今の権力者をうつすミヒャエル▪エンデ『はてしない物語』と映画『インディー・ジョーンズ』

ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』(上下巻)は、私が初めて読んだファンタジーです。

十歳位の背の低い太っちょでX脚の少年バスチアン。

自分で話を考えついては想像の中で独り言 を言うものだからクラスで仲間外れにされます。ある日いじめにあい追い掛けられ本屋に駆け込みます。

そこで見つけた『はてしない物語』に強く惹かれ、それを盗み出し、学校にある屋根裏の物置で読みふける事になります。


その物語が始まります。ところが私の苦手なファンタジー一色です。

象牙の塔に住む「幼なごころの君(きみ)」を女王に冠し、奇妙な姿かたちの者(妖魔・魔鬼・夜魔・岩喰い男・ケンタウロス…)の暮らす国ファンタージェンのお話。


目は字を追いますが、現実的な頭の私は物語の世界を心から楽しめません。


上巻の大まかなストーリーは、

ファンタージェン国に虚無の侵蝕が始まり、同時に女王が病の床につきます。その原因と解決策を突き止めるべく、女王に指名された少年「アトレーユ」が冒険の旅に出るというものです。

上巻の最後で解決策を見つけます。

それは、人間が住む国の子供が女王の新たな名付け親になることでした。


上記の内容を十分に把握しないまま途中で投げ出しました。


今度は下巻から読み始めます。

すると、どうでしょう!

いっきに読んでしまうほど夢中になります。


『はてしない物語』を読むバスチアンが本の世界に入り込み、晴れて女王の名付け親になり、虚無に襲われたファンタージェン国を救うと、国の人々からヒーローに祭り上げられます。

そのうち彼を落とし入れる者が現れ、まんまと口車にのせられたバスチアンは大切な友達「アトレーユ」と「幸いの竜フッフール」を遠ざけて仕舞います。

もはや自分自身を見失ったバスチアンは、権力と権威に執着し、女王の居ない象牙の塔の帝王になろうとします。

アトレーユ達は、それを阻止しようと反乱を起こしますが……。


この下巻のストーリー全ては、私に現実世界に生きるあらゆる人間の姿「愚者も賢者も、おどけ者も真面目な者も、善も悪も、美も醜も」を想起させ、目が離せなくなります。


例えば、ニュースで毎日の様に聴く、シリアの政権を頑なに譲らない大統領、都議会の帝王、反乱を起こす女性都知事。


意味の深い文章が全てのページに散りばめられています。

「あの連中は甲冑だけで出来ていて、中は空っぽだとわかった。いったい何の力で動いているのだ?」

「空っぽだからこそ、私の意志に従うのでございます。中身の無いものなら、私の意志で操ることが出来るのです。」


この文章を読みながら

中身の無い人間、志を持たない人間は愚かな人間にも操られる…と、私に思わせます。


「裏切りだと思われた行為が実は真の友情だった」

「望んだことは身の破滅、憎んだものが救いだった」


最後まで読み終えると満腹感に浸ります。

すぐに上巻を読み直したくなります。

すると下巻の内容が分かっているので、ストーリーがファンタジーととらえるだけでは無い読み方が出来ます。


二度目に読んだ上巻で気になる箇所がありました。


女王と国を救う手だてを知っている「南のお告げ所のウユララ」の元へ行くには、三つの門を潜り抜けなければいけません。

第一の門の前にはスフィンクスが左右に鎮座して、通過出来る者もいれば、その場で永久に立ちすくみ骸骨となって転がってしまう者もいる。

誰を通すかは謎のまま。


勇敢にもアトレーユは歩みを進めます。

すると「怖れの重み」を感じ、地面に頭を垂れて行くと、通過が許されます。


この場面で私は不意に映画『インディ・ジョーンズ最後の聖戦』を思い出していました。


インディ(ハリソン・フォード)が父(ショーン・コネリー)を助けるため聖杯を求めて三つの関門を潜り抜けなければなりません。

やはり第一の門の左右にライオンの像が眼光鋭く鎮座しています。

その前には通ろうとして首を落とされた死体が転がっています。

ハラハラ、ドキドキです。

インディーはヒントになるメモを 持ちます。

『悔い改める者だけが通られる。』

彼はつぶやきます。

「悔い改めた者は…慎ましく…ひざまづく!」

ここでも、地面に頭を垂れて進みます。


もしかして『はてしない物語』からヒントを得たかも⁉


インディー・ジョーンズのほか『ナショナル・トレジャー 』『ダ・ヴィンチ・コード』など、歴史の謎解きをしながらの冒険映画は大好きです。


四苦八苦しながら、やっと読み終えた壮大なファンタジー。

「岩波少年文庫」で「中学生から」とありますが、私が中学生どころか高校生の頃でも、きっと手にしなかった本です。

私には理解するのが難しい。

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