冬らしくあるこの冬景色
穴田丘呼
一助の望み
ふと立ち止まってみた。何かが見えた。あるべきものがそこにはなく、ないものがそこにあった。それは喜劇だ。
命は確かにあった。そのぬくもりがあるようにしてあった。だがやはりそこには何もないのだ。
回転する思考。あまたある冬の存在感。示し忘れて、凍える風。そこにほのかなぬくもりを感ずるのは、どの辺だ。
歩いている人がいる。どこに行くのだろう。少し考え直してくれないか。その先はまだない。その先はまだ新雪で覆われているのだ。
凍りついた湖面。その深さと深遠さと比べながら、橇を走らせている。あの辺りはきっと氷は薄いはずだ。死せるレベルなんだ。
冬が噛み付いてきて、目の前を塞ぐ。もう十分だ。命の陰りを通して、ぼくは歩くんだ。血と風雪に滲んだ、見ることのできない冬に向かって歩くんだ。
言の葉はそよぎ、疲れ果てた青白い顔。まだんなく、降り包む大きな氷の葉っぱ。
そこには何もない、と言いながら、言いながら、外をみた。
冬らしくあるこの冬景色 穴田丘呼 @paranoia
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