まあそれくらい些細なことだ、セロリが好きだったりとかそういうくらいの話だったりするんだと思う、けどやっぱりクリスマスと絡めると自然と聖化されてしまうあたりがあって、崇拝の対象になるみたいなのは多いけれど、考えてみたら別に旧来の天使にはそういうイメージ自体が薄くて、図像に頼る時にインパクトマシマシみたいなところがあるから、イメージ自体が大衆に理解させるために作られたものだっていうのはありそう、旧約聖書とかだと神様の使いみたいなのと相撲を取るみたいな一説があったようにも感じるので、いや、別に、クリスとマスダが相撲を取るわけでは無いけど、会話劇ってのはどこか押しとつかみで続いていくところあるわけで、その押しで柔らかくなっちゃう子はそれはそれで、可愛いですよね。
女子高生の来栖さんと、男子高校生の増田くん。二人そろってクリスマス。
そんなダジャレはおいといて、舞台となるのはクリスマスを目前に控えた放課後の教室。そして話は二人の会話をメインに進んでいきます。
その肝心の会話の内容は、来栖さんの身体の秘密にかかわること…………
ぶっちゃけると、来栖さんの背中に生えている羽に関する話です。
自分の秘密がバレているとは思いもよらず、慌てふためく来栖さん。
頭の中は超高速で回転するけれど、そのほとんどが空回り。ほとんどの発言がしどろもどろに。
そんな来栖さんのことを気遣いながらも、会話の主導権を握ってちょっとずつ質問を続ける増田くん。
来栖さんの特殊なデリケートな事情に対して、自分のコンプレックスについて解説しながら誰にでもあるようなことと言い放つ増田くんは実に男前。
この二人の距離感が実にいいんですよ。
特別なことを描いているのに、そこに流れる空気はきっと誰もが共感できる普遍的なもののはず。短編ながらも、会話の端々やモノローグから際立った作者の腕前が感じられる、素敵な一作です。
(クリスマスぼっちが楽しく過ごすための4選/文=柿崎 憲)