第3話 死神
さくっと殺っちゃってくださいよ、姉御、と決意表明をしようと口を開きかけたその時だった。
「おいおい、くたばるにはまだ早いんじゃねえのかい? 兄弟?」
そいつは突然に表れた。
白人女の後ろにまるで初めからその場にいたような自然さで、さながら幽鬼のようにそこに佇んでいた。
彼女は咄嗟に振り返り、いままでぼくの首筋に添えていたナイフをその突然に表れた闖入者に一閃してみせた。流れるように無駄のない動きだったため次の瞬間には、首から鮮血を流して崩れ落ちる奴の姿を幻視した程だった。
だが、奴はゆらりとした身のこなしで必殺の一撃を悠然に回避してみせた。
「―――タイプ・タナトス」
彼女はそう呟くと眼前の幽鬼に対峙した。
そいつは、真っ黒なフード付きのローブを纏っていて、まるで、顔を隠すようにフードを深く被っていた。
ちょうど、ディズニーとタイアップしていたゲームで、こんな感じの敵キャラがいたな、と懐かしい気分になってしまった。
幽鬼と女兵士。
先に行動したのは、またしても女兵士のほうだった。
突然、彼女の体が電気を帯びたその瞬間に消えた。
そう、消えたのだ。
まるで、神隠しにでも遭ったかのようにこの場から彼女の肉体は消失した。
それに対して幽鬼は深くため息を吐き、
「環境追従迷彩か。なあ、おれを前にしてそんな手品が通用しねえってのはアンタらよく知ってるはずだよな?」
呆れを隠し切れないといった様子でそう呼びかけた。
それに対する返答はない。
だが―――
「おっと!」
幽鬼のローブが引き裂かれる。それでも、体には凶刃が達することはなかったようだ。ははは、と乾いた笑い声をあげ、
「いいぜ、ちょっとばかし遊んでやるよ」
どこからともなく巨大な鎌を取り出した。
それを悠然と構える姿は様になっていたが―――
幽鬼の胴体から赤い鮮血と共に刃物が飛び出す。
「環境追従迷彩だけが私たちの取柄じゃないのよ? お間抜けさん」
幽鬼に密着するような体制で女兵士が姿を現した。
そのまま、勢いよくナイフを引き抜くと、こと切れた様に幽鬼は崩れ落ちた。
それを見下すように幽鬼に向けて高らかに宣言する。
「CU能力。マニュアル。
「そうかい、親切な解説、ご苦労さん」
刹那、崩れ落ちた幽鬼の姿はなく、その巨大な鎌が彼女の胴体を貫いていた。
お返しだ、とばかりに突き刺した鎌を引き抜く。
不思議と裂傷の跡がみられなかったが、たまらず女兵士はその場に崩れ落ちた。
一仕事終わったとばかりに凶悪な鎌を肩に構えるその姿は幽鬼というよりは死神のそれだった。
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