痛いネトゲ日記

百万の恵まれたるもの

痛いネトゲ日記

よーし、今日からネトゲで遊んでみよう。


遊ぶゲームは「空想ラビュリントス」だよ。

略して「空ラビ」だ。

運営会社は「㈱日本ネトゲ工業」か、

たしか、この会社は、ニートばかり雇ってRTMで貯めた金で、

「空ラビ」を開発したんだよな。

売りは、同時ログイン可能人数10万人のサーバに、

たった2人しかログインしてる事だよ!


俺は3人目になるぜ


うはwwwwwおKwwwwwww


運営姿勢は、なげやり過ぎって評判だが、

同時ログイン2人じゃ、しょーーーがNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE


とりあえずファンタジー系のネトゲらしいが、

実は、個性的なシステムが搭載されてるらしい


そうそう、このゲームで死ぬと、現実でも死ぬらしいんだよ。

まさか、冗談だよな?


でも、元は同時接続1000人はいたって話なのに、

今じゃ、2人だろ?

まさか……な……


さて、ついにログインだ。

キャラメイクは、髪は銀髪で、種族はエルフタイプ、色白で長身、剣と魔法が得意。

っとクリック


ピッ「キャラクターが出来ました」

性別>男

髪型>長髪、後ろでくくる

肌質>脂

装備>メガネ

身長>155

体重>90


ちょwwwwww全然違うキャラつくるなよwwwww


「ログイン」


剣と魔法は使えるみたいだな。

もし、本当に死ぬゲームだったら恐ろしいしな。

万が一のため、一応、チェックしてみるか。


早速、切腹…


痛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


マジ痛ー

し、死ぬ、

と、とりあえず回復の魔法……


なんとか治ったか。脂肪の厚みのおかげで、命をとりとめた。

それにしても、この痛み、ゲームで死ぬってマジだったのかよ。

俺は、どうすりゃいいんだ。


ん、向こうから誰か来たぞ


おいおい、すごい地響きだぞって、


デケーーーーーーーーーーーーーーー

そこらいらの山より、デケーーーーーーーーーー

アルティメットドラゴンだよ。


絶対に勝てない。

こいつに殺されたら、俺は確実に……死ぬ。

現実世界でも……


ど、どうすればいい!?


目の前に迫ってくるアルティメットドラゴン。

この窮地を脱するには、どうすればいい。

そうだ!

GMコールだ!

現実でも死ぬゲームなんだ、GMが助けてくれるだろう。


「おーい、ゲームマスター、助けてくれーーーーーー」

GM「案ずるより産むが易し」


ちょ、解決になってねーーーーーーーー

死ねよ、糞GM。いや、死にそうなのは俺か。


ギャーーー、踏みつぶされる。

ミシミシミシ

全身の骨がきしむ。


こうなったら最後に


_______________

  ヽ(・ω・`)ノ  フゥゥゥオオオオォォォオオオオゥゥ!

    )  )

 ((( < ̄< ))))


なんとか、ドラゴンの足に踏みつぶされないよう、踏みとどまるが、

これも、いつまで保つか……


ん、さっきのGMからコールだ。


GM「このゲームは現実でも死ぬゲームです。」

GM「死にたくなければ、あなたの1番大切な物を差し出しなさい」

俺「アルティメットドラゴンと経験値をお前にやるよーーーー」

GM「いらぬわーーーーーーーーーーーーー」


GM「殺れ、アルティメットドラゴン!」


グチャッ、ついに、俺は死んだ。

このまま俺は現実でも消えてしまうのか……


ドラゴンは去ったが、俺の体は休息に腐敗していく。

完全に塵になったらおしまいだ。誰か復活の呪文を……


うん、目の前にメッセージが。


「サーバとの通信が切断されました」


いきなり、現実の世界に放り出される俺。

ん?体が透けて見える。

目の前には、俺の死体……


やばい、マジで死んでる。

今の俺は、幽霊だ。

楽しみにしてたネトゲで、こんな事になるなんて。


まあ、ゲームの事は、サーバが復活するまで、どうしようもない。

とりあえず、幽霊の体を生かして、女の子の体にでも乗り移ってやるか。


俺には、思いつくような知りあいがいない。

しょうがない、墓地にでも行くか。

幽霊になった俺には、相応しい場所だしな。


墓地には、割烹着を着た古風な美少女がいた。

昭和の和風美人という感じだ。

この女の子に、乗り移ろう。


お、乗り移ったら、向こうから人が着たぞ。


「おーい、新婚早々、なにをやってるんだ?」


向こうからやってきたのは、彼女の夫らしい。

夫……結婚してるのか、この女の子は!


ということは、処女じゃないのか?

いや、初夜がまだなら、処女の可能性も。


俺は悩む。生まれてこんな悩んだのは初めてだ。

俺の乗り移った、この美少女が既にガバガバの可能性があるなんて!


そうだ!処女かどうか確かめるためには、

元の俺の体と、まぐわればいいんだ!

そうすれば、俺は童貞から救われる!!!!!!1


これも「空想ラビュリントス」をプレイしてたおかげだ!

ありがとう「㈱日本ネトゲ工業 」!


俺は何か叫ぶ夫を無視して、自分の部屋に戻った。

そこには、俺の死体があるはずだ!

扉を開けて中を見ると、俺の死体は


目の前には、ピンピンしている俺がいる!

嘘だ!

じゃあ、今、目の前にいる俺は、なんなんだ!


元死体の俺が、現美少女の俺に、話しかけてくる。


「お姉ちゃん!!」

可憐な美少女から発せられたセリフなら、ハァハァしただろうが、

目の前にいるのは、普通の野郎だ。


元持ち主の俺が言うのも何だが、この外見の奴に

「お姉ちゃん!! 」

などと呼びかけられても、嬉しくも何ともない。


だが、ひょっとして……


俺は目をつむり、勇気を出して、元俺にやさしくキスした。

「お、おねえちゃん……」

元俺が、弱々しくささやくと、その姿が光に包まれて変化していく。

そして、現れた姿は……


あのアルティメットドラゴンだった。

勇気を出して、自分にキスしたのに……この結果。


アルティメットドラゴンが咆哮した


「おー姉ーちゃーんーーー!! 」


ビリビリビリ

窓ガラスにヒビが入る。

アルティメットドラゴンが首を上げると、天井を突き破った。

とりあえず、揺れる家から俺は脱出する。


「おwwwwwwwwkwwwwwwwwwww」


1階の瓦礫から、すざまじい咆哮がほとばしる。

それは、かーちゃんが、アルティメットドラゴンに変化した姿だった。


う、嘘だろ…


じょんじょりんじょんじょろりん


思わず失禁する俺。

パトカーから降りた警官は、美少女の俺が失禁する姿に

ちんちんがおっきしている。


2匹に増えたアルティメットドラゴンが、

集まってきた野次馬に向かって、アトミックブレスを乱射した。


うわーーーーーぐあーーーーーーーーーーーー

人々が、次々と火だるまとなり、家々が燃えていく、

ど、どうすればいいんだ。


すると、おっきしたまま警官は笑っている。

「見ろ、人がゴミのようだ!」


すると、向こうから、この美少女の夫がやってきた。

「隠していてすまない、俺は空想ラビュリントスのGMなんだ」

「全ての元凶は、1人の悪のGMの暴走だった」

それはあいつだ!


夫は、警官を指さす。

「今から、アルティメットドラゴンとドラゴンと、悪のGMを消し去ろう」

だが、俺は気付いた。


あのアルティメットドラゴンは、元々、俺の体だ。

ドラゴンを消されたら、俺は元の体に戻れない。

しかし、アルティメットドラゴンを消さなければ、世界は滅びる。

俺は、どうすればいい?


そうだ、今は世界が危ないんだ。

俺の安直な判断で、世界の運命を決めて良いわけがない。

決断を先送りした俺は、それっぽく聞こえて、

なおかつ、意味不明なセリフで、自分を演出する事にした。


目の前の2人のGMに向かって言い放つ。

「あんた達も嫁にするならああいう娘にしな」


GM2人は絶句してる。

「嫁にするって……ああいうことか」

GMが指さした先では、

なんと2匹のアルティメットドラゴンが子作りを開始していた。


ちょっとまて、

あの一匹は、元俺。そして、もう一匹はかーちゃん。


こ、このまま放置しておいていいのか?


ドラゴンは子作りをしている。

その姿を見つめていたGM達の目つきが、妖しくなってくる。

GM「俺たちも子作りしないか?」

俺「はぁ?」

GM「これで子供が出来たら、お前も空想ラビュリントスのアカウントが1つ増える!これはお得だ!」


ダメだ。このGMは、ゲームと現実の区別が付かなくなっている。

ゲーム脳だ。

こんなGMと子作りして良いのか?

しかも、この体は、元々、他人の物だぞ。


俺がとまどってる間に、1戦をおえたアルティメットドラゴン達がやってきた。

アルティメットドラゴンの興奮は治まっていない。


「おー姉ーちーゃーんーーーーーー!! 」

一匹のアルティメットドラゴンは、警官、悪のGMにおそいかかると、

そのズボンを破り、丸出しになったケツに突っ込み始めた。


GM「ウホッ!ウホッ!ウホッ!ウホッ!ウホッ!ヤラナイカーーーーーーー!!!」

GMは叫んでいる。なんだか嬉しそうだ。

そして、もう一匹のアルティメットドラゴンが俺に向かって襲いかかってきた。


やめろ!

やめてくれーーー!


アルティメットドラゴンは激しく腰を振りながら、叫んでいる。

「んおぉおおおおおおおっ!んほぉ!

 アルティメットドラゴン出ちゃうのぉおおおおおおお!

 あるてぃめっとなせーしでお国がわからなくなっちゃうぅうううう!!! 」


そして、熱い迸り。

夫であり、空想ラビュリントスのGMであった男が冷静につぶやく。

「これは、出来たな………」

そのつぶやき声を聞きながら、

アルティメットドラゴンのアトミックブレスによって廃墟となった街の中、

俺は意識を失っていった。


数ヶ月後。


世界は、アルティメットドラゴンの炎に包まれた。

街々は焼け落ち、今はあちこちに、トマホークを持ったピンク髪のモヒカン族が、

バイクに乗って駆け回っている。

南のサザンクロスシティは、㈱日本ネトゲ工業によって支配されていた。


その街中。とある産院。そこには意識を失ったままの少女が1人。

「もうすぐ生まれますね」

そんな看護婦(ただしモヒカン女)の声が聞こえる。



俺は、なにか暗く暖かい部屋の中で。

トクットクッっと、脈打つ何かの音を聞きながら眠っている。




世界は、暗黒の時代だった。

㈱日本ネトゲ工業による支配と、今も続くアルティメットドラゴンの暴走。

しかし、この赤ん坊が生まれた時、何かが変わるかもしれない。


【おしまい】

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