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 再度あたりに人がいないか警戒しながら一歩いっぽ進んでいった。コンビニ裏の従業員口のすぐわきに、スカイブルーのポリバケツはおかれていた。とりあえず蓋をはずしてなかをのぞく。貧乏くさいが腹はとことんへっているし、そもそもこのバケツの中身が気になってしかたがなかった。

 それでもおれはいちおうあたりを警戒する。目と鼻の先のドアからコンビニのおやじがでてきたらいちだいじだ。たしかここの店長はかなり気性が荒かった。繁華街を歩いているとき、何度かどなり声をきいた覚えがある。そのときはカラスだかネズミだかにむかって掃除用のモップをぶんぶん振りまわしていた。たぶん泥棒と判断すれば誰が相手でも、そういうことをするおやじなのだろう。警戒するにこしたことはない。


 結果からいうと、から振りだった。

 最近は不景気だから、衛生管理やらロスカットやらって理由で弁当類は在庫をかかえないようにタイトな発注をかけるコンビニがおおい。売り切れたらしかたないという前提条件ありきの発注数。あとは次の入荷時間までに棚に商品がない状態が何分続くかという感じ。ここでも無意味なチキンレース。もちろん一分でも一秒でもブランクは短いほうがいいとされる。

 もし万が一ひとつふたつ残ってしまうことになったとしても、それは業者がすべて棚からさらっていってしまう。おにぎりひとつとってもそうだ。コンビニ外にでることはない。ようするにゴミ箱に移動するひまもないっていうこと。とうぜん、こんなところに廃棄弁当などはいってやしないのだ。

 それでもせめて菓子パンか賞味期限切れのスナック菓子くらいならとむきになって探し続けた。あたりに乱雑に転がる室外機が、ごうんごうんと景気よく鳴いている。

 きっとどこの店も室内は冷房をがんがんにきかせているのだろう。くそったれ。呪いの言葉を心のなかでつぶやいた。こっちがこんなに暑い思いをしているというのに、なかのやつらはいい気なものだ。

 最悪裸のまま捨てられた肉まんでもいいやと思っていたのに、この真夏のくそ暑い時期に、そんなものを求めるほうがどうかしている。ポリバケツはどれだけあさっても、コピー用紙や使用済みティッシュなんかの生活ごみしかでてこない。

 それでもおれはあきらめきれずに時間を忘れてあさり続けた。マユリからもらったチョーカーはたれてじゃまになったので、途中から首のうしろにくるりとまわした。背中側にヘッドがくる。集中、集中。

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