赤い髪の想造師
あべりな
プロローグ
「きゃあー」
「何だ? 何が起こっているんだ……!?」
「助けてぇ!」
「全員退避だ! 早く避難しろ!!!」
窓の外から何かが壊れる音と共に、様々な人々の叫び声が聞こえてくる。
これは何度も見続けている僕の夢。過去に起こった現実。
僕の中で最も古い記憶。
「ソウ……」
僕はその声に顔を向けた。
「もし私がいなくなっても、貴方は私達の分まで生きるのよ」
そう言うと彼女は、僕の首にネックレスをそっとかけた。
「ソウをお願いね」
「ええ。命にかえてもこの子は守ります」
もう一人の女性が、僕を後ろから抱き上げる。
「それじゃ、行ってくるわ」
「姉様! きっと……きっと帰っていらして下さい!」
姉様と呼ばれた女性は、にっこりと笑うと、玄関から轟音の鳴り響く外の世界へ出て行ってしまった。
その後のことについて、僕ははっきりと覚えていない。
僕を抱き上げてくれた女性に守られるように大きな建物に連れて行かれたこと。その建物の一番奥の部屋で、僕はその女性にずっとしがみついていたこと。
外の騒ぎがおさまって少し後、姉様と呼ばれた女性が、この世を去ってしまったことを知った。
享年二十四歳。
有望な彼女の若すぎる死に、たくさんの人々が涙したという。
これが僕の中で最も古い、唯一の母の記憶だ。
赤い髪の想造師 あべりな @aberina
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