袖すり合うも多生の縁

私一人で大阪の実家に出掛けます。

JR新快速電車は二人掛けシートが向い合せになっています。


私が座った前には、明らかに阪神ファンと分かる帽子 メガホン📣 法被(はっぴ)姿の父子が座っています。


小学生らしい男の子👦からは、ワクワク感が伝わります。

私の夫も幼稚園時分から、筋金入りこてこて阪神ファン。


思わず「タイガースの応援に行くの?」と声をかけます。

男の子はビックリして、隣のお父さんを見上げます。当然の事で、そんなとき父親は「はい、そうなんです。京セラドームに…」と楽しそうに話してくれるものだと思い込んでいました。


期待する私と男児の視線の先のお父さんは、目をつむったまま下を向いて身を固くしています。

「えっ👀⁉」と呆気に取られます。

こんな状況は生まれて初めてで、私達二人は誠に居心地が悪く困ってしまいました。


私はいたたまれず「どこまで行くの?」「阪神ファン?」と尋ねますが、男の子はしどろもどろの返事です。男の子が可哀想で、それ以上話すのをやめました。


大人になってもこういう人がいるのか、と驚くばかり。


他人との接し方を知らない父親を見て、この男の子も同じ様な大人に育つのだろうと思うと寂しくなります。


大阪で降りて環状線に乗り換え、実家近くのスーパーの食料品売場を回っていると、

「そこのお姉さん⁉…悪いけどあの高い所にある食パン🍞とってくれへん?」と、私に向かって話しかけます。


確かに随分小柄な年配の方で、積み上げられたパンは、下から引っ張り出すのは危なっかしいと納得します。


「ハイハイ、御安いご用です。」と、手渡します。

「おおきに(ありがとう)。あんた背が高いから声掛けさせてもろてん。この通り、私は小さいやろ。羨ましいな😃」と、少しの間、知らない者同士、背丈の話に花が咲きます。


対照的な二人と会った、印象に残る一日でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る