第1話
人は何かしら、大なり小なり問題を抱えて生きている。
世界や世の中から見れば、一個人の問題なんて小さい事なのかもしれないけど、
それでも「その人の世界」の中ではとても大きな問題なんだ。
もっと辛い人だっているんだから、なんて言葉
気休めにもならないぐらい、大きいものに感じたりするんだから。
―――
「~~♪」
1月22日
6:20
携帯がそのぐらいの時間を示すころ、決まって俺の朝は始まる
別に目覚ましをかけているわけじゃない。
起きなきゃいけない用があるわけでもない。
「おはよ」
ただ一言、ほぼ毎日こんなメッセージが来る
文字通り、朝の始まりの一言。
「んん…おはよ…」
まだ眠った頭を起こすように、声に出しながらメッセージを返す。
そしてなんの捻りもなく
「今日もいってらっしゃい」
そんな言葉を送って、気だるい体を起こすのだ。
今はそんな毎日を繰り返している。
日村 創志〈ひむら そうし〉 24歳
(一応)自動車整備士 国家資格もあり
自分のスペックを書き出すとそれぐらいしかない。
対してメッセージの相手
秋本 おとは〈あきもと おとは〉 22歳 大学4年生
少し前まで色々悩んだ末に、かなり遅めの就職活動に勤しんでいたが、
無事に就職も決まり、なんだかんだ楽しそうだ。
彼女とは高校の時に出会って
「一応」俺の元カノである…。
今も付かず離れずで仲良くはしているが…。
そんな彼女が、とても眩しく見える時もある。
でもまぁおとはが楽しそうに過ごしているのは、
とてもいいことなのだと思う。
なんだかんだ今でもすごく大事な人だしな。
そんなふうに俺は
おとはが朝を運んできてくれて
ただ一日を過ごす。
ただそれを繰り返す。
傍から見ればヒキニートで
なんともまあ情けなく感じる事もあるけども…
それでも
なにもなく、なにもできず
そんな毎日を、今は過ごしている。
おとははもちろん、いろんな人やモノに
支えられ、照らされ、
今の自分はまだなんとかここで生きている。
僕はまだ人生の使い方を知らないけど。 もげら @mogera
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