書店は思わぬ本が心にヒットする場所~立ち読みは相性の良い友人を探す様なもの~

あらかじめ決めて買った本より、たまたま手に取った本の方が、はるかに大切になっています。


書店に出掛けて、沢山の本の間に間に眺め漂えば、思わぬ本が私を待っている様な期待感で楽しくなります。


ここ最近、自分の生きてきた60年を振り返り、あの人この人の人生に思いを馳せる様になります。すると人生の機微というものでしょうか、言葉にできないまま心の隅に残していきます。


そんな時、訪れた書店でたまたま手に取った本に、「あー、これこれ!」と、隅にあった気持ちにヒットする時があります。

これこそ本探しの醍醐味です。


高校生の頃から母と確執のあった私ですが、結婚して家を離れると、冷静な気持ちで母と付き合える様になります。


この長きに渡る母子の関係を見事に言葉にしてくれたのが佐野洋子著『シズコさん』


洋子さんが子供の頃、母親シズコさんから受けた虐待で、自分はどの様に影響を受け育ったかが書かれ、それでもなお愛のある眼差しで母親の一生を描いています。

また知的障がい者の叔父について、本の中で触れています。

母親のシズコさんは、知的障がい者の兄弟をとても嫌っています。対称的にシズコさんの妹夫婦は、彼と共に慈愛に満ちた当たり前の生活をしています。


彼女の絵本『100万回生きたねこ』は大人のための名作絵本。ちなみに『100まんびきのねこ』(ワンダー・ガアグ著)は子供のための古典名作絵本。


50歳近くなると、高度成長期に建設業で繁栄したあるお宅が、今は家業を閉じようとしているのをみるにつけ、家の盛衰を思います。

すると『家のロマンス』が私の気持ちを代弁します。

「代々続く家も女の裁量一つで、盛衰を分けるものかもしれない」

私と同じ様に思う人が書いた本だと感じ入ります。


玉岡かおる著『お家さん』、山崎豊子著『花のれん』へと続きます。


60歳になれば、親族のだれかれが老衰でパタパタと亡くなります。時代にずれはあるものの有吉佐和子著『恍惚の人』を読めば共感します。


これらは全て本屋さんをフラフラ散策?してたまたま見つけています。

とても楽しい時間です。昔、学校のクラス替えで、気の合う友人に出会えた時の様に、嬉しい気持ちです。


老若男女、人の心のありようは必ず言葉になって本に著されている、と確信するようになります。


本に限らず毎日届く新聞にさえ「その通り!」と強く共感する記事があります。

最近の新聞記事です。

「子供が減り続け、若者を不安定雇用に押し込めば、どうなるか。年長世代は分かっていたのに手を打たなかった」「若者を踏み台に上の世代が逃げ切ろうとしている」

中高年の誰もが懸念している事をズバリ言い当てています。


すぐ切り抜いてノートにスクラップ。どんどんノートは分厚くなってきますが、やめられません。


新聞紙面の沢山の記事の波間を眺め漂よえば、気持ちにピッタリの文が目に飛び込んできます。

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