第12話 ログイン再び

システム管理部に向かう道すがら、私は智子に訪ねてみた。


「ねぇ智子。なんでトトのことパパって呼ぶの?」


「んー?トトってだーれ。パパはパパだよ。」


あぁ、そうか。幼児化してそれ以降の記憶は無いんだっけ。じゃあトトって言っても誰だかわからないわね。


「トトって言うのは、あなたがパパって言ってる人のことよ。」


「ふーん、パパって、トトって言われてるんだー。トト、トトパパ。トットパッパー、とっぱっぱ〜」


いきなり変な歌詞をつけて、歌い出した。お気楽ねー。

智子も子供時代は普通に無邪気な子供だったのね。


「ねぇねぇー、おばさんー。今からどこいくのー?」


「・・・智子、私のことは、レイミちゃんって言いなさい。

こんどおばさんって言ったら解剖するわよ」


「ひっ、わ、わかったぁーー」


ちょっと脅かしすぎたかしら、でも私だってまだ20代だし、ぎり20代だし、おばさんじゃないわよ。


「ねぇ智子」


「な、なぁに、レイミチャン・・」


な、なんか怯えられてる。。。仕方ない、優しく接するかな。


「おねえちゃんに教えて欲しいんだけど、パパってどんな人ー?」


「んー、パパはねー、ヒーローなのー」


「は?」


「世界中を旅して、困った人がいたら助けるのがお仕事なのー」


「はぁ」


「だからあまり会えないの。パパがいないと寂しいけど、困ってる人を助けてるパパを私が助けてあげるんだー。

だから、もっと一緒に遊びたいけど我慢するのー」


「ふーん、そうなの。智子のパパはすごいわねー」


「でっしょー。自慢のパパなんだー!」


智子のパパって、一体何してる人なんだろう。。。余計わからなくなったわ。

でも、とりあえず機嫌は直ったようね。


っと、着いたわ。システム管理部。



ーーー



「さて、トト君。それじゃこっちのVRマシンをつけてそこのベッドに横になってくれるかな」


ミーティングルームから移動した面々。徳さん、古上君、そして僕は開発部の実験フロアにてVRマシンを使用して、トモりんの記憶を探しに行くべく準備を行っていた。


「・・・うん」


トモりんの記憶をなんとしてでも探しだして、元のトモりんに戻ってもらう。そのためなら何でもする!


「あ、トト君がつけるVRマシンね。他のVRマシンが不具合起こしたとき用に調査ができるハイスペックマシンなんだよ。

その分、体全体に電極つけたりするけどだいじょうぶだよね。」


な、何でもする。。。


「大丈夫大丈夫、痛いのは最初だけだから。あ、あと仮想空間での出来事は現実にフィードバックするから、なるべく仮想空間内では怪我とかしないようにしてね」


な、なんでも。。。


「じゃあ、早速だけど頑張って行ってくれるかな。接続先はシステム管理部のサーバーで間違いないね。

トト君のノートPC内にあった設定データ使わしてもらったから問題無いとは思うけどね」


「・・・うん、お、おねがいします。」


「よし、古上君、トト君のVRマシンの調整は出来たかい?うん、いい感じだね。ではスタートしようか」


「トト、智子さんの記憶データしっかり探せよ、死ぬ気で探せよ。てか死んでも探せ!絶対だぞ」


「わ、わかってる。」


そうして僕はシステム管理分サーバー(の内に構築した仮想空間)にログインした。



一瞬目の前が真っ白になったけど、次の瞬間にはサーバーの中に無事ログインできたようだ。


ログインした途端、チャットコールがはいった。

意識を集中すると、目の前にモニタが表示され、徳さんからのメッセージが表示されていく。


ーーー

徳田「トト君、問題なくログインできたかな。」


トト「はい、無事ログイン出来ました」


徳田「うんうん。ところで記憶障害とかはないかな?」


トト「特になさそうですね。直前までのことも覚えていますし問題なさそうです」


徳田「了解だ。今、君は自分のホームディレクトリにいると思う。なのでそこから移動してトモりんのホームディレクトリへ移動した後、記憶データの存在を確認してくれたまえ」


徳田「あー、それと今から解析用プログラムを送るから持って行ってくれるかな」


トト「わかりました」


ーーー


チャットを終了して、改めて周囲を見回す。

色々な形の箱が雑多に置かれている。これらはすべて僕が作ったプログラムファイルだな。


そして、先ほど徳さんが言ってた解析用プログラムはっと。。。


「あ、これかな」


銃のような形で、しかし銃と異なるのは先端がパラボラアンテナのように広がっているそれを手にとって確認してみる。


「ちゃんと解析用プログラムも外観設定してるんだ。」


ふと、解析用プログラムを持つ自分の手を見て違和感を感じた。


「あ、あれ。なんだこの手。」


自分の手を見ると、毛むくじゃらの手でさらに言うとニンゲンの手ではない。

自分の容姿を見ようと、必死に体を捻ったりしながらみていると、またチャットコールが入った。


ーーー

古上「あー、トト。お前の外観設定作るの面倒臭かったから、既成のアバター使ったんでよろしく〜」


トト「え・・、で、このアバターは何?」


古上「何って、見ての通り熊だよ。クマ。そっくりだろう?んじゃ、よろしくなー」

ーーー


て、適当すぎる。

クマになった自分の手をしばし見つめていたが、特に不自由もなさそうだったので(解析用プログラムも問題なく持てた)あきらめた。


「はぁ、アバターくらいはイケメンキャラ使いたかったなぁ」


ぼやいていても仕方ないので、トモりんのホームディレクトリに移動することにする。

当然そのままでは入れないはずなので、スーパーユーザーに切り替えてから移動することにする。


「えっと、su -」


そう唱えると、目の前に黒色の執事服(?)を着た男性が現れた。

なぜか頭には同じく黒色のシルクハットをかぶっており、手にはステッキ(と言っても魔法少女的なものではなく、老紳士的なあれ)が握られている。


「あー、君がトモりんが言ってたスーさんかー」


「用件はなんだ。」


「あぁ、はいはい。トモりんの、あ、ちがった。 tomokoのホームディレクトリに移動したいのでスーパーユーザーへの切り替えよろしく」


「パスワードを言え」


「えっと。tomorinmoemoemaditenshi」


「パスワード承認。あなたはルート権限の使用が可能になった。用件はこれだけか?」


「うん、ありがとね」


「では、私は用があるのでこれで失礼する」


「はいはい、じゃあね」


ふー、さて、それじゃトモりんのホームディレクトリに移動しますか。


「cd /home/tomoko/」


目の前が一瞬にして切り替わる。

無事トモりんのホームディレクトリに移動が完了したが、なにか変だ。


「ん、んー? 城?」


通常、サーバー内にあるファイルなどは、VRマシンで外観設定をしていない限り、大きさこそ異なれど普通の箱のデザインのままである。

しかし、目の前には巨大な城が立っていた。

トモりんのホームディレクトリにそんなのあったっけ。。。


「・・・あー、ゲーム用のVRデータ?」


唖然とその城を眺めていると、城の二階のテラスから誰かが出てきた。


「ようこそ、妾(わらわ)の城へ! 初めての客がクマというのもなんだかアレだが、歓迎するぞ!さぁ、ここまで来るが良い」


・・・黒色のゴスロリ風ドレスを着た少女。


「な、なんで?」


それは、どう見てもトモりんだった。

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智子の不思議な体験 ばっくえんどでべろっぱー @riseone

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