第10話 街、もとい銃を見てまわろう

「急な話で悩むのも仕方ない。というか無茶振りもいい所だったな。

 数日考えてくれ。その間はここに泊まっていい。でも飯代くらいは出せよ?」


 ヘンリーさんのおかげでしばらくの宿は困らない状態になったようだ。

 とはいえずっと居候しておいて「やっぱり鍛冶屋はやめておきます」というわけにもいかない。最低限、自活できる程度の道具は揃えようと思う。


「差し支えなければ洋服屋と雑貨屋、銃砲店を教えて欲しいのですが」

「おう、俺も弾を仕入れる必要があるからな。今からいくか?」

 話が早くて助かる。


 遠くの城壁に囲まれたマカロニウェスタンな町並みというちぐはぐな風景を眺めつつ歩いていると、ヘンリーさんに声をかけられる。


「ここが銃砲店だ。銃の修理の腕はいいし、弾も一通りそろってる。

 ライフルも豆弾で不安があれば買い替えも下取りもやってくれるぞ」


 そのままヘンリーさんが店に入っていく。

「おう、ベックはいるか? いつものシカ弾を一箱とトリ弾を二箱くれ」

 行きつけの顔なじみらしい。

「シカ弾たぁ、めずらしいなヘンリー。例のハグレ退治で使いきったか?」

 日に焼けた恰幅かっぷくのいいおっさんが出迎える。

「んなわけあるか。きっかり二発で仕留めてやったわ!」

 俺の援護射撃もあったけどな、といいそうになって心の中に留め置く。

「そっちの若けえツレは親戚か?

 また古めかしいのを背負ってるな」

「野犬撃ちくらいにしか使ったことがないんで。

 できればいざってときのために、もうちょっとパワーのあるヤツが欲しいんですが」


 正直な所、ライカンスロープのようなモンスターが出たときに足止めくらいにしかならないリボルバーカービンは不安が残る。

「なら新製品の四発装填できるポンプ式ショットガンがあるぞ」

 ベックさんが棚から馴染みのある形のショットガンを持ち出してきた。

「おいおい、そいつは俺が取り寄せてくれっていってたやつじゃねえのか?」

「買ってくれるなら早い者勝ちだろ」

 と笑って返す。どうせ買う金がないと思われているのだろう。

 ちくしょう、その通りだ。


「ショットガンじゃなくてリボルバーと弾を兼用できるヤツがいいんですが」

 弾薬の共通化はいざ・・ってときにも役に立つはずだ。それに多種多量の弾薬を持ち運びたくはない。弾切れの時にあわてて混乱するような事態は避けたい。


「なら.44口径、.38口径、.32口径から好きなのを選びな。どれも最低10発は入るぜ」

 と壁を指す。

「あの短いやつは?」

「.44口径が11発。取り回しは保証するが威力が欲しいなら長いのにしとけ。

 24インチのライフルと比べるとどうしても非力だからな」


 正直、あの短いやつに魅力を感じていた。ターミネーター2でシュワちゃんが回していたやつに似ていたからだ。使う弾は違うんだけれど。


 欲しい……

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