精霊使いの剣舞-生き別れの魔王-
黒羽雷架
1章 キオク
side-Kamito
「うう、ん」
カミトは呻き声を1つ上げ、目を覚ました。
(最近、妙な夢を見るな)
妙な夢、そう、妙なのだ。その光景を知っている感じはするのに、名前も場所も思い出せない。まるで、切り離されているかのように。
(教導院に連れて行かれる前の幼少期の記憶なのか?…だとしたら、あいつは一体...)
幼少期の記憶-既に喪っている筈の記憶、教導院で心を壊された時、共に壊された筈の記憶...それを何故、今になって思い出したのか...。そして、髪色と目の色こそ違うものの、カミトにそっくりの少年-あれは誰なのか。
「起きるか。クレアが待ってるだろうな...」
結局曖昧になったままそう呟き、カミトはベッドから出た。
side-Yuto
「また、あの夢か」
彼-カゼハヤ・ユウトは、そう呟いた。
何度目になるか分からない夢、かつて、双子の兄と共に過ごした、故郷での思い出、もう二度と戻ってこない、懐かしい日々。そしてあの日...絶対に忘れられないあの日も...。
そう、あるとき急に、兄が居なくなってしまったのだ。いや、連れ去られたと言うべきか。黒ずくめの服に白い仮面を付けた男達が、兄のことを"魔王"と呼び、連れ去った。両親の願いも虚しく、何処か知らない所へ...。兄は言った。
「逃げろ。"あの場所"だ。僕のことは心配するな。また会えるさ、きっと」と。
ユウトは誓った。「絶対に会いに行くよ」と。そして逃げた。"あの場所"と2人で呼んでいる2人だけの秘密の場所へ。
(誓ったんだ、オレは。絶対に会いに行くと。待ってろ、カミト。もうすぐ会える。あとちょっとだ。)
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