エピローグ
(天体観測所)
ウィル「ゾディ様、大丈夫でしたか?」
ゾディ「あ、ウィルお姉ちゃん! 私は大丈夫! 周りががたがたして怖かったけど」
ウィル「ア、アークさん? これは・・・」
アーク「先ほども言ったとおり、ゾディさんは便宜上0歳なのです。見たままの少女になっただけです」
ウィル「じゃ、じゃあ、ゾディ・・・ちゃん? 一緒にお姉さんと来てくれる?」
ゾディ「うん! 一緒に行く! ところでそこのお兄ちゃんは誰なの?」
アイル「お、俺は・・・こいつの旦那になるんだよ!」
そう言うとウィルを抱き寄せた。
ゾディ「へ~! よかったね! おめでとう! ウィルお姉ちゃん!」
ウィル「うん、ありがとう、ゾディちゃん!」
(クレスの里)
里の衆「クレス様良かった! 生きてらしたのですね!」
クレス「・・皆さん、ギルドは無くなりました。この里の皆が持っているヴォイス能力はこれより平和的な使い方をすることにします。わかりましたか?」
里の衆「はい! それでクレス様は・・・?」
クレス「わ、私は・・・この人と結婚します!」
そう言ってジンに抱きついた。
(ジンの里)
ジン「みんな、すまんが、俺とアークに時間をくれないか? 二人で俺の実家に行ってみたい。安心しろ、それがどうなっていても、俺はアークを殺したりはしない」
クレス「行っていいよ。みんなここで待っているから」
ジン「すまん」
(ジンの実家)
ジン「・・・アーク・・・お前、親父とお袋を殺した後・・・、ちゃんと墓を作って埋葬していたんだな。正直言って心中複雑だが、線香の1本でもあげてくれるか?」
アーク「・・メビウスと上の連中に思考を制御されていたとはいえ、実際にお前の両親を殺めたのは事実だ・・。改めて聞くがそんな私に、線香をあげる資格があるのか?」
ジン「・・ああ、今更、親の敵とか言って殺し合ったら、また彼奴らが復活しちまうかもしれねえ。それにお前には山のようにやってもらうことがあるんでな。とにかく、線香をあげて花を添えてやってくれ」
アークは後ろを振り向いて、背を揺らしていた。ジンはあえて見ないことにした。その後、墓には、ジンとアークの二人分の線香と花が添えられた。
ジン「さて、お前にやってもらいたいってのは他でもない、お前の上で命令を送っていた連中のことだ。正直、全てが終わったとは思えねーんだ。さっきアイルとその事で話し合ったんだが賛同してくれたんだ。とりあえず俺達は各自の結婚式を終えてしばらく生活を送ることにする。そしてちょうど3年後、この墓の前で、俺とアイル、そしてお前の3人が落ち合う事にする。これが最初の仕事ってやつだ。いいな」
アーク「断る理由がない。それでは3年後、ここで会おう!」
そう言ってアークは大空へ消えていった。
ジン「あいつもあいつでいろいろやることがあるだろうから、3年後にしたんだよ。こっちもいろいろあるからな。それじゃ、クレス達と合流するか」
そうして、ジンは墓の前の地面になにやら書き込み、1回拝むと、振り向いてクレス達の所に戻っていった。
父 アストラル 母 龍神麻衣 ここに眠る
(追記)
歴史は繰り返されるモノではない。台本も終劇もない。そして未来も決められていない。歴史とは、生きとし生ける物達が紡いで織りなしていく、我々と同じ【生けるもの】なのである・・・。
***
(そして3年後・・・)
右のベッド「すやすや・・・」
左のベッド「すやすやすや・・・」
ドクター「クレス、ウィル、二人ともよく頑張った! 元気な赤ちゃんだぞ!」
看護婦「お二人とも本当によく頑張りました! 元気な女の子と男の子です!」
クレス「看護婦さん、私の赤ちゃんはどっちなんですか?」
看護婦「右の男の子ですよ」
ウィル「私の方は?」
看護婦「左の女の子です」
クレス「ウィルさん、一緒に頑張ったね」
ウィル「ええ。そして、いつかあの人達が帰ってきたら・・・」
クレス「うん、あの人達が帰ってきたら・・・」
クレス、ウィル「子育ては夫婦二人でする物です!!」
クレス「って言って私たちだけでどっか旅行行かない?」
ウィル「いいわね!、それ!、どこが良いかなぁ」
クレス「私、地元にいい温泉知ってるんだ~」
ウィル「行こう! 行こう!」
二人は出産して間もないのに、ベッド越しに元気に話していた。さすが彼らの奥さん達である。このぶんではそれぞれの赤ちゃんも、《元気にあふれすぎている》子供に成長しそうである。
***
(ウェスタンアイランド 酒場)
荒くれ者A「よーよー、ねーちゃん、一人で飲んでねーで、こっち来て、俺たちと遊ぼーぜぇ?」
荒くれ者B「そーそー、それだけきれーなんだからよ、一人飲みなんて、もってーねーぜ?」
その女性は、不機嫌そうに、そして面倒くさそうに、男達の方も向かずに、即答した。
女性「・・・・うるせぇよ。今、取り込み中だ。それと、飲んでいるのは、紅茶だ」
荒くれ者A「はぁ? おいおい、なんだ、このアマ! ちょっときれーだと褒めたら、増長しやがって!」
荒くれ者B「なら、力ずくで、付き合わせてやる!」
ガタン!
その刹那、座っていた椅子から立ち上がり、3人の男がその“場”に近づいていった。
店主「い、今、取り込み中みたいですが…」
ジン「だから来たんだよ」
アーク「そこの出来損ない男児ども、上出来な女性が困っている。すぐやめろ」
アイル「おめーらとじゃ、不釣り合いすぎるぞ」
荒くれ者A「んだとぉ! やるかぁ!?」
女性「うるさいねぇ」
ガタン!
すると、女性の方が立ち上がり、荒くれ者達とジン達の方を向いて、一言忠告した。
女性「そこのお節介にーちゃん達、下がってな。おい、荒くれども、付き合ってやるよ」
荒くれ者A「お! そーかそーか!」
女性「喧嘩でな」
荒くれ者B「あぁ?」
女性「バインドヴォイス!」
そういうと女性は、口を大きく開けて、大きく深呼吸した後、思いっきり発声・・・というか、音波を口から発射した。
ボンッ!
その音波は荒くれ者達に直撃し、そして、女性が“バインド”と言ったとおり、荒くれ者達は“金縛り”になって、その場に倒れ込んでしまった。どうも、かなり苦しいらしく、言葉を発する事ができないらしい。
女性「自分で片付けたが、そこのお節介にーちゃん達、ヴォイス能力1回分を使う準備時間をくれて助かった」
ジン「お、おい、ヴォイス能力って…。まさか、あなた…」
フォルテ「? 私の名前は、ミューズ=フォルテッシモ、だ。私は覚えてないが、前に会ったこと、あったのか?」
ジン「いや、その、俺、あなたの妹さんの関係者でして…」
フォルテは驚いて、ジンの両肩を掴んで、顔を近づけて、問い詰めた。
フォルテ「おまえは、クレスの、なん なのだ!?」
ジン「だ・・・・・だんな・・・・・・・」
その言葉を聞いたフォルテは、急にニコニコ顔になり、逆に安堵の表情に変わった。
フォルテ「そーか! そーか! あの奥手のクレスも、結婚出来たのか! はい! 旅中止! おい! クレスの旦那! 私をクレスの所に連れて行け! 祝いの言葉くらい言わないと、紅茶がまずくなる!」
ジンはこの強引なクレスの姉をみて、つくづく思った。
ジン(クレッシェンド=弱く、フォルテッシモ=強く、の名前の意味通りだったんだなぁ)
***
その後、フォルテを加えて4人となった一行は、クレスとウィルの所に1回戻る事になった。
ジン「まぁ、クレスは喜ぶと思うが…」
アイル「本当に、この人と一緒で、無事着けるのか?」
アーク「なるように、なるだろう。そう信じたいものだ」
フォルテ「いざ! 帰路の旅へ! Go! Go!」
(了)
メビウス・リング えなりん @takaenarin
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