第9話 仕事を選ぼう
大まかなことは分かった気がする。本当にざっくりとだが。
まず金銭価値。銀貨一枚で約一万円、大銅貨で千円程度の貨幣価値のようだ。銅貨も大小で10倍の価値差がある。硬貨は大きい方から銀貨、大銅貨、小銅貨ということらしい。
食事は三食でだいたい一大銅貨。宿は月単位で契約することで銀貨二枚くらいから借りられる。
ヘンリーさんの元で鍛冶屋弟子入りをお願いしようと思い、それを話してみたが。
「俺は親方株を持ってないから弟子は取れない」
とばっさり。弟子を持てるかどうかでギルドへの支払額が変わるのだそうだ。それが親方株と呼ばれるもののようだ。
紙と鉛筆は弾代でチャラにしてもらった。買うと弾代以上に値段が張るようだがヘンリーさんの厚意に甘えておこう。
紙もわら半紙のようなものだが西都市では一箇所でしか作られていないらしい。
鉛筆も太い芯に糸を巻き付けたような簡単な物だがやはりそれなりの値段だそうだ。どうやって作られているのか聞いてみたが「知らん」とのこと。
「で、どうするんだ? どんな鍛冶屋をやりたいんだ?」
問われる。これの回答いかんによって俺の人生が決まってしまう気がする。転生前みたいな感覚で転職するわけにもいかないだろうし。
「そういえば鎧職人をやってる工房は西都市にはないんですか?」
即答を避け、話題を変えてみる。
「いちおうあるぞ。西門の野鍛冶が兼業だから説明を忘れてた。
鎧作りたいのか? あんまり
ちょっと憧れてたけれど、銃のある世界でファンタジーな鎧はたしかに流行らないだろう。
「いえ、気になっただけで。どちらかというとガンスミスに興味が」
「あ~、西都市のガンスミスは販売と修理ばっかりだからあんまり面白くないかもな」
えらく否定的な意見ばかりだ。やはりヘンリーさんが自分でやっている野鍛冶を薦めたいのだろうか?
「いや、そんなことはねえよ。ただ野鍛冶はいろんなもんを作れるから面白いぞ」
やっぱり野鍛冶を薦めたいのか。
「実は北門の野鍛冶が兄弟子でな、そこで人手が欲しいってこぼしてたんだよ」
出たよ本音。
「兄弟子ってお兄さんがやってらっしゃるんですか?」
「いや、叔父だ。親父の弟な。叔父貴は野鍛冶一本でやってるから人手が足りないんだと」
このままでは縁故就職させられてしまいそうだ。
「考えさせてください」
俺は悩みを先送りすることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます