第9話 NINJYA

オンラインゲームで知り合ったアメリカ人、

マックとケビンは二人ともNINJYAの大ファン。

ゲーム内での彼らの装備はもちろん忍者の服。

武器は刀。

ゲーム内に忍者装備がなければ、それっぽいのを揃え似非忍者装備とする。


彼ら曰く、アメリカ人(OTAKU)の間で、

NINJYAは絶対的な人気があるそうだ。


タイトルにNINJYAの6文字が付くだけで、

ゲームソフトの売り上げが一万本以上は増えるのだと、

ケビンは興奮した様子で語った。


彼らはあらゆる事柄を大袈裟に話すので、

この数字は話半分に聞いておくが、

とにかくNINJYAはアメリカをはじめ、海外で人気がある。


しかし、彼らアメリカ人達のNINJYAのとらえ方は、

私の考える「忍者」とは大きく異なる。


まず、彼らの考えるNINJYAは、筋肉質でガチムチである。

理由は、例えば、NINJYAは垂直の壁を、

平地を走るのと同じ速さで登ることができるからだという。

つまり、そんなことをするには、

当然もの凄い筋肉が必要だということだ。


このことから、彼らは神秘性のようなものをあまり信じず、

能力を筋肉に換算して考える傾向があることがわかる。

(無論、何でもかんでも超能力ということで済ませようとする者も、

少数だが確認している。子供に多い)


また、NINJYAは隠れない。

驚異的な身体能力で正々堂々と派手に戦う。


つまり、忍んでいない。

この辺りは、SAMURAIと混同していると考えられる。


忍者が「忍ぶ者」であることまで知っているアメリカ人は、

まだ少ないのかと思い、そのことについて、チャットで説明したことがあるが、

侍を戦士とすると、忍者はスパイ寄りだということは皆、知っているようだ。


しかし、NINJYAは、やはり隠れない。

屋根伝いに移動し、窓から入るにしても、

派手に窓ガラスを壊して侵入するのを是とする。

つまり、窓から入ることに隠密性は関係なく

重視なのはイメージであり、

意外性とNINJYAっぽさがあればそれで足りるそうだ。


壁と同じ色の布で姿を隠すなど、忍者の技を説明したが、

そんなのに騙されるやつはいないと、バカにされる始末。


マックの勧めるNINJYAアクションゲームの体験版をやってみた。


3Dアクション。

現代アメリカの大都市が舞台。

主人公は、ガチムチのNINJYAで、

真夜中のビルの屋上を驚異的なジャンプ力で、

飛び回って進んで行く。

ビルからビルへと跳び移って行くのが爽快だった。


おっ?


2つ先のビルの屋上の、ど真ん中に、

腕を組み、両足をぴったり揃えて直立する者がいる。


それは敵のNINJYAであった。

主人公が、そのビルに到着すると、

彼はおもむろに背中の刀を抜き、真っ正面から襲いかかってきた。


私はサブ武器のSYURIKENを使ってみた。


SYURIKENは、一度に三方向に放たれた。

飛行機雲のような残像を残し、敵を追尾するSYURIKEN。


敵はそれをジャンプで交わした。

その後ろには、ペントハウスの壁があった。

SYURIKENは壁に当たると、大爆発を起こした。

その爆風で敵NINJYAは空中に打ち上げられた。


しかし、敵は空中で回転し、体勢を整えると、

ペントハウスの壁を蹴って三角跳びし、

一直線に主人公に向かって飛んできた。


私は敵NINJYAの接近にタイミングを合わせ、攻撃ボタンを押した。


KATANAとKATANAが激しく衝突し、火花を散らす。

そのまま鍔競り合いとなった。


私はボタンを連打した。

日本向けのゲーム程速い連打は必要なかった。

適当にボタンを押しているだけで競り勝つと、

敵NINJYAは大きく仰け反った。


そこへすかさず攻撃。

KATANAが敵を貫いた。


「アイヤー」だか「アイエー」だか、断末魔の悲鳴を上げ、

敵NINJYAは崩れ落ちた。


同じような戦いを三度か四度繰り返し、

進んで行くと、かなり遠くのビル屋上に人影が見えた。


デカい。

それは巨大なNINJYAであった。

おそらくこのステージのボスであろう。


主人公の身長を二メートル弱とすると、

五メートルはありそうな巨大さだが、

一応NINJYAの覆面を被っていた。


私のような日本人の感覚からすると、全く忍者に向いてない人材である。

これだけデカくては、目立って仕方がない。


忍者学校があったら絶対落第忍者。

それ以前に入試で落ちるレベルだろう。


ボスNINJYAは、

武器を使わず、獣のようなうなり声を上げながら、

力任せに太い腕を振り回したり突進してきた。

やはり格好以外どこにも忍者性が無い。


ヒットアンドアウェイで難なく倒した。

体力が半分以下になると炎を吐いてくるようになったが、

スキだらけになるので、かえって簡単になった。

体験版はそこで終了。


いかにもGAIZIN達が飛びつきそうな、

グラフィックが派手で、大味なゲームだった。


このように、NIHONの忍者は、

アメリカに渡り、NINJYAとして、

独自の進化を遂げた。

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