風俗店店員

□月給:250k〜

□期間:六ヶ月

□支払日:月末締め翌月払い(規約により日払い可:大体3〜5k)


□備考:残業代込み固定給。スーツ着用。週休一日。夏と冬にボーナス有。長期休暇は店員が交代で取る為、シーズンからは外れる。週に一度「通し」と呼ばれる長時間業務がある(ゆえに時給換算すれば然程の高給とはならない場合が多い)


□収入:★★★☆☆

□兼業:★☆☆☆☆

□危険:★☆☆☆☆

□ネタ:★★★★☆


□勤務形態・実働時間:8〜20時間(早番と遅番の二交代制)

 早番:07時出勤、17時退社

 遅番:16時出勤、27時退社

 通し:07時出勤、27時退社

 

(ちなみに風俗嬢にも早番と遅番の区分があり、ざっくりとは開店から17時までが早番。そこから閉店までが遅番となる。もちろん間を跨ぐ子もいるから、厳密な定義では無い)




□至るまでの経緯

 復興作業の賃金が無事振り込まれた事を確認した筆者は、福島を離れ神奈川の某工場で半年ほど働いていた。しかし日勤のみと給与に乏しく、やがて居酒屋での副業にも勤しむ中で「待て、一本に仕事を絞ったほうが効率的では無いか」との思いから横浜は関内、夜の街の門をその手で叩くのだった(なおその際の検索キーワードは「関東・男・高収入」という極めつけに露骨なもので、筆者は早々に安直なる決断のしっぺ返しを喰らう羽目となる)




□業務内容

 一口に風俗店と言っても色々あるが(ソープ、デリヘル、ヘルスにおっパブと)ここでは筆者が勤めていた店舗型のヘルス店(関東各地に展開する中堅チェーンの、手コキ店と人妻店)に限定して話を進める。


 ※一応補足しておくと、手コキとは女の子が手でイチモツを扱いてくれるサービスを指す。基本料金では下着のみが露出で、そこにオプションでタッチや生乳、場合によってはゴムフェラがつく。内容がソフトなだけに若い女の子が在籍しているケースが多い為、英世数枚で気楽に風俗を楽しみたい諸氏にはお勧めしたい。一方人妻店についてだが、リアル人妻は在籍のうち半分程度でしかない事を予め断っておく(もっとも出勤日である程度の判別は可能だ。例えば連日出勤をガッツリ入れている嬢は独り身、逆に出勤日が不規則だったりまちまちなんて場合は、周囲に隠れて風俗業に身をやつしているケースといった具合にだ)しかし団地妻との官能的で背徳的なアヴァンチュールを味わいたい諸氏の幻想を打ち砕く様で申し訳も無いが、エロ漫画に出てくる様な若くピチピチで且つ母性をも有する女性は先ず居ないので注意しよう(大概はただのオバサンだ)なお風俗嬢全般に言える事だが、彼女たちの喫煙率は非常に高い。キスの際に煙草の臭いがしたからと言って驚かない様に。




 さて話が逸れた。風俗店員の基本的な業務内容だが、お店で働く女の子の勤怠管理と接客、それから終業後の店内清掃に絞られる。とは言え早番と遅番では内容が変わる為、週に一度、休日の前に挟まれる俗称「通し」を基準に説明を行おう(※二交代制の店舗にあって、早番から遅番までをぶっ通す業務を「通し」と呼ぶ。つまり自分が休んでいる日には、他の誰かが「通し」をやっていると考えて貰って良い。それだけギリギリの人員で回っているという事だ)




・6時50分:出勤。

 タイムカードを切り開店の連絡を主店舗に入れる。

 PCを起動しサイトと更新ソフトを立ち上げる。

 釣り銭の金額を確認する。

 各部屋の電気と、ローションウォーマーのスイッチを入れる。


・7時00分:開店。

 外に看板とマットを出し、ホワイトボードやフロントに女の子の写真を置く。

 軽く店外の清掃を行う。

 サイトの更新、各媒体の更新を行う。

 (但し開店のタイミングでは女の子が居ない事が殆どだ)


・8時00分〜:女の子出勤

 この辺から女の子がぽつぽつと顔を出す(大概は10時、11時から)

 客もぽつぽつと来始めるが、写真の子の大半は出勤していない為、とりあえず指名を取らずにぶち込む努力をする。


・14時〜15時頃:店長出勤

 状況を報告。通しの場合はここで休憩に入る(他のチェーン店は3,4時間貰えていたそうだが、何故かうちの店舗だけは30分も無かった)


・16時30分頃:遅番スタッフ出勤、早番女子精算

 遅番のスタッフにフロントを任せ、店長か通しのスタッフが女の子の精算に入る(※精算とは、女の子の稼いだお金を支払う事だ)ここでアフターケアや次回の勤務を聞き出さなければならない為、基本は店長が率先して行う事が多い。


・18時〜:繁忙

 会社帰りのリーマンなどで店が賑わい始める。つけまわし、案内の間違いには注意しよう(※つけまわし=客をどの嬢につけるかの判断。例えば新規の客なら売れ筋の娘に。常連でフリーなら売れてない子に。新人には面倒な客をつけないと言った具合に。割と重要)


・24時:閉店

 店舗型ヘルス店は、風営法の都合上ここで閉店となる。

 スタッフが売上とレジ金の確認を行う間、店長は女の子の精算を終え、ドライバーまで送り届ける。

 今度は店長が売上を持って主店舗へ向かうので、スタッフは個室の清掃に入る。


・25時:店長帰宅

 

・27時:スタッフ帰宅

 うちの店長はやたら厳しかったので、なんやかんやしているうちに帰宅が明け方になった事もしばしば。なお大人の事情でタイムカードだけは途中で切らなければならない。




□基本業務は楽な仕事

 この流れを御覧頂ければ分かると思うが、特に難しい仕事は一つとして無い。よって接客業を窘める様なら問題無くフロントは務まる。というか、普通の事を普通に出来ればそれだけで重宝される(ここには他所で通用せずに流れ着く、どうしようも無い人間も比較的多いのだ)




□本職の画像・映像のスキルは活かせる

 女の子の写真加工や、サイトに載せる動画の編集、イベントやキャンペーンのチラシ作成など、PhotoshopやAfter Effectsを扱えるのは大きな武器となる。大概大手ともなればデジタル専門の部署を抱えているケースが多いが、それでも下地をこちらが作れるとなると打ち合わせが楽なもので、実際に発注から仕上がりまでの時間を大幅に短縮する事が出来た。


 なお余談ではあるが、所属コンパニオンの年齢が若ければ若い程、基本的に修正は少ない(夜の街にデカデカと貼りだされている写真は見栄えは良いがガッツリしたプロのメイクと、それなりのフォトショ補正がかけられている)一方で未加工のぱっとしない素人の写真は、逆に言えばダイヤの原石とも捉えられる為、そこで惹かれたのなら迷わず選んで(容姿上の)失敗は無いだろう。


 さらに付け加えると、嬢の判断材料となるのは彼女たち自身のブログだ。自撮りがいつも同じアングルだったり、胸や脚の特定の部位しか映していない嬢は、先ず間違いなく地雷(余り可愛くない)だ。逆にほぼ連日の様に来てくれた客(常連含む)への謝辞と出来事を書いている嬢は、仮に見た目がいまいちだったとしても人気が高い。サービス重視で選ぶのなら一考の余地があるだろう。




□給与はすぐに増えないぞ!

 またも話が逸れた。数多の求人媒体には即時昇給とあるが、それも上司に気に入られればの話。簡単に言えばキャバクラや水商売の店長経験者は覚えが目出度いが、そうで無いなら諦めろという事だ。デジタルな分野に興味を示さない旧態然とした社風であるなら、恐らく貴方が何をした所で出世は遠い。実際筆者もTwitterを始め幾つかの宣伝法に着手し、繁忙期で無い6月の売上を100万ほど上げてはみたが梨の礫で「100万上げればすぐにでも店長だ」と意気も軒昂だった上司の、直後の露骨な態度の翻意に相当な失意を感じたものだった。




□そしてスタッフはトブもの

 拘束時間が長く、世間にも日陰なこの仕事、ちょっとした拍子にスタッフは居なくなる。「あれ、開店連絡が来ないぞ?」→ 店長に連絡が行く → 店長出社 → 他のスタッフにも連絡が行く → スタッフ集結 →「あいつは何処だ?」→ ポストに残された鍵、繋がらない電話、開かないドア → ああ(察し)


 ちなみにスタッフがトブ(唐突に辞める)とどうなるかと言えば、残されたスタッフの「通し」の日数が増える。元々ギリギリの人数で店舗を回す為の苦肉の策な訳だから、辞めたスタッフの代わりがやって来るまで、朝7時から夜27時までのクソの様な勤務形態が続くのだ。


 実際筆者も数日連続で「通し」をする羽目になったが、これは近所の酸素カプセルに通うことで何とか凌いだ(というか三ヶ月目から、酸素カプセルのフリーパスを買って毎日行っていた。関内には安い酸素カプセル店がある)そしてそんな最中(友人の結婚式とは言え)店長が1人夏休みを取った事で、筆者は辞職の決断がついた(余談)




□固定給だから残業代は出ないぞ!

 こうして血を吐く様に「通し」を重ねても、残業代込みの固定給な所為で給与は一律。離職を決意した月の労働時間を時給に換算すると何と600円を余裕で切り、なぜこんな仕事を選んだのかと筆者は暫し空を見上げた(ぶっちゃけ前職の自動車工場のほうが余裕で稼げていた)




□結局は店舗次第

 そんな風俗店勤務だが、周囲の店舗を見るともっと気楽なものだった。仕事中に携帯は見ているし、女の子と一緒にソシャゲをしているスタッフも少なくは無い。要するにうちの店舗だけが給与に見合わずスパルタ式だったというだけの話で、筆者の話を風俗店員を目指す諸氏が鵜呑みにする必要は全く無い。




□だがしかし犠牲は要る

 ただスタッフがさっさと仕事を終えて帰るというスタイルは、換言すれば掃除や宣伝の手を抜くという事実にも繋がる。汚い店舗はそれに見合うだけの嬢しかおらず、壁に向かってぶつぶつと独り言を繰り返す嬢、明らかにヤバいアレをやっている嬢、ホストに貢いで首の回らない嬢と、一緒に居てこちらが病んでしまう事もままといった具合の空気が漂い始める。そういう意味ではうちの店長の方針も一概に誤りとは言えないのであった(筆者が担当した店には、そこまでの女の子はおらず、控室などは比較的明るいものだった)念のため補足まで。




□じゃあどんな人が風俗店員に向いているの?

 冒頭の通り「普通に接客が出来て、普通に業務がこなせる人」そしてもう一つの絶対条件は「店の子に興奮しない事、手を出さない事」これがとても重要で、筆者の場合は好みの女性がいわゆる「地味子」つまりは風俗店に面接に来るキャバ嬢系の女の子とは全く逆だった為にそれが奏功した。なお店の女の子に手を出す行為は就業規則でも禁じられているから、絶対にしない様に(バレて即刻クビを切られるスタッフもたまにいる)


 ちなみに新人の女の子が他店に入ると「誰が可愛い?」なる話題には必ず推移するのだが、筆者が「この子凄い可愛いですね」と言った子には、店長もスタッフも首を傾げる事がままだった。とは言え決してブス専な訳では無い。筆者の目には地味でメガネを掛けた、小柄なショートカットの女の子は確かに可愛いのだ。




□恋愛はNGだけど、好かれなきゃ女の子はシフトを入れてくれない

 これが少々難しい。勤務する女の子にとって、働ける店は別にうちじゃなくたって構わない訳で、要するにフロントスタッフが不潔だったり対応が悪いと、途端に勤務自体を減らされてしまうケースがある。よく街を見回して貰えば分かると思うが、客引きをしている女の子の側に立っている男性スタッフは、皆比較的イケメンだったり、清潔感を漂わせてはいないだろうか。つまりはそういう事で、特に大それた事をする必要は無いから、身なりだけは整えておこうというそんな話だ。




□それって結局は擬似恋愛?

 風俗という職業の特性上、女の子が相手をする男性客は基本的にイケメンでは無い。いやそもそも女にモテる男が足繁く風俗店に通う訳が無い。従って就労につれ、女の子のイケメンラインはどんどんと下がる(これはスタッフも同じで、稀にフツメンが客として来るだけでも「イケメンか?!」と錯覚する様になる)為、例えばスタッフが清潔な身なりの、話を聞いてくれる真面目なフツメンだとしたら、それだけでも「格好いい」と思って貰えるケースがままあり得るのだ。


 加えて仕事上の悩みに乗ってくれるのも男性スタッフだ。もちろんスタッフとて善意でそれをやる訳では無い。女の子の管理(ケア)も含めたフロント業務である以上、どんな取り留めもない話でも(それが彼氏や夫との痴話喧嘩であったとしても)真摯に頷いて聞き役に徹しなければならないのだ。その結果として齎される「あの人がフロントなら出勤を増やそう」という女の子側のリアクションこそが、フロントがフロントとして頑張った末の成果とも言えるだろう。それが擬似恋愛と言えば確かにそうで、二人きりの時に連絡先を貰える事も珍しくは無い。




□あとはお金

 もちろんただイチャイチャとしてりゃあいいという話でも無い。飽くまでも女の子は稼ぎに来ている訳だから、フロントはフロントできちんと客を付けてあげる事は必須だ。そしてきちんと大を何枚か渡した上で労い、女の子の一人一人を特別に見ているんだという姿勢を持ち続けなければならない。そうであればこそ、豪雨や台風で皆が出勤を渋る中でも、傘をボロボロにして女の子たちは出勤を頷いてくれる訳なのだから。




□え、待ってくれ。店の女の子とはヤれないの???

 いや、昔は系列店の女の子を互いに味見し合ったそうなのだが、時代に伴い今は無理だ。当然だが面接で変な真似も出来ないから覚えておいて欲しい。逆に気をつけるべきは美人局つつもたせ紛いの面接希望で、後日「セクハラを受けた」と夫らしきを伴い恫喝に訪れる女性がいる。そういうトラブルを避ける為にも、現在は面接そのものもクリーンに、初期段階での実技研修は行わないようになっている。ただし入店後、女の子の同意を得た上での動画の撮影(目隠し有り)などはあり得る(それによる客引きは、結局女の子自身の利益にも繋がるからだ)




□しかして希望せよ。風俗店へは行けるぞ

 これもケースバイケースだが、筆者の場合は誕生日のプレゼントとして店長と二人で競合店舗に連れて行って貰った(他にもドルガバのネクタイを頂いたりと、筆者個人にはそこまでの店長への悪感情は無い。夏休みの一件こそ恨んじゃいるが)

 

 もともと女の子の店で遊ぶ経験自体が無かった筆者の、これが風俗初体験となる。人気人妻店の50分コース。後に聞いた話では、店長は地雷(※見た目やサービスがあまり良くない嬢)だったらしいが、筆者はショートカットの、むっちりとした30代半ばの女性が迎えてくれて、最初のキスこそ煙草の臭いがしたものの、お風呂、フェラ、69,指入れ、ボディリップと、50分と考えれば充分な内容のサービスを受ける事が出来た。次に行った手コキ店も、コスプレで黒髪の可愛い子が出てきてくれて(ただしもう疲れきった筆者の息子からは白い白濁は飛び出さなかったが)なるほどこれが風俗かと暫し感慨に耽ったものだった。

 

 そうでなくとも女の子たちと絡む機会は増える筈なので、夜の世界に払う金は無いぞという方は、試しに一度門を叩いてみる程度の価値はあるのではないだろうか。




□怖い人って出てこないの?

 居ない(笑)寧ろ下手なチェーンの飲食店なんかよりよっぽど堅気。きちんと一ヶ月前に退店を申し出れば受理されるし(筆者の場合人員の都合で店長から引き止めを喰らったが)給与だってちゃんと支払われる。まぁ残業代込みの固定給が些か問題と言えば問題だが、福島の一件を通過した今では特に声をあげるべき点だとは思わない。




□入寮はあるの?

 ある。だいたい月額で60k〜で給与から棒引き。安い寮費を謳っている店舗は相部屋の可能性もあるので、きちんと事前に確認を入れる様に(筆者は最初給料の良い川崎のソープランドの面接に向かったが、四人の相部屋と聞かされやんわりと断りを入れた)あとは大概ヤニなんかが付いてて汚い。その辺は覚悟の事(ちなみに筆者の隣室はデリヘルの待機所で、折りに触れうるさかった)




□総括

 ローリスク、ローリターン。拘束時間が長く、休みが取りづらい為、各種イベントに出る事を視野に入れると中々に厳しい。ただ仕事自体は比較的楽しいので、お金を稼ぎながら夜の世界を覗いてみたいという方にはお勧めだ。必要なのはスーツにネクタイ。それから一足のビジネスシューズ(最も会社員のそれよりは、多少尖ったりスラっとした夜向きの装いのほうが良いだろう)人によってはベストを着用する場合もあるが、この辺は個々人の趣味と規約だ(クリーニングに出す都合から、二着は用意しておこう)


 面白いかどうかで言えば、個人的には面白い仕事だったと思う。地方で見れば各種工場を含め寮は多いが、都内で寮の付く仕事は然程無い為、上京からの暫くの資金稼ぎと割り切るのも良いかもしれない。


 なお筆者はここで「スーツって良いな」と改めて目覚め、同僚の後輩に雨の日に傘を差し出し「これって相合傘じゃね?」と呟いたところ「先輩マジきもいっスね」と返された辺りが次話への伏線となるやらならないやら。


 それでは。

 草々。

 

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