不眠症の青年は毎年、一年に一度目覚める彼女の元へ通い、夢の話と現実の話を交換する。眠れない理由と眠り続ける理由や、わずかな時間を重ねることで起こる変化が丁寧に描かれている。読み終えると優しい気持ちになれる作品。青年と彼女の視点を行ったり来たりするのだが、この切り替えがとても上手く、両方の心情を知りながら読むことで、ラストがすとんと心に落ちてくる。青年の一人称だったら、これほどは楽しめなかっただろうなと思う。