第7話

 あの告白からしばらくして、禁煙のご褒美といって彼女が渡してきたものはすぐには受け取れるようなものではなかった。けれど、俺はその申し出を快諾していた。断る、なんて選択肢は俺にはなかった。

 その後、俺はバイトから正社員に昇格した。今まではやんわりと断っていたから最初は驚かれたが、とある事情を説明したら、すんなりと受け入れてくれた。

 そして、数ヵ月後、彼女は高校受験も無事に済み、第一志望に合格をした。

 合格のお祝いをしに行った日、俺は望月さんと一つ約束をした。

 それから三年。今日は卒業式の翌日、その約束の日だ。俺は今、教会にいる。最原さんのご両親も後ろにいる。説明をしに行ったとき、ひどく驚かれていたのを今でも鮮明に覚えている。

 後方から扉の開く音が聞こえる。ゆっくりと歩いてくる音。その音が近づく度に実感がわいてきた。

 ゆっくりと、時間をかけて隣に来た彼女を見る。まだ幼さが少し残っていた彼女はすっかりと大人の、きれいな女性になっていた。最初は着ている、というより着られている、という印象だったそれも今ではすっかり似合う大人の女性に。

 神父の声が聞こえる。あの、有名な言葉だ。それに答える言葉は決まっている。あぁ、あれは皆、本心から言ってるんだ、そう実感した。俺は、その言葉を口にする。


「はい、誓います」


 隣で純白のウェディングドレスを着た彼女も同じ言葉を言った。

 俺たちは今日、田中家、望月家、それに最原家。それと数多くの友人たちに囲まれて結婚する。これからは幸せだけでなく、辛いことも待ってるかもしれない。でも、彩華と二人でなら乗り越えられる自信があった。だから、どんなときでも彩華を愛し続けよう。


 誓いの言葉の通り、死が二人を別つまで。


 今度のそれは何十年も先であることを神に祈りながら。





       fin.

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伝えたい想い 星成和貴 @Hoshinari

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