宮本輝氏のライフワーク『流転の海』
2016年6月に宮本輝著『流転の海第7部』が発売されました。
ストーリーが佳境から終盤へと向かっていきます。
著者のライフワークで、1992年の第1部上梓から、この25年の間に7冊が刊行され、更に8部まで続く予定です。
この本は若い人より、仕事・結婚・子育ての苦楽を経験している人の方が内容を理解し易く共感することでしょう。
生きていれば嬉しい出来事もありますが、理不尽な目に遭い無念さに歯噛みすることも経験します。それでも無理やり胸に畳み込んで毎日を繰り返します。
知らず知らずのうちに小さな差別や裏切り、嫉妬で人を泣かせたり、泣かされたりしています。
また、世の中の筋の通らない、道理に反する不条理を思う年齢になって、遣りきれない気持ちも抱えます。
本では、これらの心情を小説の中であらゆる人々に語らせ、読者の心を捉えます。気持ちが整理され、とてもスッキリするのです。
戦後の世相を追いながら、五十歳を越えた主人公が、その後の人生で事業を起し家族を作り、様々な人間関係を構築していきます。
私達も過去にあったかもしれない複雑な人間関係、負の関係などあらゆる場面に於ける心境を、著者は正確で精査された言葉で表現します。
小説に登場する人達の人生を冷静な目で見据え、道理を説いて私達を慰めます。
主人公をして人生を俯瞰し語らせる言葉に諭される思いです。
もっともその主人公は、妻への暴力や浮気、事業の失敗、信頼していた人からの裏切りに遭い、さんざん家族を泣かせ辛い目に遭わせています。
毎日生活するため、心の隅に追いやっていた感情がストーリーの中で昇華されていくのは嬉しい事です。
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