社会で役目を終えた老人が役に立つ

夫の単身赴任が始まって数年後、娘はOLに、息子は大学生になります。

ある時、夫の単身赴任先へ私一人で出掛けたところ、大学生の息子は友達を家に誘って深夜まで遊んだ事がありました。


狭い家の事、姉は仕事から帰っても気が休まらなかったのでしょう、私の母の家に泊まりに行きます。電車を乗り継ぎ二時間近くかかります。


いきなり孫が訪ねてきて私の母は驚きました。あわてて夕飯を用意し、布団を一客押入れから引っ張り出し…と、大わらわだった様です。翌朝孫は出勤していき、やれやれ。


こちらは30年前のお隣の話です。今は引っ越して居られませんが、当時高校2年生の息子さんがいらっしゃいました。お母さんとは口をきかない無愛想な年頃です。

ある時二人は口喧嘩となり、売り言葉に買い言葉でお母さんは「出ていけ!」と言ってしまいます。すると息子さんは動じることなく「出ていくよ!」と、あっさり言うと何も持たずさっさと家を出て行ってしまいました。


お母さんは、おろおろするばかり。

しばらくすると「うちに来てるよ」とおばあちゃんから電話があり、ホッとしたと言います。「男の子は何をするやら!」と、ほとほと困った様子でベランダ越しに私と話したものでした。

その時私の息子は、まだ生まれていませんでしたから、他人事で聴いていましたが、今ならその方の気持ちが、よーく分かります。


二十歳を過ぎても高校生になっても、何かあって切羽詰まれば祖父母 を頼ります。


小学生なら尚更そんな関係が必要になるでしょう。

親と子だけの核家族では、時には息が詰まります。その上夫婦関係に問題があったり片親の困窮した生活なら、子供の心身への影響も出てきます。


家庭に居ずらい状況を子供が感じ取った時、逃げ出せる所、頼れる所を求めても、祖父母や親族が近くに居ないかもしれません。

たとえ祖父母が亡くなって多くの財産を残したとしても、それは子供にとって心に寄り添ってくれる優しい『人』ではありません。


寄る辺ない子供同士が深夜、街中を歩き回るのは可哀想な事です。

そんな子供には老人施設への出入りを可能にすれば、子供の心のありように良い変化があるかもしれない、と思ったりします。

行政が関与して保護や指導したところで子供の心は救われません。


事実、介護スタッフの子供が学校帰りに母親の勤め先の介護施設に寄り、老人の手伝いをしているという放送がありました。

子供のぎこちない仕草に皆が微笑み、子供の失敗にも寛大な心が生まれます。


祖父母や親族との交流が出来るように、普段から親は努力しないといけない、とつくづく思います。


嫁姑の関係や兄弟姉妹の仲が上手くいかない場合もありますが、子供を持った以上、子供のために時には忍耐力が必要です。


今、長生きする老人が増えています。

年金の負担が若い人に重荷となり、肩身が狭い。

役目が終わったら消えろ、と言われんばかりの老人も、本当にさっさと死んでいくようになると、果たして若者にとって良い方に作用するのでしょうか。


長く生きてきた老人は、人生を俯瞰して眺めることが出来ます。息子や娘・孫への眼差しが優しくなり、若い人の「孤独」を少なからず癒やし、心を救う役目がありそうです。


でも、今では厳しい視線の年配者が多いような気が…。

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