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まあ、いいや。
そう思いながら、ゆで卵をもう一口。ふかふかした黄身ごとかじる。
マユリは料理をすでにつくり終えたのだろうか、おれの首にチョーカーを引っかけたあともキッチンに戻ろうとせず、こちらをじっと見つめていた。不思議に思っておれは首をぐいと伸ばす。マユリの奥のキッチンをのぞきこむ。
「ああ、料理」
心を見透かす女がいった。
「できたなら、くわねーの」
そういった目でおれはふたたびマユリを見つめる。マユリは
「あっ」
マユリがソファを立ちあがる。跳ねるように動きが軽やか。パイル地のショートパンツの尻ポケットからケータイを抜いた。
「はい。もしもし」
ひとことふたこと、単語だけの会話を始める。うん、うん、わかった、はい、待ってる。なんともあっさり通話終了。
ケータイ電話を手にしたまま、再度おれのまえにしゃがみこんだ。
「ごめん。彼くる」
おれはマユリの奥にのぞくキッチンにちらと目をやった。手のこんだ料理がふたりぶん用意されてならんでいる。
なるほどな。そういうことか。
もうしわけなさそうなマユリの顔からは「さっさと帰れ」という無言の圧力を感じた。おれは卵の残りを口に押しこむと無言でソファを立ちあがった。
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