松岡享子著『えほんのせかい こどものせかい』子供時代は人生の幸福の最もよい分け前をまず受けとるべき時代

これまで単行本で発行されていたのですが、全く知りませんでした。

2017年10月文庫本で刊行され、書店でたまたま見つけます。本の中には懐かしい絵本が次々紹介されていたので迷わず購入していました。

子供が幼なかった頃を思い出しながら読みました。


元々1968年4月から1年間、月間絵本『こどものとも』の折り込み付録に発表されていました。それが小冊子となって出版され、その後単行本になり、今に至る50年間!この本は“子供に読み聞かせする為の教本”として読まれ続けます。


松岡享子氏は児童文学研究家、翻訳家。

1935年神戸市生まれの83歳。神戸女学院大学から慶応大学、ミシガン大学に進みアメリカの図書館に勤務されました。

お嬢様育ちの頭脳明晰エリート。


子供を持つ親ならよく知る、絵本『ミッフィー』『おやすみなさいフランシス』他多数の翻訳を手がけ、海外の絵本を日本の子供たちに広めました。

また林明子絵『おふろだいすき』の作者です。


読書感想文を送りました。


…………


初めてお便りさせていただきます。

お許しください。


文庫本『えほんのせかい こどものせかい』を拝読致しました。


三十五年前 第一子を出産してから三人の子供を育てて参りました。六十二歳になります。「あとがき」に書かれた「若いお母さんの読者」でなかったことは申し訳ないことです。


『まほうのえのぐ』『ねずみのおいしゃさま』が、まだ『子どものとも』のソフトカバーだった頃に読み聞かせていました。


今では、この古い本を娘が引き継いで、四歳と五歳の孫に読み聞かせています。


『えほんのせかい こどものせかい』には懐かしい思い出のある絵本が次々登場します。


驚いたのは『ちびくろ・さんぼ』が、原書と翻訳本とでは絵と文の配置が全く異なっていた事です。それによって「子どもが話をたどる心の進み具合」が違ってくる、と仰います。


繊細な子供の心に寄り添える絵本作りは、細心の注意を払って作られねばならないものだと思いしります。


私自身も本の楽しさは絵本から教えて貰いました。そして今度は私のために児童書を買う事になります。


『百まいのきもの』『ジェインのもうふ』『思い出のマーニー』『時の旅人』『飛ぶ教室』…


絵本もハードカバーは安価ではないので、三十五年間狭い我が家に数十冊保管してきました。孫に引き継げた事は幸いです。


松岡先生は、私が十三歳の頃から幼い子を持つお母さんへメッセージを発信され始め『えほんのせかい こどものせかい』は歴史ある名著です。


今もって読まれ続けていることに、子供の心と母親の心に何ら変わりはないのだと安心します。


「子供時代は人生の重みをひきずらないで生き…人生の幸福の最もよい分け前をまず受けとるべき時代だ」と書かれています。


この歳になって深く共感します。

子育て中にこれを承知していれば、と後悔しますが若い母親だった私にはどんな言葉をかけられたところで「良い子に育てよう。賢い子に育てよう」という安直さから抜け出せなかったでしょう。


ですので松岡先生が若い母親から受ける相談で「良い本なのに子供が喜ばない」「読み物が片寄る」という気持ちも分かります。


心に余裕が無いので、良い本を子供に無理強いしてしまいます。


「子供と本の結びつきは個人的なもの」と先生は仰います。本当にその通りだと思います。本一冊とっても子供の興味のある内容は一人一人異なり、良い本は一人一人違うものです。親はその本を見つけてあげなければいけません。


読書を強制されると、それはもう勉強です。ひとつ間違えれば本が嫌いになってしまいます。私が小学生の頃、母から読みたくもない全集の一冊を押し付けられ、それ以来楽しい読書はしたことがありません。


生活する中で年配者との接点が滅多に無く、若い母親同士の交流だけでは子供を比べるばかり。


一生懸命な子育ては子供にとっては迷惑なことだと、今にして反省するのです。


幼い頃からの楽しい読書体験は、大人になるまでの心の成長に欠かせないものです。


今日の若者の本への欲求が無いことが、将来の人としての在り方に影響してくるのでは…と心配します。


とりとめもなく長々と書いて仕舞いました。

御忙しい中、読んで頂きありがとうございました。


どうぞ御体お大切になさいまして益々ご活躍下さい。

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