第110話 モンスター襲来


 モンスターが現れた。

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      にげる


 などと逃避したい気分。


 時はさかのぼる。


「北都市に商隊を組んで行くぞ」


 九週、三ヶ月ごとの仕入れとムラタギルド長のお使い。いつも通りの買い出し紀行。

 いつも通りに針金、ひも手榴しゅりゅう弾、導火線と爆薬、その他もろもろをトランクに詰め、オープントラックに載せる。いまだにトラックは架装していない。荷馬車もどきをトレーラー代わりにつないで準備は完了だ。


 商売も無事に終わり、北都市からの帰り道。のんびり運転する俺。後ろで寝ているミリーと荷物をチェックしている師匠。そして周りを騎馬で固めるジャック・ムラタさんと若い衆たち。

 馬は並足、トラックは徐行に近い速度。森を抜けて、あとは西都市まで草原と荒野を二十マイルほど残すあたり。


「ジャック!! なにか南側にいます!!」


 叫んだのは騎乗している若い衆の一人。

 叫び声に反応して飛び起き、南をにらむミリー。


「モンスター、三十前後!! 種類不明!!」


 やはり目が良いのかミリーはおよその数まで報告してくる。


「ベック師匠、飛ばしますか!?」


 大声で確認する。


「ジョニー、だめだ!! ここから飛ばすと馬が西都市までもたない!!」


 ギリギリ持つかもしれないが、これまで踏破してきた距離を考えると厳しいのだろう。


「師匠、T.A.Rがあります。騎馬隊だけでも先に逃がして俺らがしんがりを務めるのはどうですか」

「ジョニー。それも悪くはないが、最善でもない。敵の種類も分からんうちに手の内を狭めるのはどうかと思うぞ」


 そういうものなのか。やはり俺には経験が足りない。


「とはいえ、そうだな。俺らがケツを守るのは賛成だ。場合によっては潰れた馬を捨てて若い衆をこっちに載せるのも考えておこう」

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