6th Choice..

『さぁ、いよいよ最後のゲームです』


残されたのは、サユリと俺。


ここまでくれば簡単だ。

俺が負ければいい。


『ルールは簡単』


フロアには並んだ2つの扉。


『2つの扉。片方はアタリ、片方はハズレ。扉を開けて進むだけ。簡単でしょ?』


ああ。簡単だ。


『制限時間は2分。さあ、選んでください』


「…ねえ、メール、来てる?」


「いいや」


画面には≪左へ≫の文字。


「本当?」


「ああ。」


「約束して…3分後、アタリでもハズレでもメールしないって」


「いいよ。でも、そのかわり…」


「そのかわり?」


「キス、してくれないか?」


「…。」


サユリは、返事をする代わりに微笑んで、そっと顔を寄せてくる。


目を閉じ、唇を重ねる…。


悔いは、ない。


『お取込み中、ごめんなさいね、お二人さん。そろそろ時間ですよ』


ゆっくりと唇を離す。


互いの目を見つめあい、うなずきあうと、俺は右の扉へと足を向ける。


「待って!私が先に選ぶわ」


そう言うと、サユリは右の扉の前へ。


「文句ないでしょ」


ああ。文句なんてないさ。


はは、人を誘導するのも上手くなったもんだ。


俺は、自分の策略に満足しながら、メールにあった≪左≫の扉へと進んだ。


サユリを死なせはしない。


『それじゃあ、せーの、で行きましょうか』


愛してるよ、サユリ…。


『せーの』


『ガチャ…』










ん…。




あれ?




生きてる…。




たしか、扉を開けて…。




まっくらで…。




つまずいて・・・。




『パッ』



いきなりついた照明に目がくらむ。



『パチパチパチ』


鳴り響く大勢からの拍手。


『おめでとうございます』


なに?


『お見事、アタリ!』


なぜ?


『ゲームクリアです!』


ようやく目が慣れる。


「うわっ」


俺が倒れていたのは、わずか1畳ほどのスペース。

その回りは、奈落。

その向こうにはガラス張りの観覧席。


サユリ?


右を見る。


開かれた扉。


その先に…床はない。


「ちょ、ちょとまて」


スマホ、そうだ、スマホは?


「スマホ、どこだ?」


『ああ。落としたみたいですよ、さっき倒れた時に』


「え?」


そんな。


落としたって、この下に…探さなきゃ。


「さ、サユリ…」


サユリも…この下…。


まさか、あのメール…。


サユリが…俺に?


『拾いに行こうなんてバカな事考えないでくださいよ?落ちたら死にますからね』


サユリ…サユリ…


「サユリーーー!!!」


『ひゃひゃ。楽しいショーをありがとう。みなさん、盛大な拍手を!!』


『パチパチパチ……』

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