2章 "あの場所"

「-"あの場所"か...」

ユウトはそう呟いた。

"あの場所"-東方の島国である故郷で、双子の兄であるカミトとしょっちゅう行き、遊んでいた、二人だけの秘密の-恐らく誰も知らない-場所。それは、深い森に囲まれ、特定の行き方でしか辿り着けず、また、出る時も特定の行き方でしか出られない、まさに秘境と呼べる場所だった。そして、二人の身に危険が及んだ時、どちらか安全な方がそこに逃げるという約束を交わしていた。だからあの時-カミトが男達に連れ去られる時、彼はユウトに「逃げろ。"あの場所"だ...」と言ったのだ。そして...

(こいつと出逢ったのも"あの場所"だったな...)


必死に逃げたユウトは、"あの場所"へと辿り着き、束の間の休息を得ていた。

(カミト...大丈夫だといいな…父さんと、母さんも...。僕はこれからどうすれば...。それより、あの男達は何なんだ?カミトのことを"魔王"と呼んだけど...。喩えなのか?それとも、あいつの存在の話か?......ん?魔王?魔王スライマン?まさか...だとしたら......やっぱりそういうことか...!カミトと僕には、精霊と交感する力がある。それは、伝説の魔王スライマンも然り。そして男らはカミトを"魔王"と呼んだ!もしカミトがその"魔王"だとしたら、双子の弟である僕も同じ"魔王"という存在な訳で...。!......僕が..."魔王"...。くそっ!どうすれば良いんだ!教えてくれよ...カミト...)

すると突然、

「ねぇ...。」

と、静かな空間に響く、鈴のように綺麗な声が聴こえた。

「だ、誰だ?!」

ユウトが驚いて振り向くとそこには、深海の様な深い蒼の髪と不思議な輝きをもつ紺碧の瞳を持った、とても美しい少女がいた。

そして...

「こんにちは。」

そう言って、微笑んだ。

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精霊使いの剣舞-生き別れの魔王- 黒羽雷架 @kurobaneraika

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