用語・地名解説

【用語】


狭間はざま

 万華鏡のように連なる数多あまたの世界の中心。果てしない虚空が広がる領域で、その周りにあらゆる世界に通じるひずみが無数につながっている。狭間の内部は人の命を奪う瘴気しょうきの毒が漂っているため、瘴気をかてとする「魔の系譜」しか通り抜けることは出来ない。天竜ラスエルの加護を受けるものは、使い魔を使わずに「狭間」を通り抜けることが出来る。


*聖魔・妖魔・妖獣*

 「狭間」につながる数多の世界の創造主であるラスエルの配下となる者達。「魔の系譜」と呼ばれるいにしえの種族。妖魔は人の姿を取ることが出来、ラスエルの意思を実行する高位の妖魔を「聖魔」と呼ぶ。妖獣は言葉を操ることが出来ないものが殆どで知能も低く、人間の術師に「使い魔」として操られる事がある。全ての聖魔と妖魔は不滅の魂を持ち、肉体が滅んでも「罪戯れ」の身体を手に入れることで復活する。妖獣は野生の獣と交わって子孫を残す事が出来るが、肉体を一度失うと復活することはない。


*(妖)術師*

 生れながらに自然の力を利用して防御や攻撃、透視などの特別な能力を持ち合わせた者達。その正しい制御方法(=「祈り」と呼ばれる呪詛)を学び、王国の繁栄と民の幸福のためだけにその力を使用することを王に誓い、王国に忠誠を誓った者だけが正式に「術師」と呼ばれる。誰にも忠誠を誓わず、己の欲望のために術を使う者は「妖術師」と呼ばれ、排除の対象となる。


*果ての世界*

 「狭間」の最果てにあるといわれる世界。死後、人の子の魂は「果ての世界」で浄化され、再び新しい肉体に宿るとされている。天竜の教えでは「魂の安息の地」が正式な呼称。


火竜の谷レンオアムダール

 数百年前、逃亡奴隷によって大陸の西の最果てにある厳しい谷間に築かれた集落。単に「谷」と呼ばれることもある。武装中立都市として他国の干渉を許さず、故国を追放された知識階級を庇護し続けた。


*火竜の傭兵*

 レンオアムダール出身の傭兵。その強さと凶暴さで大陸中で恐れられている。特に戦闘力に優れ暗殺者として訓練された者は「双頭の火竜」と呼ばれる。「火竜」は守り神「炎に抱かれた翼のない竜」の刺青を身体に彫り込み、「さえずり」と呼ばれる暗号化された指笛を伝達に用いる。


火群フラムベルク

 シエルがシグリドのために鍛えた独特の形状をした長剣。優雅に波打つ特殊な形の輝きが揺らめく炎のように見えることから命名された。肉を引裂き止血を難しくする醜い傷口を作るため、殺傷能力が極めて高く「死よりも酷い苦痛を与える呪いの剣」と呼ばれている。


*癒しの箱*

 治癒の技術は高いが術師としての特別な能力を持たないため、術師の元で助手として働く治癒師の蔑称。優れた治療技術を活かして独立し、民のために治癒を施す治療院を開く者もいる。治癒の能力がそれほど高くない者は薬師くすしとして薬草の管理や調剤のみを行う。


*罪戯れ*

 人間の女が妖魔と交わって生まれた子。姿かたちは人間だが、身体の中に潜む妖魔の魂に人間の魂を少しずつ喰われ、全てを喰い尽された瞬間、人間としての自我は消滅し、その身体は妖魔のものとなる。


*魂の契約*

 死後、己の魂を差し出すことで「魔の系譜」の力を利用することが出来る契約。契約した「魔の系譜」を使い魔として操ることが出来るが、能力の低い術師が強大な妖魔と契約した場合、使い魔に喰い殺されることが多い。


*魂の伴侶*

 魂の呼びかけに従って必然的に出逢い、共に生きていくことを運命付けられた相手の呼び名。人間同士、人間と妖魔、精霊と聖獣など、相手が同族であるとは限らず、魂を持つ全てのものに課せられた宿命でもある。特に人の子は、その短い生涯の間に真の「魂の伴侶」にめぐり合う事はごくまれである。


*獣人*

 ザラシュトラが術を用いて生み出した、人と獣が混じり合ったような不気味な姿の「使い魔」。元は人間だが、妖獣の魂を埋め込まれているため、人の理性よりも獣の本性に従って敵を喰らい殺す習性がある。


*聖獣*

 野の獣の中で、長い年月を生き延び、優れた能力と知性を身につけたもの。自然の具象化である精霊と大陸の生き物達との調和を保ち、自然の秩序を守る役目を担う。精霊と同様に「魔の系譜」ではないため、聖魔からの縛りを受けることはない。


*聖なる泉*

 泉の精霊リアナンに守られ、「嘆きの森」の奥深くにあると言われる泉。あらゆる傷を癒すとされている。


*精霊*

 自然を具象化したもの。「大陸」で唯一、魂を持たない存在。混沌の中から生まれ、自然のあらゆる場所に様々な姿で宿る。寿命が尽きると、彼らが「大陸」で見聞きした「記憶」は「銀色の回廊」(=精霊の世界)を飾る星の如き輝きとなる。精霊に選ばれた「愛し子」とよばれる者だけが、「記憶」をのぞき見ることが出来る。「狭間」に繋がるどの世界にも属さない「銀色の回廊」には、精霊の導きなしに足を踏み入れることは出来ない。


*スェヴェリス*

 七王国時代、強大な力を誇る妖術師を多く輩出した王国。「罪戯れ」と「使い魔」を自在に操り、術による大陸の支配を目論み、他の王国と対立するようになったが、百年前、ティシュトリアを筆頭とする七王国連合軍に急襲され滅亡した。


*七王国時代*

 大陸の覇権を巡って伝説の七人の王が熾烈な争いを繰り広げたと言われる戦乱の時代。それ以前、大陸は闇に覆われ、天竜ラスエルが地上と天上の生き物を創造し、支配していたと言われている。


*ヴォーデグラム*

 アプサリスが創造した「魔の系譜」を殺す事が出来る闇色の長剣。時に黒い山豹レーウの姿を取り「グラム」と呼ばれる。


*妖獣狩人*

 妖獣を狩るための特殊な武器を操る傭兵。契約主との誓約を嫌う術師が傭兵に身を落としたのが起源。術師を両親に持ちながら術を操る力を持たぬ傭兵や、術師崩れの者が多い。時に結界を編み「狭間」を抜ける力を持つ者もいる。


*竜紋の石*

 ファランの家に伝わる二つの青い守護の石。一つは腕輪に、もう一つは首飾りにはめ込まれている。


虚無スフィル

 パルヴィーズがアプサリスから与えられた栗毛の馬の姿をした妖獣。言葉を理解する。

 

豊穣エンティア

 シグリドがタルトゥスから譲り受けた青鹿毛の軍馬デストリア。デストリアは戦場で戦士を踏み殺すと言われるほどの気性の粗さと強靭さで知られている。


*王の目*

 イスファル配下の間諜うかみ。大陸のあらゆる場所で、市井の者達に紛れ込んで暮らしながら、そこで見聞きした情報をティシュトリアに伝達する役目を持つ。




【地名】


*アンパヴァール*

 大陸の最も西に位置する小国ヴァリスの辺境の城塞都市。その昔、レンオアムダールを監視するために築かれた。


*プリエヴィラ*

 ファランの出身国。「美しき緑の大地」と呼ばれる南の小国。


*フュステンディル*

 プリエヴィラの隣国。「祝福されし花」と呼ばれる南の小国。


*アルコヴァル*

 フュステンディルの隣国、オトゥール山脈の西側に広大な領域を誇る西の大国。肥沃な大地と、緑の平原と深い森林、豊かな地下鉱脈に恵まれ大陸随一の財力を誇る。

 

*タルトゥス*

 アルコヴァルの東の辺境、オトゥール山脈の麓にある城塞都市。ティシュトリアの侵攻を幾度となく阻み「アルコヴァル最後の砦」とうたわれる。


*ティシュトリア*

 オトゥール山脈の東側に広がる「東の武装大国」と呼ばれ、天竜を守護神とする王族によって統治される軍事国家。ティシュトリアの戦士は慣習として髪を短く刈り込み、神聖文字が刻まれた長剣を携えている。


*嘆きの森*

 アルコヴァル領内からタルトゥスの砦に広がる深い森。


*オトゥール山脈*

 大陸の中央を南北に走る険しい山脈。天竜が棲むとされる頂きは、大陸の民から神聖視されている。


天竜の統べる王国ラスエルクラティア

 天竜が地上に初めて舞い降りたとされる、大陸で最も古い王国。天竜を神と敬い、神官である王が統治する神聖政治国家。

 

*クリクゾール平原*

 かつてのスェヴェリス領。アルコヴァルとティシュトリアの南の国境に横たわる湿地。七王国時代、対スェヴェリス戦で術師達が解き放った呪詛に縛られ続ける「魔の系譜」が集う呪われた地。


*カランダル*

 クリクゾール平原の先、海岸線に沿って広がる海上貿易都市。七王国の時代から海の交易の要地としてアルコヴァルとティシュトリアの共同統治下にある中立非武装地帯。

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