「何のために生きるのか」と悩む必要がなくなる『むなしさの心理学』 聖書の言葉に救われたガン患者
『むなしさの心理学 』
諸冨祥彦 著 講談社現代新書
1997年に出版され、2011年には23刷されています。
フランクルの心理学を分かりやすく解説しています。
フランクルはユダヤ人で精神科医。第二次大戦でアウシュビッツ収容所に送られます。そこでの体験記『夜と霧』は有名です。
ですが私は全く知らない本でした。
『むなしさの心理学』の著者諸冨祥彦氏は、中学三年から高校・大学にかけて「自分は何のために生まれてきたのか」「どう生きればいいのか」と悩み続けていました。
そしてこの悩みを安心して語りあえる仲間を何より求めていたのですが「こんなことを考えていると口にすればこの学級、学校に居場所がなくなってしまう」と思い、一人悶々と悩み続けました。
そしてフランクルの言葉に出会います。
「あなたを必要としている誰か、あなたになされるのを待っている何か、が必ずあって、あなたに発見され実現されるのを待っている。」
「たとえあなたたちが人生に何も期待していなくても、人生の方はまだ、あなたたちに期待しているはずです。あなたたちになされるのを待っている何か、あなたたちを必要としている誰かが必ずいるはずです。」
「人生からの期待が、人を見放すことは決してない」とフランクルは断言します。
「人間は人生から問われている」
このメッセージを受け取った著者は心底から実感し安堵し救われます。「おかげで、すべてをゆるされた気がした」と言います。
「問いに答えを与えて悩みを解決するのではない」
「問いそのものが消え去って、悩む必要がなくなるのである」
悩める人の心の中にあるものは、とっても個人的でデリケートなものなので、一人一人異なります。
ですから、その一人一人のために、迷う霧の中から明らかな道筋を見いだし晴れた外に導き出してくれる言葉も違ってきます。
自ら本を探して言葉を見つけるしかありません。もっと簡単なのは、スポーツで体が動けば心が晴れるのは明らかです。
私の場合は『むなしさの心理学』に書かれた言葉で霧の中から助けられた一人です。
読み進むうちに私自身が納得するよう導かれ、とても不思議な心持ちになったものです。
「私へと繋いできた幾多の魂が思い残してきたものを、私が背負って生まれてきた。今の私の人生で実現しようという彼らの意志が全部私自身なんだ。私を大事にすることは彼らを大切にすること」
と自分なりに解釈できて安堵しました。腑に落ちました。
がん末期患者の心のターミナルケアを担う病院付牧師の体験談が、新聞に掲載されていました。
そこにも救いの言葉を見つけた患者が「問う必要がなくなった」「問わずに済む」と言うのでした。
(2019.7.13 新聞記事から)
69歳の男性は末期のガン患者です。
彼の病床へ女性の病院付牧師は通います。
「どうしてこんな苦しい目に遭わなければいけないのか」「死んだらどうなるのか」「苦しくなって最期を迎える」と患者は辛い心のうちを涙を流しながら牧師に語ります。
牧師の働く病院は、キリスト教病院としての特徴があります。朝の礼拝がありクリスチャンの職員の信仰体験が話されます。お昼には聖書の言葉や讚美歌が全病室に放送され、患者も聴くことができます。
そのうち、この男性患者は礼拝に参加し始め、聖書を読むようになります。
すると聖書の、ある言葉が心に染み入ります。
『たとい死の陰の谷を歩むとも災いを恐れません。あなたが私と共におられるからです』
この言葉が「私の今の心そのものです」と話します。
亡くなる前日
「心や魂のことは神様が心配して下さるのだと聞いてからは、心はずっと落ち着いています。これだけが私の支えです。私は強いですよ」と微笑みます。
「神様がともにいて下さるから、問う必要がなくなった」
「どうしてこんな苦しい目に遭うのか」の嘆きに、もう答えも慰めもいらなくなります。
この患者も諸冨氏と同じく、問いそのものが消え去って、悩む必要がなくなったのです。
深い霧の中で長い間迷い続けた末、いきなり霧が晴れて清々しい気持ち。
虚を衝かれる形で悩みが解決して、その瞬間呆気に取られる。
私がそうであった様に、彼らも“自分のために書かれたと思える言葉”に出逢った時、劇的でこの上ない喜ばしい心の変化があっただろうと、同じ経験をした私には手に取るように目に浮かびます。
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