夜に踊れ

山吹弓美

夜に踊れ

「だって私、死ねないもの」


 闇の中に赤く光る瞳。その持ち主である女性は、自分を見つめている少女にふわりと微笑みながらそう、答えた。



 その家は、こじんまりとした古びた洋館だった。造成されてから半世紀ほどになる住宅街ではあちこちで住居の新築やリフォームが進み洋風の家が増えてきているせいもあって、昔は目立っていたであろうその家もすっかり周辺の風景に溶け込んでしまっている。

 洋館の主は、これまた西洋風の顔立ちをした女性だった。掛けられている漢字名の表札と近隣の古参住民の証言を信じれば、彼女はこの街ができ始めた頃に入居してきた国際結婚夫婦の1人娘であり、実際には半分が日本人であるらしい。

 言われてみれば髪はさほど明るくない栗色で、目も深みのあるブラウン。肌の色は少し白いが、意識して見なければ気づかないだろう。ただ彫りの深い顔が一瞬違和感を覚えさせるだけで、しかも話してみれば言葉はごく普通の日本語だし本人は気さくで明るいごく普通の若い主婦、といった感じの女性なのであるからして。


 少女は、物心ついた頃から洋館を見て育ってきた。故に、洋館と主の女性の存在に何ら奇妙さを覚えることもなかった。何しろ、それはそこにあって当然のものなのだから。

 少女の家から学校に通うには、ほんの少ししか離れていない洋館の前を通る必要があった。登下校の時間には必ずといっていいほど主の女性が玄関先で花の手入れや掃除をしているため、子供たちは当たり前のように女性と挨拶を交わしている。

 彼女には子供どころか夫もおらぬまま1人で生活しているようで、その代わりにかどうかは分からないが近隣の子供たちを気に掛けているところがあった。PTAも自治会も、女性のことは子供たちを見守ってくれている存在として認識しているようである。通学路のルート決定も、彼女の存在を加味してのものだったようだ。


「おはようございまあす!」

「おはよう。学校いってらっしゃい」

「行ってきまーす!」


 女性と少女の朝の会話を聞いて、周辺の住民は今日も1日良い日であろうと顔を綻ばせる。


「おばちゃん、たっだいまー!」

「おかえりなさい。足元、気をつけてねー」

「はーい」


 少女が元気よく上げる声とそれに答える女性の声に、親たちは今日の幸運を喜び我が子を迎え出る。


 同じルートを通る他の子供たちも同じように朝、夕方に声を上げ、そうして毎日が過ぎていく。中には、長期休暇の間ですら女性と挨拶を交わす子供もいた。

 当然の習慣となってしまっていたため、学校が休みの日でも挨拶しなければ何となく収まりがつかないものらしい。少女もそう考える1人であったため、例えば旅行に行く前にはきちんと女性に挨拶してから出発し、帰ってきた時にはおみやげをプレゼントするようになっていた。

 そんな毎日が、この街のごく当たり前の風景である。



 そんな当たり前が崩れたのは、少女が小学校最後の年を迎えることになる春先だった。

 最初は、ゴミ捨て場に散らばっていたカラスの黒い羽。

 身体そのものは見つからず、野良犬あたりの仕業ではないかという結論に達した。その割に、ゴミ袋自体が荒らされていないのはおかしいという意見もあったが、これは大した問題ではないとして無視された。

 その次は黄金週間の少し後、道路や空き地にもっさりと積み上げられた野良猫と思しき大量の毛。

 これまた身体は発見されず、血の1滴も残されてはいなかったために何が起きたのか、住民たちが知ることはついに無かった。楽天的な意見としては、ちょうど毛の生え変わる時期だったというものもある。

 とはいえ、6月に入る頃には街中で猫を見かけることはなくなった。野良だけではなく、猫を外で飼っていた住民も自身の飼い猫を外に出さなくなったからだ。猫以外のペットを飼っている者も、矛先が愛する家族に向かぬようことさら気をつけているようだ。

 だが、あと1ヶ月もすれば夏休みに入ることになる、その日。

 街の中でも少し細い道の真ん中に、野良犬の身体を構成していたらしい肉片が無造作に散らばっていた。

 やはり血は飛沫すら見つからなかったものの発見された時にはカラスたちがぎゃあぎゃあと鳴きながら群がっており、うっかりその光景を目にした近所の奥様がそのまま泡を吹いて失神してしまうという事態に発展した。

 とは言え、失神した奥方を除けば被害を受けたのが動物であるということもあり、警察はパトロールを密にするというだけにとどまった。自治会やPTAも長期休暇を控えていることもあって警戒の強化を確認したのだが、そこからは何も起きなかった。


 否。

 事件自体は起きなかったものの、子供たちの間では噂が広がった。

 あるいは言葉で、あるいはメールでその噂は、あっという間に街のほとんど全ての子供に伝わっていく。

 曰く、熊ほどもある大きな犬が野良犬を食らっていたとか。

 曰く、カラスは泣きわめく余裕もなく何かに食いつかれたのだとか。

 曰く、猫の身体に無数のネズミが群がりその肉を食いちぎっていたのだとか。


 ただ。

 現場に血がなかったという話から、ごく当たり前のように子供たちは断定していた。


 犯人はモンスターだ。

 いわゆる、吸血鬼だと。


 だって。

 カラスの羽がたくさん落ちていたゴミ捨て場にも、

 猫の毛が散らばっていた道路や空き地にも、

 野良犬のかけらにカラスが群がっていた細い道にも、


 まるで血がなかったじゃないか。


 子供たちの中には、親にそう言った子もいるらしい。だが大人たちはそもそもモンスター、怪物といった存在を実在のものとは思っておらず、故に我が子たちの主張を一笑に付した。ゲームのやり過ぎ、アニメの見過ぎ、漫画の読み過ぎと決めつけて、危ないから1人で出歩くのはやめなさいと注意するにとどまった。



「そりゃあ、大人の人たちは心配するでしょうよ。動物が死んでいても怖いのに、自分の子供に何か起こったらどうしようって考えるもの」


 少女が洋館の前で女性にそう言われたのは、あとほんの数日で学校が終業式を迎える日の昼間だった。1人で出歩くなと親に言われたものの、学校からここまで来るほんの少し前に友だちとは別れる。故に少女は1人で、女性と顔を合わせているのだ。

 もっともここに洋館と女性が存在しているから、家の前まで友だちといろなどと少女の親が厳しく言うことはないのだが。


「だけどだけど、大人でもきっと危ないんだよ。だって、カラスや犬や猫食べちゃったのは吸血鬼だもの」

「吸血鬼?」

「皆そう言ってるよ。だって、どこにも血のあとがなかったんでしょう?」


 首を傾げた女性に向けて、少女は言葉を重ねる。その女性が現場を見ているかどうか、実際に現場に血の痕がなかったのかどうかは、まるで問題ではないとでも言うかのように。

 子供たちにとっては、自分たちが『知って』いる事実が最重要点なのだ。


「どうかしらねえ。お父さんやお母さんや先生は何て言っているのかしら」


 女性はそんな少女の言葉を否定せず、彼女に向けて問いの言葉を投げかけた。そうでなければ、どう返していいのか分からなかったのかもしれない。


「それがね、ひどいんだよう。そんなものいないからって怒るの!」

「そう」


 ぷうと頬をふくらませながら少女が口にした答えに、女性は小さく頷く。そうして一瞬困った顔をしてから、その頭をゆっくりと撫でてやった。


「いるかどうか、私には分からないわ。でも少なくとも、犬や猫に酷いことをした人がいるのは本当ね。だから、気をつけるのよ」

「……はあい」


 女性の言葉は少女を少しでもなだめようとしてのものだったが、その思いは伝わらなかったらしい。何しろ、少女の頬はふくらんだままだったから。


「おばちゃんも、信じてくれないんだね」


 面白くなさそうに呟いて、少女はとぼとぼとその場を後にした。


「信じないほうが、いいこともあるのにね」


 女性がボソリと口にした言葉を、聞くこともなく。




「……あれ?」


 不意に、少女の目が開く。

 確かあの女性と別れた後普通に家に帰り、宿題をして母親の手伝いをして、夕食を食べた後親に急かされて風呂に入った。そしてごろごろとテレビを見ているうちに眠くなって──


 ──それが何故、真夜中の交差点に立っているのだろう。


 そして、目の前に立っているこの大きな影は何だろう。街灯を背後にしているためシルエットしか分からないそれは、まるで巨大な犬、で。ただその眼がらんらんと、おぞましい血の色に輝いている。

 ぴちゃ、と水音がする。犬らしいシルエットの足元から響くそれは、もしかして口元と思しき場所から、滴っている何か。

 鉄臭くて、水よりもどろっとしていて。


  熊ほどもある大きな犬が野良犬を食らっていたとか。


 少女の脳裏に浮かんだのは、メールで流れてきた噂。確かに信じてはいたけれど、それはあくまで噂で、自分とは関係ない世界の話のはずだった。

 だから、これは夢だ。

 夢だ。


 夢ならどうして、この影は少女を見て、にいと笑ったように見えたのだろうか。

 どうして少女は、腰が抜けたままその場から動けないでいるのだろうか。

 周囲の気温ががくんと冷え込んだように感じられて、身体ががたがたと震えて、声も出せなくて。


「あらら、やっぱり呼ばれちゃったのね。信じすぎたから」


 背後から聞こえた声に、少女は慌てて振り返った。いつもよく聞いていて慣れている声で、口調も普段通りだったせいで少女は一瞬、自分の置かれている異常な状況を忘れたのだろう。

 そこには、いつも会っているあの女性が立っていた。

 いつもの、彼女のはずだ。

 それなのに、少女は再び自分が異常の中にいることを本能で悟った。思わず抱え込んだ身体は、すっかり冷えきってしまっている。


「来ちゃったものは、仕方がないか」


 にっこりと微笑んだ女性の両の目が、巨犬の影と同じように暗闇に赤く光る。

 普段のようなシンプルで動きやすい服装ではなく、おとぎ話でお姫様が着るような豪華なドレスを身にまとっていた。いつもは無造作に首の後で束ねられている髪が丁寧に結い上げられ、付けられた髪飾りが月の光にしゃら、ときらめいている。

 するりと歩き出した女性の足音が、しない。長いドレスを着ているのに、布ズレの音もしない。

 そうして少女に近づき、女性はその小さな肩をポンと叩いた。その手もいつもと違い、ぞっとするほど冷たい。冷えきってしまった自分の身体よりも、ずっと。


「私が守ってあげる。大丈夫だから、ね」

「……え」


 女性の言葉に、一瞬少女は目を見張った。守ってあげるとは、あの怪物からか。いや、いくら何でも、女性の手に負える相手ではないだろう。


「お、おばちゃん、逃げない、と……」

「大丈夫よ。あなたを守らなくちゃいけないし、私は何も気にする必要がない」


 小さく頭を振りながら顔を青ざめさせる少女に対して、女性は余裕のある笑みを浮かべている。その赤い口元から漏れた言葉を、少女は一瞬聞き違えたかと思った。何故なら。


「だって私、死ねないもの。食われても、すすられても、潰されても」


 彼女ははっきりと、そう口にしたのだから。

 その言葉がおかしなものであることくらい、少女にだって分かる。故に少女は、まじまじと女性の顔を見つめた。


「……おばちゃん?」

「そういえばあなた、『私』の名前知らなかったわね」


 目を丸くして自分を見ている少女の顔に、女性は小さく肩をすくめた。そして、自らの胸に優雅に手を当てて、名乗る。


「私の名はエルージェ。闇の世界に生き、魔物を食らう女」


 にいと笑った彼女の口元に牙が見えたのは、まさか気のせいではあるまい。


「むかあし、むかし。遠い西の国に、とってもお馬鹿な女がいました」


 朗々と流れる声。それに導かれるように、闇のそこかしこからキイキイ、チイチイと無数の鳴き声が聞こえた。ややあって、ざわざわというざわめきと共に闇の塊が道路を覆い始める。巨犬らしい影は、その場から動こうとしない。相手の出方を伺おうというのだろうか。


「その女は自分が若いままでいたいがために、自分が住んでいた城の周りから若い女の子をたっくさんかき集めて、その血を飲んだりお風呂のお湯がわりにしたりしました」


 闇の塊の正体は、足元を絨毯のように埋めていくネズミの群れだった。エルージェと名乗った女性がくすりと笑ったのは、その絨毯が少女の周囲1メートル以内には入らないことを確認したからだろう。まるで、少女の周囲だけぽっかりと穴が開いたかのようにアスファルトが露出している。


「そんなことをしたのでお馬鹿な女は神様に怒られて、死ねなくなりました。何しろ死んだ人が行くのは神様のいるところだから、神様が来るなって言ったらいつまでも生きていかなくてはいけないの」


 そうして少女を避け、自らの足元にわさわさと集まってくるネズミの上でエルージェは、軽く舞い始めた。普通ならば踏み潰されて無残な骸を晒すであろうネズミたちは、エルージェの靴の裏に触れた途端じゅうと焼けるような音を残して融けていく。


「死ななくていい、なんて羨ましいって思ってる? でもね、そういいことでもないのよ」


 なおも舞いながら、ちらりと少女の顔を伺うエルージェ。その表情はどこか悲しい、けれども澄んだ笑顔だった。1匹だけ少女に飛びつこうとしたネズミが、エルージェが軽く振った手の指に触れてじゅうと消える。


「お友だちも、家族も、自分を知っている人がどんどん神様のところに行っても。自分の生まれた国で戦争が起きて沢山の人が死んでも、国そのものがなくなっちゃっても。お馬鹿な女だった私は、いつまでもいつまでもこのままで生きていかなくちゃいけないの」


 じゅう、じゅうという音がやがて、ほとんどしなくなる。そこまで来て少女は、既にネズミたちがほぼ消え失せていることに気づいた。だって、エルージェの舞いに見とれていたから。

 かつん、と固い音がした。どうやら、エルージェの靴の裏がアスファルトの上に降り立ったらしい。ぼんやりと目の前の光景を眺めていた少女の意識は、ここでやっと現実へと帰還した。

 否、思考は未だ帰還していないかもしれない。

 噂だったはずのモンスターの存在や、無数のネズミの群れや、そして何よりも眼の前にいる女性のせいで。


「でもね、神様はチャンスをくれました。お前と同じような馬鹿をやる魔物はたくさんいるから、そいつらを全部やっつけなさいって。そうしたら、私も神様のいるところに行けるんですって」


 ふふ、と唇の端をわずかに歪め、エルージェは巨大な犬に向き直った。かの怪物が律儀にそこまで待っていたのは、言いつけを守る犬という動物をモチーフとしているからだろうか。少女には、分からない。


「だからね、私。許される日までずっと、ずうっと、こうやって悪い魔物をやっつけなくちゃいけないの」


 きしゃあ!


 それまでシルエットとしか見えなかったモンスターが、初めて動きを見せた。大きな口を開け、だらりと涎をこぼしながら鋭い牙をむく。ぼとり、とその足元に落ちたのはやはり、血の滴った何かの肉。


「例えばこんなふうに、血を吸う獣になってしまった捨て犬をね」


 がきん、と振り下ろされた牙を、エルージェは優雅にかわす。ただドレスの袖がほんの僅か切先に引っ掛けられ、びりと破れた。

 次の瞬間、エルージェの爪先が道路を蹴った。ふうわりと浮かんだ貴婦人はそのまま巨犬の背に乗り、そうしてにいと目を細める。

 その表情は、犬が最初に浮かべていたものと同じ、獲物を捉えた捕食者のもので。


「じゃあ、いただきます」


 かぱりと広げられた彼女の口の中には、人にはありえないほど長く伸びた犬歯、否、牙がぬめりとその存在を誇示していた。

 瞬間、少女の周囲を暗闇が覆った。「あなたは見ないほうがいいわ」という、エルージェの声と共に。

 そうして。


 ──────ッ!!


 がぶりという音をかき消すように、獣の絶叫が轟いた。




「はい、おしまい。もういいわよ」


 エルージェののんびりとした声が、少女の周囲を閉ざしていた闇を消し飛ばした。恐る恐る目を開いた少女の視界の中に、もうあの魔物とやらは存在していない。飛び散っていたであろう血も肉も、水で洗い流されたかのようにきれいさっぱり消え失せている。

 ただ、まるで中世の貴族のような豪奢なドレスを身にまとったエルージェがそこにいるだけだ。


「……それ、何ですか?」


 否。少女の前に捧げられた彼女の指に摘まれているものを見つけ、少女は問うた。


「これ? さっきまで魔物だったもの。正確に言えば魔物の力をぎゅっと押し縮めて、形にしたものね」


 自身の指先で血の色をした小さな石をくるくると弄びながら、エルージェは答える。その色は彼女の唇の色にも似ていて、少女は一瞬ぞくりと背筋を震わせた。


「こうなるとね、一種のお守りみたいなものなの。誰かが持っていればその人を、地面に置いておけばその土地を魔物の害から守るんですって」


 エルージェは音もなく歩み寄るとすっと屈み込み、少女の手を取った。小さな手のひらにぽんと石を載せて、そっと握らせる。


「あなたに、あげるわ。もう二度と、こんな目に遭わないように。もう二度と、『私』に会わないように」

「わたし?」


 少女の疑問に、エルージェが答えることはない。ただ、いつもと同じ、それでいて妖艶な笑みを浮かべただけで。


「じゃあね。さようなら」


 隅々まで手入れの行き届いた細く白い指がとん、と少女の額をつついた。




 ふ、とまぶたを開くと、そこは少女の自室だった。彼女はきちんとパジャマを着て、自分のベッドに横たわっている。枕元に置いてある携帯電話を確認すると、いつも起きるよりは少し早いけれど朝の時間を示していた。冷たいアスファルトの上に立っていたはずの足も、特に汚れている様子はない。


 あれは夢だったのだろうか、と少女は思う。

 あの日を境に事件は発生することなく、動物の死骸を捨てた犯人は結局不明ということになってしまっていた。恐らくは野良犬あたりだろう、という結論は事件が始まったころとまるで同じものだ。大人たちの警戒は夏休みということもあり相変わらず続いているが、それも二学期が始まればゆっくりと収束していくだろう。

 あの翌日通ったいつもの場所に洋館は存在していたし、住んでいる女性も少女の知っている顔だった。子供たちと挨拶を交わすのも以前と全く同じで、そこに不思議は存在していない。

 けれど彼女は、あの一夜のことをまるで覚えてはいなかった。名前もそもそもエルージェではなく、昔風のドレスなど持ってもいないらしい。そうして少女に柔らかく微笑み、夢でも見たのねとその頭を撫でた。


 それならきっと、あのできごとは夢だったのだろう。

 納得の行かぬ点も多々ありながら、少女は自身にそう言い聞かせた。

 モンスターも、死ねないままモンスターを食う女もいるはずもないのだと。

 大人たちの言っていたことは、きっと本当なのだ。


 ただ。

 少女が持つカバンの片隅にころんと小さな赤い石が落ちていることを、少女はまだ知らない。

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