第6話 新クラス
Side 優子
テストの結果を西村先生から受け取りつつ、あの試験の日を思い出す。
結局、試験後家に帰った直後秀吉にバレてしっかり怒られてしまった。
理由を話し、どうにか他言無用にしてもらったけど…。
ともかく、西村先生からAクラス合格の通知を、秀吉の横で受け取る…。
「ねぇ、秀吉‥なんでFクラスなの?」
「…」
「こっちを見なさい」
確かこの子は美春ちゃんと一緒に勉強してたはずだけど。
「いや、その‥気分転換に演劇の練習をしたらの‥ちょぉーっと深夜までつい?」
「美春ちゃんも巻き込んで夜中までって‥はぁ、全くもう」
美春ちゃんの愛は正直凄い。秀吉に告白こそしてないものの、そのイチャつく様はすっかり恋人同士のそれだ。
そして、そんな美春ちゃんは秀吉のいう事は基本何でも聞く‥だから、演劇の練習にも付き合ったのだろう。
にしたって夜更かししてテスト中に寝落ちなんて笑い話にもならない。
「あの、西村先生‥もしかして、美春ちゃん‥清水美春さんってFクラスじゃないですか‥?」
「うむ‥本来他生徒の成績を明かすことは出来んが‥まぁ知り合いのようだし、さっき通知を渡したから良いだろう。その通り、Fクラスだ」
「あぁ、やっぱり‥」
頭の中にorzの三文字が浮かんだ。
もぉ、この子たちは本当‥。
「バカね‥」
「試験当日無理した姉上に言われたくはないのじゃ」
「秀吉っ」
「?」
他言無用でしょと秀吉にデコピンし、ハテナを浮かべる西村先生を置いて私たちはそれぞれのクラスへ向かった。
Aクラスに着くと、黒い長髪の綺麗な美少女、霧島翔子さんが話しかけてきた。
教壇に立ってクラス名簿の確認をしているようだった。
「おはよう、優子」
「ん、おはよう‥その様子だと、霧島さんがもしかしなくても代表?」
「‥うん。でも、優子がその気になったら‥」
「何を言い出してるのよ、私の実力はコレよ」
西村先生に渡されたAクラスの通知書には同時に順位も書かれていた。
ちなみに6位だ。熱でボーっとしてたし、加減も忘れないように心掛けていたおかげだ。
それを見せつけるが、霧島さんは首を横に振った。
「でも、一年生の時は‥」
「まぐれよ、マグレ」
そう一年生の時、私は3位以内‥正確には、2位3位同着という点数を取ってしまったのだ。
次席の久保君には悪いことをしたと今でも思ってる‥私の成績は、半ばズルのようなものだ。
こういうふうに順位付けされるような場合は、あまり高すぎる位は取らないように心掛けている‥というのは、私の自分勝手な言い訳だ。
(結局、自分が得になるように10位以内には入るようにしてるんだから‥ホントズルい)
・・・まぁ‥ともかく、その時の私の様子を見て霧島さんは私が高すぎる点を取ってがっかりしている、とバレてしまったのだ‥まさか気づかれるとは思っていなかった‥。
霧島さん曰く、優しい人は良く見てるから分かる、だそうだけど‥私優しいつもりないんだけどなぁ。
「でも」
「もー。気にしないでいいの。ほら代表?そろそろ始まるわよ?」
「…うん」
霧島さんを無理やり説得し‥納得してないようだけど‥席に着く。
こんな感じに、Aクラスで私の二年生初日が始まるのだった。
***
**
*
Side―F―
「すいませーん、ちょっと遅れちゃいました♪」
少し遅刻した吉井明久が、せめて第一印象は明るくしようと、自身に振り分けられた教室、Fクラスに元気よく入ると歓迎の一声が―――。
「早く座れこのうじ虫野郎」
「台無しだよっ!」
掛けられるはずもなく、堂々と罵倒された。
罵倒したのはFクラス代表、坂本雄二だ。
この大馬鹿達を率いる我らがリーダー様。彼は以前は神童と呼ばれるほどの少年だったが、今は御察しの成績だろう。
チョークすら用意されていない教室に入ってきた担任の福原慎先生が自己紹介を済ませ、不備が無いかを訊いた。
「先生、僕の座布団綿が殆ど入ってないです」
「我慢してください」
「先生、ちゃぶ台の脚が折れてます」
「ボンドが支給されますので、自力で直してください」
「先生、窓が割れてて風が寒いです‥」
「ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」
「…ここって、教室ですよね‥?」
「えぇ、
呆然とする一同を放って自己紹介を開始する。
廊下側に座っていた、木下秀吉からだ。
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。今年一年、よろしく頼むぞい」
可愛らしい容姿をしているが、彼は男である。
まぁ野郎が9割を占めているFクラスにはオアシスに間違いないが。
「………土屋康太」
別名ムッツリ―ニ。
「島田美波です。ドイツ育ちで、日本語はまだ小学生レベルなので、誤字をしたりしたら教えてください。趣味は身体を動かす事全般かな」
貴重な女子がそこにいた。
そんな彼女に一同が反応するが、彼女が反応したのはある二人に対してだった。
「ん?美波??何故Fクラスに?」
「お師匠さま!私は嬉しいです!」
「美春、師匠はヤメテ」
「あ、ごめんなさい」
秀吉と、その隣に座っているこれまた女子。
何故か師匠と呼び慕っているのが気になるが、話に割って入れる雰囲気ではない。
「秀吉に美春…ア、アハハ。実は緊張しちゃって寝坊を‥」
「姉上に何を言われるか‥‥」
「さっき廊下ですれ違った時にもう言われたわ……今日作ってきたおやつは抜きって言われた」
半泣きになるほどおいしいのだろうかとクラス中が注目した。
次は自分の番だ、と吉井明久が席を立った。
「え~~っと、吉井明久です。気軽に「ダーリン」って呼んでくださいね♪」
少しお茶目を入れた自己紹介だが、帰ってきたのは野太い「「「ダーリン」」」コール。
美波は馬鹿らしいと冷ややかな目で見つめ、秀吉は当然のようにスルー。
美春は「秀吉くん以外に言う気はありません‥!」と小さくつぶやいていた。ダーリンコールに紛れて聞こえなかったらしいが。
「コホン。
数箇所ツッコミを入れたいところだが、その時桃色の綺麗な声が割って入ってきた。
「あ、あの…遅れて、すいま…せん」
息を切らせて入ってきたのは、白いウサギの髪留めが特徴的な桃髪の女の子。
丁度自己紹介の途中に入って来たということで、黒板の前で自己紹介をすることに。
「あ、あの。姫路瑞希といいまあす。よろしくお願いします…」
目線が集まる中、生徒の一人が質問をした。
「えーっと、なんでここにいるんですか?」
失礼な質問に聞こえるが、クラス中の疑問だった。
彼女はFクラスではなくAクラス確実、それも主席級の点を取れるだろうと期待されていた生徒だ。
そんな彼女がなぜこんなド底辺に‥?と思うのは自然なことだ。
「そ、その。当日は熱を出して休んだんです」
なるほどーと一同が納得する中、明久は一つ思い出していた。
(そういえば、優子さんは大丈夫だったのかな‥)
風邪を引いて辛そうにしていた彼女のことを心配する。鉄人‥もとい西村先生からクラス分けの結果をもらうときに訊いたが、彼女はAクラス入りを果たしたらしい。
凄いと感心してしまうが、それだけ無茶をしたのだろうと思うと、一言言っておきたい気持ちが沸き立った。
(後でAクラスに行こうかな…あ、その前に)
Fクラスの酷い設備のせいで体の弱い瑞希が咳をしていた。
これも心配事項だ、と代表である雄二に話しかけるのだった。
そしてその日、FクラスがDクラスに宣戦布告をしたという報告が全校クラスに告知された。
転生―私と彼らと召喚獣- 一般人D @000-000-000
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