第3話 運命の書
書庫で本を読みふけっていたレピオスは、伯爵家の書庫の中で眠っていた、とある一冊の本に行き当たる。
本の名は
古代エラスに記された本の写本であった。
いくつかの図形が記された本を、レピオスは魔法陣の本か何かだと思って読み解き始めた。
はじめは意味が分からなかった。
定義・公準・公理……
そこに記されているのは、今まで見たこともない概念と単語だらけだった。
しかし、見たことのないモノだらけというのは、古い本を読み解くうえでは日常茶飯事の事だった。
それらを丹念に読み解いていくのが楽しいのだ。
円、三角形、四角形、多角形
球、立方体、多面体、正多面体
直線、面積、体積、座標
素数、有理数、無理数、円周率
レピオスが、『これは魔導の書でない』と気付くまでに、丸々ひと月ちかく時間が経っていた。
頭の中と、紙の上に書かれた図形だけで、完結している学問。
見たことのない学問だった。
定義から導かれる定理。
問いに対する答えを定理を使って、解く。
そのすべてが、レピオスにとって新鮮な驚きと興奮だった。
同じものに等しいものは、互いに等しい
同じものに同じものを加えた場合、その合計は等しい
同じものから同じものを引いた場合、残りは等しい
不等なものに同じものを加えた場合、その合計は不等である
同じものの2倍は、互いに等しい
同じものの半分は、互いに等しい
互いに重なり合うものは、互いに等しい
全体は、部分より大きい
当たり前の事だ。しかし、それら
真理が積み木のように演繹によって証明されれてゆくのだ。
古代エラス学問。
それは数百年前に魔導士たちによって滅ぼされた国の、打ち捨てられた遺産だった。
落第魔法使いのパラダイムシフト @zig
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