第2話 真之介の縁談

坂田 「いやあ、めでたい。実にめでたい」

真之介「これは坂田様。いつもお世話になっております」

坂田 「喜べ、真之介殿。またとない良縁であるぞ」

真之介「はっ、ありがとうございます」

坂田 「私もこれまでも幾組か縁談をまとめて来たが、この度の様な良い話、そう

   あるものではない」

真之介「ありがとうございます。して、どちらの」

坂田 「いやあ、誠にめでたい」

真之介「あの、坂田様。どちらの…」

坂田 「そうであった。その、名は、ふみ殿と申され、歳は十八。これまたお主と

   並んでも遜色のない美女であるからして、まさに一対のひな飾り。これが良

   縁と言わずして、何を良縁と言わんや…」

真之介「坂田様。その、ふみ様とはどちらのご息女にございます」

坂田 「うむ…。旗本、三浦播馬殿の息女である」

真之介「ええっ…。あの、坂田様、何かのお間違えでは。私はこの通りの町人上が

   りのにわか武士にございます。それがどうして由緒あるお旗本の姫様と…。

   それより何より、先さまがご承知なさらぬ筈。その、先さまへは私のことは

   どのようにお話しになられたので。まさか、後で話が違うなどとは…。それ

   では私とて承服致しかねます」

坂田 「何を言われる、真之介殿。確かに仲人口と申して、殊更に良いことばかり

   並べ立てるものだが、私は決して、そのような口先だけの話は致してはおら

   ぬ。お主のことはすべてありのまま伝えておる。また、通常は父である三浦

   殿と話を勧めるところなれど、この度はふみ殿を交えての話であり、何よ

   り、肝心のふみ殿が『いく』と申されたのだから、これ程確かなことはある

   まい」 

真之介「はぁ…。いえ、やはり、このお話は、私には…」

坂田 「では何か。三浦殿のご息女では不足と申されるのか」

真之介「不足などとはとんでもございません。先ほども申しましたように、旗本の

   姫様が私の様な、にわか武士の所へなど到底…。やはり、何かのお間違えで

   は」

坂田 「何も間違えてなどおらぬ」

真之介「しかし、釣り合いませぬ。昔から申すではございませんか、釣り合わぬは

   不縁の元と」

坂田 「では、行くと申された、ふみ殿の気持ちをどうなされるおつもりか」

真之介「どう、と申されましても、私は、その、ふみ様にお会いしたこともござい

   ません…」

坂田 「何と、不実な男よのう。真之介殿、うら若き娘が行くと申しておるのだ。

   そう無碍になさるものではない」

真之介「はぁ、しかし…」


 話は平行線のまま、否、一方通行のまま、後はことは任せておけと坂田は帰って行った。

 子供の頃から、今は亡き父と坂田の屋敷に出入りしていた。真之介が武士になる時も何かと力になってくれ、縁談を任せることに異論ある筈もなかった。

 しかし、よりによって、こんなとんでもない話を持ってくるとは…。


----何か、ある…。








 





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