『孤狼』勇者の起源
辻憂(つじうい)
原初
総体として把握したときにそれはただ際限なく小さくなり続けると同時に、結びつき大きくなり続ける砕片の途方も無く大きな流れであった。原初から流れであり誰が動かしたものでもない。ただ絶対の法則として最初から止まることがないのである。そして今日に至るまでこの流れに終わりはなくどこまでも続いている。
空白に思える空間にはぎっしりと小さくなり続けた砕片がつまっていた。あらゆる空間はこの砕片によってつながっており、孤立した空間はただ一つとしてない。あらゆる存在がこの砕片の統廃合によって成立していた。
同じ箇所にこの砕片は留まることができない。極度に近づけば大きく反発する力が働き、その反発力が連鎖していく。同じ場所に留まることができない砕片の連鎖反応の中で物理法則ができあがる。決して同一の場所に留まるわけではなく、他のより強い反発力によって砕片は隣同士に配置される。悠久のときの中で偶然に任せるままに砕片は大きくなり、やがて星となった。
宇宙空間に広がる砕片による圧力は水素を惑星にまとわりつかせる。うごめく砕片は熱を持ち、混合気体は水となり水は雲となって雷鳴を轟かせた。落雷の跡には有機物があった。
粘性をもった液体が泡立つと球体となって液体の中を漂いその気泡が割れることはなかった。気泡が落雷で出来た有機物を取り込む。いくつもの有機物を取り込んだ気泡は有機物と有機物を反応させて落雷由来以外の新たな有機物を生み出した。
小さな惑星が大きな惑星に押し込まれると小さな惑星と大きな惑星の有機物が混ざり合いまた新たな有機物を生み出した。そのまま数億という時間が流れ去った。
猿は石をつかって別の猿の頭を殴り仲間を食べる。その石が地面に落ち二つに割れた。その石の断面は鋭利であった。猿はその割れた石を使って他の大きな動物も殺して食べはじめた。凶暴な猿が生き残り、そうでない猿は死に絶えた。
文明が進む度に猿は凶悪さを増し、似た進化を辿った他の生物と争い、より凶悪さに磨きをかけていった。平穏を好む生物たちは争う生物を魔物と呼び、その王を魔王と呼んだ。
『孤狼』勇者の起源 辻憂(つじうい) @tujiui
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