星座 / Constellation
妻がきゅうりを絞っている。薄緑色の水が木の器にたまっていき、ぷんとした匂いの中で蛍が飛ぶ。絞りきられたきゅうりは浮かび上がり天井に張り付いている。甘い香りが部屋に満ちていく。ふらふらと飛んでいた小鳥が器の中に落ちると、消えてしまう。部屋の明かりも消えすっかり真っ暗だ。「かけないのかい」。私が尋ねる。「私は煙管に」。「私は帽子に」。妻はベッドに横になり、ぞっとするほど白い肌を見せている。一皿のシャーベットがゆっくりと溶けてなくなる。私の煙管からいくつか白い光が上がり、そっと空へ上がっていく。水面に広がった波がゆらりゆらりよカーテンをめくる。帽子のつばからも光が上がりふわふわと漂っている。空の星はすっかりなくなってしまっている。「メロディだね」。記憶の通りの夜空がカーペットへと落ちてくる。音はしない。
偶然の街 流酸 @ryuricca
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