覚醒魔力

 大天使……それは妖精族の最高位である。

 魔神族と悪魔族の様に妖精族にも呼び方に違いがある。

 妖精族は一般的に人類よりも魔力が強い。

 しかしそのなかでも魔力成長の二段階目と言われている「覚醒」をした者は妖精族の中でも他の妖精族と分けて、使と呼ばれる。

 またとは魔力成長の二段階目に当たり、人類の場合才能がないとすることは出来ない。

 しかし人類は比較的をする者が多い。 妖精族がする者の方が稀である。

 その覚醒した数少ない天使族の中でもずば抜けて強い力を持つ者が四人いる。

 彼らは最強と呼ばれる女神族にすら匹敵する魔力を持つ為にこう呼ばれる。

 使と……



「大……天使!?」

 遊真は自分の耳を疑った。

「何で……だよ……」

 遊真は種族の最強の者がこんな所にいることに困惑していた。

(人類王は22才でもう戦場で戦ったり政治をしているのに……)

 魔力は13才~18才位までに成長し、25才位が魔力の最盛期だと言われている。

(つまりあいつは発展途上の状態で俺達の種族の王より強い……のか……)

 遊真は最初は驚き、尊敬の気持ちすら持ったが、今ではあまりの力の差に恐怖すら感じていた。

「まぁまぁそんなに困惑することないよ」

 翔一は遊真の肩に手をおき、落ち着かせる様な口調でそう言った。

「じゃあ……さっきの女の子は!?」

「あぁ、さっきの女の子の名前はウリエル。

 あの子も大天使だね」

「大天使が2人も……。 妖精族のトップ4のうち2人が学校にいるって事か」

「うん。 僕も知らなかったよ。 大天使のうち2人は僕たちと同じ位若いってことぐらいは聞いたことはあったけどね。

 僕もいつも王達の会談に出てる訳じゃないし」

 そう言うと翔一は手を叩き出口に向かって歩き出した。

「さぁとりあえず遊真、訓練は終わったし教室に戻ろう」

「あぁ……」

 遊真は元気なくそう答えた。


 教室に戻ると先程の緑髪の男の子と赤髪の女の子がいなかった。

 席に着いて待っていると教官が教室に入って来て教壇に両手を置くと、一言で今日の学校の予定を説明した。


「みんな今日は御苦労だった。 下校だ」


「やれやれ、入学式が戦闘訓練だけとはな……」

「僕も想像してなかったよ」

 二人で廊下を歩きながら翔一は笑った。

「そうだ、翔一。 訓練室使って一回勝負しよう」

「え!? 僕と……遊真が?」

「あぁ頼む。 確か訓練室って許可を取れば勝手に使っていいんだろう?」

 そう遊真は言った。

「うん……。 まぁ遊真がやりたいっていうなら別にいいけど……」

「サンキュ。 じゃあ行こうぜ」

 二人は訓練室に向かった。



「ていうかいきなりどうしたの遊真?」

 翔一は訓練室のドアを閉めてカギも閉めた。 訓練生の攻撃等が外に出ていかない様にする為のの決まりである。

「いや……俺もそろそろ出来るんじゃないかなと思ってさ……」

「なるほどね。 まぁ確かに戦闘中に覚醒する人類は多いみたいだね」

「あ、あと翔一」

「ん?」

「本気でやってくれ」

「……へ!?」

 魔力を使う戦闘は当然生身である。

 訓練とは言っても怪我はもちろんのこと、当然可能性もある。

「え……ちょ、ほ、本気って!?」

 翔一は困惑していた。

「あ、まぁ死なない程度には手加減してくれよ?」

「そりゃするよ!! 友達殺しちゃうかも知れないんだから!!」

 翔一は慌てて言った。

「……ちなみに翔一は俺は殺せるのか?」

「え、いや、友達なんだから殺すわけ……」

「いや、そういう意味じゃなくて」

 と遊真が遮り改めて訊ねる。

「俺ぐらいの強さの奴は殺せるのか?」

 遊真の意図を理解し、翔一は下を向いた。 それから遊真の方を向いた。

「遊真……はっきり言って悪いけど……

 君じゃあまだ……魔神族には

「……でも翔一は勝てると」

「それほど強くない魔神族ならね」

「なるほどな……分かった」

 遊真はそう言ってうつむいた。

「い、いや、でも遊真も覚醒したら勝てる様になるって」

 翔一がフォローすると、遊真は嬉しそうに微笑んだ。

「あぁ……だから俺は覚醒したい!

 だから翔一、ちょっと相手頼むわ」

 そう言うと遊真は身構えた。

「了解。 じゃあ全開でいくから!!」

 そう言った瞬間に翔一の体が輝きを放った。

(身体強化か……)

 遊真も同じ様に魔力で身体強化をした。

 そして次の瞬間に翔一が突っ込んできた。

(はや……!)

 そう思った瞬間に翔一の拳が遊真の腹にヒットしていた。

(くっそ……)

 遊真は負けじと翔一の自分の腹にパンチを打ち込んだ腕を掴んだ。

 そのまま腕を自分の左側に引っ張り、引っ張られバランスを崩した翔一の右脇腹に蹴りをいれた。

 翔一は遊真の蹴りを受けて吹き飛び、壁に激突した。

(どうだ……少しは効いたか……)

 そう思った時には翔一は既に次の攻撃体勢に移っていた。 膝を曲げて壁に激突した衝撃を和らげていたのだ。

炎玉フレイムボール

 翔一が火の玉を打ち込んできた。

 遊真も負けじと同じ魔力で応戦するがやはり1発1発の威力は翔一の方が上である。

(くそっ! このままじゃじり貧だ……!)

 遊真は防御魔力を使い、横へ跳んだ。

 翔一は遊真のシールドに向かって魔力の放出を続けている。 遊真がシールドの後ろから出たのを気づいていない様だった。

(今なら……)

 遊真は素早く右手を前に出した。

(とっておきを見せてやる!!)

「ライトニング……」

 すると翔一が自分に向けられた意識に気づいたのか、遊真に気づいて遊真の方を見た。

(遅せぇよ翔一! この術は俺の術の中で……)

「サンダー!!」

(最速だ!!)

 遊真の右手から一直線に雷が放たれ、翔一に襲いかかった。

 バリバリバリ派手な音を立ててと雷が炸裂した。

(どうだ……?)

 遊真は翔一の姿を確認しようとした。

 しかし翔一の姿が見えない。 遊真は辺りを見渡した。

(どこに……?)

 そう思った瞬間に頭に強い衝撃がはしった。

(何……が……?)

 薄れゆく意識と視界の中で遊真は後ろに翔一が立っているのが見えた。



「大丈夫、遊真……?」

「あぁ……痛てて……翔一、あの時何をしたんだ?」

 翔一は遊真の頭に氷を当てながら答えた。

「あー、あの時は覚醒魔力を使ったんだよ」

「覚醒……魔力?」

 遊真は首をかしげた。

「うん、大体の人が使える魔力は普通魔力と言われる身体強化と防御魔力。 そしてエレメントでしょ?」

「あぁ……そうだな。 まぁ俺はエレメントは炎と雷しか使えないけどな」

「いや、雷はかなり高度だから凄いと思うよ」

 翔一の返答に遊真は苦笑した。

「翔一は雷なんて簡単に使うだろ?」

「うん。 まぁ…五つとも使えるけど……」

「五つ!? そんなにあったっけ……?」

 翔一は頷いた。

「うん。 今度教えるよ」

「お、サンキュ。 あ、そうだそれでさっき言ってた覚醒魔力って何だ?」

「あぁ、覚醒の魔力っていうのは覚醒した者が使えるようになる第三の魔力のことなんだ」

「第三の……魔力……」

 遊真は呟いた。

「うん。 これはかなり個人差があってエレメントや身体強化の強化版だったり全く違う魔力の種類だったりするんだよ」

「へぇ、翔一の能力は何なんだ?」

瞬間移動テレポート! 凄くない?」

 翔一は自慢気に笑いながら答えた。

 遊真は翔一の自慢気な様子に少し面白くなり少し笑いながら頷いた。

「あぁ。 すごいな」

「遊真も覚醒したらどんな魔力が目覚めたか教えてね」

「覚醒出来たらな……」

 遊真は覚醒するのに楽しみが増えた気がした。

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魔力大戦~magical world~ アッキー @akio-blue-mountain

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