妖精王
「あの二人は僕より強い」
翔一の言葉が遊真は未だ信じることが出来なかった。
(今期の「人類魔力ランキング」一位は翔一だ。 だから少なくとも同期に翔一より強い人類はいない。
だったら人類より強い妖精族にはいる。 普通ならそう考えてもおかしくはない。
だけど翔一は全人類で五位なんだぞ……?
いくら妖精族でも人類のトップクラスの者より強い者は少ないはずだ……)
「あいつは一体何者なんだ……」
そう遊真は呟いた。
遊真が先程すれ違った2人について考えていると、校内に聞き慣れたベルの音が鳴り響いた。
「これより入学式……及び戦闘訓練を開始します。 新入生は戦闘訓練体育館 へ集合して下さい」
翔一はめんどくさそうにため息をついた。
「はぁ……いきなりか……」
「まぁこれでさっきの奴と翔一とどっちが強いかわかるじゃん」
遊真は翔一とは違い嬉しそうに少しイキイキしていた。
遊真からすれば戦闘訓練は待ち望んでいたものである。
「負けんなよ、翔一」
「まぁ訓練だから勝ちも負けもないけどね」
そう話しながら二人は体育館に向かった。
「えー、おはよう新入生の諸君。 いきなりだがこれより実際に魔神族と戦ってもらう」
いきなりの知らせにみんなは少しざわめいた。
入学して早々、人類を脅かす魔神族と戦えと言われたのだ。 当然の反応と言える。
「えー、静かに静かに。 正確には魔神ではなく魔神よりも一回り弱い悪魔族だ。
この学校に入学出来た君たちなら十分に倒せる相手である。
しかし怪我などをした場合直ぐに誰かを呼ぶように。
では各自訓練室で始めてくれ! 」
そう言われてみんなはバラバラに別れ、一人ずつ訓練室に入って行った。
ここでは訓練室と呼ばれる縦、横、高さがおよそ十メートル程の部屋がある。
ちなみに壁は魔力を使って作られており、非常に強固である。
この中で悪魔族や同級生と戦うといった戦闘訓練をする。
ちなみに悪魔族は人類達が住んでいる結界外に生息しており、魔神族より知能が低いと言われているが種族的にはほぼ変わりはない。
ただ人類や妖精族が魔神族より弱いということで悪魔族と呼んでいるだけの事である。
そして悪魔族は弱い為か強き邪悪な魔力を通さない結界をたまに通り抜けることがあり、その時に捕獲された悪魔族が訓練に回されている。
「さあ、やりますか」
そう言って遊真は軽く屈伸等の準備運動をし、訓練室に入った。
中に入ると悪魔族がこちらを見ていた。
体型は人の形で、色は黒い。口は何でも食いちぎれそうに大きく裂けていた。 そして背中からは小さな翼が生えていた。 サイズ的にはそれほど大きくはない。
「俺が倒す悪魔族はこいつか……」
悪魔は遊真を見るといきなり襲いかかってきた。
「いきなり来るか」
遊真が魔力を使うべく身構えた。
(先ずは身体強化だよな)
「
遊真の体が少し輝いた。
「よし」
片足を軸にして回転し、軽く悪魔族の攻撃をかわす遊真。
かわした後にがら空きの背中に拳を叩き込む。
「ギャアッ!」
悪魔は呻き声をあげ、壁に激突した。
「
遊真の回りに火の玉が浮く。 遊真は手を悪魔族の方へ向けた。
「終わりだ」
遊真は火の玉を悪魔に打ち込んだ。 悪魔族は炎に包まれ、その場に倒れた。
訓練終了! クリアタイム24秒!
遊真が訓練室から出てくると笛の様な音が鳴り、液晶画面にクリアタイムが表示された。
「なんだクリアタイムなんてあったのか」
遊真はそう言いながら先程翔一と分かれた方へ目を向けた。
しかし先程まで居た位置に翔一がいない。
そう思い、遊真が翔一を探そうとしたときに、翔一が訓練室から出てきた。 どうやら今終わった様だ。
訓練終了! クリアタイム10秒!
「……10秒!?」
「あ、遊真! 遊真も終わった?」
翔一が駆け寄ってきた。 全く疲れている様子はない。
息切れもなく、先程まで戦闘を行っていたとは思えない。
「お前10秒て……」
「あぁ、最初に炎の魔力で上に飛ばせてそこを風の魔力で切って終わりだったよ」
翔一は何の苦もなかった用にサラリと言った。
恐らく翔一は1歩も動くことなく相手を仕留めたのだろう。
「相変わらずすげぇや。 お前は……」
遊真は呆れた様に呟いた。 しかし遊真はそこで気になっていた事を思い出した。
「そうだ! さっきのやつは!?」
「ん? あぁえっと……あ、いたいた」
そのさっきの男の子は訓練室に入る所だった。
(多分直ぐに出てくんだろうな……)
遊真がそう思った瞬間に男の子が出てきた。
まるで訓練室内を見てきただけと錯覚するような早さである。
(は!? いや、いくらなんでも早すぎる……)
訓練終了! クリアタイム 3秒!
「3……秒!?」
「やっぱりあの子の方が強かったか……まぁ当然だけど」
遊真はその翔一言い方が気になった。
「なんだよまるでわかってたみたいに言って」
「さっきぶつかった時にも言っただろう僕よりあの子の方が……」
「そうじゃなくて!」
翔一の言葉を遊真が遮った。
「あいつを知ってるのか?」
「まぁ少し位は。 今日まで会った事はなかったけどね。
でもこれからは会う事になると思うよ」
「なんでだよ?」
「さっきあの子の名前を知ったんだ」
「何? なんだっだよ?」
遊真は首をかしげる。
「ミカエル。 最強と呼ばれし女神族にもっとも近いと呼ばれる大天使の名前で、
現在の妖精王の名前だ」
「だ、大天使!?」
遊真は再び言葉を失った。
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