情に厚い障がい者と異常な心の健常者

昔、ポリオワクチンの定期接種がまだ行われていなかった頃、体に麻痺が残る子供がいました。

ご近所にも私より一つ年上でそんな女の子がいました。知的障害は無ないので、話は出来ますし、学校の成績も良い頭脳明晰な人でした。

彼女には、同級生の友達が登下校の時いつも寄り添っていました。


私も小学校低学年の頃まで、彼女の家によく遊びに行ったものです。部屋で傍に居て、不自由ながらも一緒に話していただけだったのに、居心地が良かったものです。


私が中学生の頃、彼女の一家が引っ越すことになり、彼女から私に『あしながおじさん』の本が贈らました。


幼い頃遊んだきりで、その後は会うこともありませんでしたのに、驚いたものです。

私との思い出を、彼女は心に残してくれていたのでしょう。

嬉しかったのを覚えています。

他人の私にさえ情け深い彼女ですから、家族なら推して知るべしでしょう。

黄色く変色したその小さな児童書を見ると彼女を思い出します。


また近くに代々続く大きな農家がありました。昔の家族制度の中、若いお嫁さんは三人女の子を産み、男子誕生まではと四人目を産みますがダウン症の女の子がうまれます。

ご近所ですから、知らず知らずその御宅を小さいながら私は観察していました。彼女は家族の中心で大切にされていました。


健常者と同じ生活能力は無くとも、障がい者の持つ厚い情と鋭い感性は、健常者のそれとは異なる特別なものです。彼女への深い愛情が家族の中に育っていきます。


特別な自閉症や知的障がい者からは、時に天才を排出することがあります。一見変り者と見られる発達障害者の天才的な才能は、社会への貢献度は大きいと言われます。


親から深い愛情で育つ障がい者がいれば、親から疎まれて育つ健常者がいます。


今では健常者の異常な心に恐怖を感じます。

障害者施設での殺傷事件

警察官・教師・僧侶にまで強盗、性的犯罪者がいるご時世です。


子供を預ける学校で、先生と子供が良好で健全な関係が築けるのか、疑心暗鬼に陥ります。


家庭と学校で子供に伝えなければいけない。

勉強する前に伝えなければいけない。


人の命は、赤の他人にとっては全く関心の無い存在です。

大企業の社長であろうと一国の大統領であろうと突然の死が訪れたところで、後を継ぐ者は雨後の筍のごとく次々現れてきます。


国にとって国民の生死は、数えて集計・分析する事でしか関心は持ちません。

しかし親として子の誕生は無上の歓びであり、死は大きな喪失感を生みます。

この感情は他の追随を許しません。


他人同士、無関心な命は、唯一親子にとってこの世で 最も大切な命です。


一人一人の後ろにはその人の命を大切に思う存在があると想像できます。


それなら、お互いを尊重し合って生きていかなければ、誰もが安心して生活出来ません。


子供のいじめで「死ね」と簡単に言う子供。あなたも他人からすれば居ても居なくてもいい人間。


学校の先生も父兄も想像力を働かせ子供に伝えなければいけない事です。

「『死ね』と言った相手にお父さんとお母さんがいる。その子がもし死んでしまったら、お父さんとお母さんはどれ程悲しむか想像してみて。そして君をずっと恨み続ける。厳しいけど人の当然の気持ちだよ。君が『死ね』と言った事に、君のお父さんとお母さんも悲しみ、一生罪を背負って生きていく」


集団のいじめも不思議です。

きっかけは一対一だったはず。二人の間で不快な出来事があったなら、暫く離れていればいいだけの事。


マザーテレサの言葉があります。

「この世界は食べ物に対する飢餓よりも愛や感謝に対する飢餓の方が大きい」

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