オタクの健全化:逃げ道→マニア

その昔、オタクは負け犬の逃げ道でした。蔑視されてたのもそのせいです。「おめーら、本当にガンダムが好きな訳じゃないだろ?。好きになれない自分から逃げてお山の大将になるための小山に、ガンダムを利用してるだけよね」。今のオタクは単なる健全なマニアです。それでいいのです。ルサンチマン駆動の、ためにする物好きでは、所詮、数寄の鋭角度に限界がありました。 


1980年代のオタクは、相手に呼び掛ける際の二人称に、「オタクさぁ、この前のアレ、観た?」みたいな感じで本当に「オタク」という語を用いることがしばしばありました。雑誌宝島内のコーナーであったVOW欄あたりで、彼等を「オタク」と揶揄る文章をみた時、うまいこというね、座布団一枚だなと思いました。今、私は宝島のVOWといいました。当時のサブカル好きのメッカです。今ではサブカル好きとニアリーイコールみたいな意味合いにまで拡散してしまったオタクですが、当時は、サブカル好きから明確に蔑視される対象でした。端的に言えば、戸川純やPhewを聴いてるサブカル好きとガンダムやイデオン見てるよなオタクとは、水と油、カーストが違っていたのです(少なくともサブカル好きはそう思っていたはずですw)。


当時のオタクはクラス内で最下層のカーストに位置する人々で、現実世界で健全に性欲を解消する機会もスキルも持たないような性行動弱者で、一般社会から省みられにくいような特殊な趣味の世界に逃げ込むのも、「オタクさぁ」に代表されるようなその世界独特の口調・行動様式をとるのも、全部、弱者の傷の舐め合い・逃げ道に使ってる代替満足であることがみえみえな人々だったのです。「おまえら、万一リアルに彼女でも出来た暁にゃ、もうガンダムなんか見ねぇべ?」というのが周囲の彼らに対する見方だったのです。当時はまだ、ナウシカ以前だったことにも留意して下さい。ロック評論家という、メインストリームカルチャー界の住人である渋谷陽一が、当時蔑まれていたアニメ界のコンテンツであるナウシカを激賞するに至る歴史的転換点にはまだ数年の間があったのです。ちなみに激賞した時ですら渋谷陽一は、作品のクオリティは素晴らしいが、主たるオーディエンスであるアニメファンのしょうもなさはもすこしどうにかならんのか、という趣旨のことを言ってたような記憶があります(^O^)


でも今やオタクは単なる健全なマニアです。二次元でしかイケない特殊性嗜好者も、別に、三次元で肉を調達するスキルに欠けてるせいで仕方なくそうしてる訳では全然なくて、単に二次元が好きなだけです。その方が二次元エロスのクオリティも上がりやすいと思います。やはり、衷心からの数寄こそものの上手なれ、です。ルサンチマン由来の代償行為では、イケる高みに限界があります。


似たようなことはそれより少し前に文芸の世界でも起きてた気がします。確か、丸山健二とかいう小説家が、結核の体で書く小説にはやっぱ限界あるよねー、みたいなこと言って、割とよく鍛えられた体で小説書いてたようなwww。いや、三島のボディビル的奇形筋肉とはまた全然違って(笑)。


ただ、原義的意味合いのオタクカースト所属だった私からすると、近年のオタク語義の拡散はやや複雑な気もします。「それじゃ僕達の居場所が」って感じ。今年50歳になるけど今でも童貞で、同年代の「うちの子がこんなこと言った」ばなしになんか入りようもないし、バブルでチャラく得た正社員の地位もリーマンショックの翌年にリストラされちゃって高齢派遣さんだし、年収403万は一人暮らしには充分でも、五十越して派遣の口なんてあるのかよ?来月更新かからなかったら橋本の影響下にある大阪市政で生活保護受給ってハードルむちゃ高そうやんか、といった私の居場所はどこ?。ルサンチマンは芸道向けの燃料としては限界が、って話になっちゃうと、大抵のマニアは別に困らないでしょうが、私的にはちょっとねー、って気はします。


しますけども。


中学一年生の時だって、お友達になれそうな子はみんなガンダムやイデオン見てたけど、話合わせるためだけにガンダム見るとかかったるくて出来なかったし。ガンダム好きな彼等だって、私が「Phewとか、ポプリでのP-MODELの変貌とかすげー」とか力説しても「あっはーん?」だったし。大槻ケンヂが原義オタクとサブカルロックを架橋するまでは、両者の間に交通はあまりなかったわけで。


やっぱ、芸能とルサンチマンは、切り離して考えましょうや、ってことなんかなぁと思います。


つまり、2016年春時点のオタク周辺状況は、健全で幸福で王道で正しいヽ(^0^)ノ


めでたしめでたし


めでたいのか?WWW

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