一番強いのはなんだと思う?」
「えっ? えぇーっと……それって、その……もしかして、必殺技的な話ですかっ?」
普段は暗く落ち込んでいる瞳を輝かせ、ワクワクと語調を弾ませて尋ねる。大人しい性質のジュニアだが、年頃の男の子らしくこの手の話題には興味があるようだ。しかし「違う。そんなものはない」と、アランによってバッサリと斬って捨てられる。
淡々と、アランは解答を告げる。
そのあまりに身も蓋もない内容に、ジュニアは目を丸くして絶句した。
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