12/(了)
雪降る街の中を、彩可と母さんが待っている家へと向かって歩いて行く。
この一年でも、街はだいぶ変わった。倒壊していた建物があった場所が更地になっていたり。ひび割れていた道路には修繕が施されていたり。曲がった電柱が撤去されていたり。一年前にはあったお店がなくなって、新しいお店がオープンしていたり。
頭の中は整理されないままで、様々な思念が巡っては消えていく。不思議な出来事のこと。復興のこと。家族のこと。恋人のこと。友達のこと。未来のこと。過去のこと。
ただ、それらは、容易に答えが見つかる類のことではないように思われた。
その時、スマートフォンが震えて、彩可からのリンクドゥの通知があった。今夜は鍋だよという、たわいのないメッセージだった。
そうだな。
不思議な世界と普通の世界の壁が崩れる時がくるかもしれないし。また大きい災害も起こるかもしれないし。国は財政破たんするかもしれないし。あるいは今の時点では想像もできないような破綻的な出来事もやってくるかもしれない。
そういう時にせめて、大事な人の元に駆け付けられる自分でいたい。だったら今できることは、そんな時に少しでも余裕が出せるように、この維持されている日常の中で、力を蓄えておくことと。力を蓄えておけるように、この日常という名の街の生態系を、途切れさせないでおくことだけという気がする。
明日からは、仕事も入っていた。とりあえず、今日は。
「鍋を食べて、寝よう」
/続・妹の紋章~~途切れぬ永遠色のチェーン・了
『非幸福者同盟』へ続く/
続・妹の紋章~~途切れぬ永遠色のチェーン 相羽裕司 @rebuild
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます