19世紀末のヨーロッパにある都市の下水掃除人として日々を生活するプリズマティカ。
彼女が下水掃除中に出会ったのは、地図製作技師の少年・トルウ。
都市の地下にある下水抗は古くから存在しているだけではなく、迷宮のような状態になっていて、地図には載らない空白地帯が存在していた。
トルウはその空白地帯の調査に来ていた。──表向きは。
かつて50年前に存在していた、ヨーロッパに平和をもたらした『パスカル・アルファ』という女性。
彼女が『遺したもの』を巡って、様々な人物の思惑が絡み合い、ある1つの真実が導きだされる──
***
当初、これは歴史モノなのかと思っていました。実際に存在する国や歴史の話が出てくるから。
しかし、よくよく読んでみると、少し違う。少し、ズレている。
つまり、現実とはパラレルな世界のお話だ。異世界、という程遠くなく。実際にヨーロッパの歴史を知っているとより楽しめる作りになってる。多分。(私はあまりヨーロッパの歴史に詳しくない……)
世界観の裏にある作者の深い知識が垣間見える。マジ凄い(語彙力……
あと! 重要なのはスチームパンクだった事! ヤバイっすね。出てくるギミックがもうスチームパンク好きにはたまらない。たまらないよ!
ヨーロッパで実写映画にしてくんないかなぁ!!
勿論、しっかり現実の歴史を踏まえつつ練りこまれた世界観も素晴らしいが、それよりも!
これは多分、ミステリー作品でもある!
最後の最後まで油断できない! 途中でピンときて「こうだろ!?」とか思っていたら!! 裏切られた! 裏切られたよっ!? そんな浅い考察で解ける設定のワケないだろ! ハイ! すみません!!
そして。
これは、一人の少女の物語。
少女と、少年の、邂逅物語でもある。ガールミーツボーイだ。
ヤバイ。語ったら長い。
面白そうだからゆっくり楽しもうと思っていたのに、うっかり寝ずに一気読みしてしまった……でも、後悔はない。
こんな作品が殆ど読まれる事なく埋もれているなんて……カクヨムは怖い。勿体ない。
他の方もおっしゃっていたように、タイトルで少し損をしている気がする。
タイトルはストーリーと密接に関係している。読み終わってからタイトルを改めて見ると意味が分かる。ああ、なるほど、となる。だから、より「勿体ない」と感じる。
スチームパンクファンは是非読むべし。
重厚ファンタジー好きにもオススメです。
スチパン世界で繰り広げられる、ボーイ・ミーツ・ガールならぬ「ガール・ミーツ・ボーイ」です。しっかりと作りこまれた設定、ワクワクする世界観、テンポの良い文章と小気味よいセリフ回し。お薦めポイントは多々あれど、この作品を魅力的なものにしているのは、間違いなく、主人公・プリズマティカのキャラクターでありましょう。
また、ぜひとも特筆したいのが、舞台となる都市・アルジェンティナの重層的な構築性。「都市」の実在感は、そのままファンタジー世界の実在感へとつながり、物語に奥行きを与えています。
物語が進行するにつれて、プリズマティカこそが、天才科学者パスカル・アルファをめぐる「謎」の中心であることが徐々に明らかになってきます。そしてどんでん返しに次ぐどんでん返し! もう唸るしかないストーリー展開には脱帽の一言です。余韻を残しながらのクライマックスもまた見事。
タイトルでやや損をしているという印象がないでもない本作ですが、SF、ミステリー、ファンタジーの要素を詰め込んで、最後まで読ませる魅力を持った傑作と言えましょう。
主人公以外のキャラ造形も秀逸なのですが、個人的にはプリズマティカのライバル(?)、ウルスラがいい味を出してます。
こういう埋もれた良作に出会えるあたり、まだまだこのサイトの可能性は捨てた物でもないのでは?