第11話 ライフルを選ぼう

 とりあえずの銃として持っているのは、この世界では「豆弾」と呼ばれているらしい.22LRっぽい弾薬を使う銃だ。しかし護身用としては威力不足だというのが「俺」の判断だ。

 というのもめったに出ないとはいえライカンスロープにはほとんど効果がなかった。さらにはハンターをやってるヘンリーさんもシカ弾とやらを持ち歩いているらしいからだ。大型の獣やモンスターに豆弾が効くとは思えない。

 数は力という言葉もある。豆弾を六発しか込められないリボルバー。10発込められるリボルバーカービン。どちらも弾薬をばらまくというにはさみしい。

 ならば10発以上、しかも連射がしやすいレバーアクションのほうが安心できる。しかも一発の威力が大きいだろう。

 短いほうのレバーアクションでも11発込められるというのは魅力的だ。


「一番売れているのはどれですか?」


 売れ筋、人気と威力は比例しないだろうが、実用性とはある程度の関係はあるだろう。


「そうさな、やっぱり出てくのが多いのは.44口径だね。弾もコンスタントに売れてるよ」

「旅で護身用に、と買っていくのが多いやつは?」

「それも.44口径だ。やっぱり威力と値段のバランスがいいからな」

「バランス?」

「一番売れてるから安い。安い割に威力はある。いいバランスだろうが」


 重さは気にしないのだろうか?

 疑問が口をついて出る。

「元から重い銃を背負うんだ。それなりの覚悟はできてるんだろうさ」

「それに旅に出るやつは馬に乗るだろうしな」

「ちがいねえ!」


 ベックさんの台詞にヘンリーさんが突っ込み、笑い合う。

 軽口をたたき合う仲ってのはいいな。おっと、わき道にそれた。

 長物は.44口径のレバーアクションから長いやつか短いやつ、どちらか選ぶとして、リボルバーはどうしよう。

 正直、今のリボルバーは装填がめんどくさい。ピンを抜いて前後に分割した上でレンコンみたいなパーツを装填済みのやつに入れ替えるか弾を詰め替える。

 リボルバーカービンのほうは二つに折れてレンコン入れ替えか詰め直しだ。キャップ火薬を詰めるオモチャと同じような方式。

「リボルバーで.44口径はどんなのを扱ってますか?」

「こっちの棚にあるやつだけだ。あとはカタログを見て取り寄せだな」

 親指で棚を示す。


「西都市じゃもう一つの製造直販店もあるが、似たようなもんだ。どうせベックが俺の顔を立てて安くしてくれるだろうしな」

「多少はな。知らねえやつならともかく、おめえのツレなら足が出ない程度までは安くしてやるよ」

「じっくり納得いくまで選びな。お前の命を預ける道具だぞ」


 ハンターの言葉が重く響く。

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