人は命を落とす状況下でも本を読む

第2次大戦中、明日をも知れない極限状態に置かれた人々が、果たして読書するのでしょうか⁉


2016年それを確信する本が2冊発売された、という新聞記事がありました。

省略して下記に紹介します。



『アウシュビッツの図書係』

アウシュビッツの収容所。収容者は食事すらままならない状況下でありながら秘密の図書館を持っていました。図書係の14歳の少女は8冊の本をナチスの目から守ります。


収容者達が次々命を落としていく中、絶望感にうちひしがれる人々に彼女は本を朗読します。子供達にも希望をもたらし、生きる気力をよみがえらせます。


「地球上のすべての国が、どれだけ柵を作ろうと構わない。

だって、本を開けばどんな柵も飛び越えられるのだから。」


『戦地の図書館』

第2次大戦中、アメリカで発行された「兵隊文庫」。1億4000万冊の本をペーパーバックにして戦地へ送り続けました。


兵士達の士気高揚のため国をあげての戦略です。極限状態に置かれた兵士の心のケア対策まで考えるとは…。



選書の一冊に米国でベストセラーになった

原題:They Were Expendable

(兵士は使い捨て)があります。


内容が フィリピンで日本軍と戦う米兵が消耗品のように命を落とす状況を描く作品だと言うのに、兵士にその本が送られるのです。


本に書かれた言葉への信頼、本を読む兵士への信頼がなければ出来ることではありません。


読んだ兵士は同じ状況下にある事に強く共感し、意を強くした事でしょう。


1945年12月には『コレヒドール戦記』のタイトルでアメリカで映画化されます。


兵士達は貪るように本を読みました。

「僕たちは、おばあちゃんを打(ぶ)つことなどできません。それと同じように兵隊文庫をごみ箱にすてることなどできないのです」


「ペニシリンに匹敵し、本は剣より強し!」

と言う兵士の言葉があります。


2019年の新聞記事です。

内戦が続くシリアにおいても図書館がつくられました。

「内戦が長期化するシリアの町に『シリアの秘密図書館』がある」

2011年民主化の動きをアサド政権が弾圧しシリア内戦が始まります。

2018年の春には7年になるも爆撃にさらされ続けています。

「崩壊した家屋の下から、若者達が本を掘り出そうとしている。汚れをぬぐい、破れたところを繕う。政権軍に抵抗する町に手作り図書館をつくるのだ。歴史、心理学、児童文学まで15000冊に及んだ。

戦場で本にかじりつく若者の多くは、それまで読書が好きではなかった。

『本を読むのは、何よりもまず人間であり続けるためです』

異常な環境下でも息づく精神の営みがある」

この図書館は今は無い。


児童書に於いてさえ「本は守りなさい」と伝えています。

岩崎書店『この本をかくして』(マーガレット・ワイルド)があります。

以下、Web上に書かれた本の紹介文です。


《戦争の爆撃で町も図書館も燃えてしまった。

民族について書かれた大切な本を守って、ピーターとお父さんは町を離れた。


お父さんは、ピーターに語った。

「この本には、ぼくらをうんでくれた人びとのこと、おばあちゃんのおばあちゃんのこと、おじいちゃんのおじいちゃんのことが書いてある。

どこからきたか、それは金よりも銀よりも、宝石よりもずっとだいじなんだ」


民族、国の大事な物、誇りとは何なのか。戦争で失われたもの、守ったものを考えさせる絵本。》

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