ユーモアとウィット

アメリカ文学作品には、ストーリーの面白さ以外に、ユーモアとウイットが散りばめられていて、作者のセンスの良さを感じさせてくれます。


ユーモア…滑稽なものを見つけて楽しむ能力。悪意の無い、心の傷をいやす笑い。


ブラックユーモア…笑った後で、背筋が寒くなる残酷さ、不気味さを含んだユーモア


ウイット…皮肉、風刺で批評する能力。

冷笑的で出し抜けで人の意表をつく

(辞書、インターネット辞書より)


話のやり取りのなかで、ユーモアとウイットは繰り広げられ、相手をやり込める切り返しには、胸がすく思いです。


特に先に紹介しました『ロング・グッドバイ』は、2・3ページに一つは有るという多さです。時には、1ページごとに。


「一本電話をかければ、君の私立探偵免許を取り消すことができるんだよ、ミスタ・マーロウ…」

すかさずマーロウは、切り返します。

「二本電話をかけたら、私は後頭部をへこまされてどぶに横たわっているというわけですか?」彼は耳障りな声で笑った。


「昨日の夕刊と間違えて、君の顔を踏みつけないように気をつけなくちゃな」


本の内容が分からないと笑いが理解出来ない部分もあるでしょうが、どれもニヤリとせずにいられません。


『9ミリの挽歌』

“片手で彼女の顔を…締め付けた。アンは素早く彼の腕から逃げ出した。「……あんたに乱暴されたと聞いたら、ビッグ・ビリーはあんたのタマ袋をハンドバッグにして私にくれるはずよ…」”


と、下品な下ネタも平然と笑える歳になりました。


アメリカの子供達は 児童書でユーモアもウィットも身に付いていきます。

『シカゴよりこわい町』にも沢山あります。


祖母の町の駅に降り立つと、ホームに立て札が立っていました。

『放浪者お断り

これを読んでいるおまえのことだ

保安官O・B・ディッカーソン』


「ダウデルさん、それは取引じゃない。恐喝だ」

「どうちがうんだい?」

沈黙が流れた。


「…このショットガンが欲しくてやってきたんだから、くれてやってもいいわけだ、両目のど真ん中にね」


「吸血鬼かい?いないとも。あたしらから血を吸いとるのは銀行だけだよ」


後に紹介します映画『スリーパーズ』のなかにも小気味良いウィットが出てきます。


汚職警官の証拠となる写真と拳銃を、ロレンツォは評判の良い刑事に渡します。

受け取った刑事が言います。

「デカになる気はないか?」

ロレンツォはすかさず

「正義を捨てて?」と返します。

日本には無いスマートなやり取りです。


ちなみに日本にも、盗み▪飲酒運転▪隠し撮り…と、正義を捨てた警察官がいます。

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