堪らないわね、この異世界

@saitoyuri

第1話私の名前は冬海雪音

 朝、目を覚ます。

 顔を洗い朝食をとる。

 私立應華(おうか)学園の制服に身を包む。

 鏡を見る。

 身長160cm 腰まである長い艶のある黒髪 Cカップ 

 まさに、クールビューティー。


「ああ、今日も美しい。」


 ______________


 自分で言うのも恥ずかしいけれど、

 私、冬海雪音(ふゆみ ゆきね)はこの学園では誰もが知る存在である。


 全国有数の進学校である應華学園(おうか学園)の生徒会長であり、

 成績は入学時から2年生の冬に至る今まで常にトップ。

 教師陣は私を見るといつも笑顔。


 それだけでなく

 全国有数のお嬢様学園のミスコンであり、陸上部部長にして国体出場選手。

 他の生徒の私を見る目は憧れと嫉妬。


 学園内での私はさながら昨夜読みふけったラノベのヒロイン…?


「おっと、いけないわね。ラノベだなんて、気をつけないと。 」


 なんて独り言を言いながら登校していたら

 後ろから聞き慣れたテンポの足音が近づいてきた。


「冬海せんぱい!!先週の陸上の大会すごかったですね!私、感動しました!」


 この子は私の可愛い後輩である早瀬里奈はやせ りな

 まだ中学生の面影が残る、

 なんても言っていいくらいに可愛らしい顔、ツインテール。

 アニメで言うところの妹キャラ、といった感じかしら。

 陸上部の一年生で事あるごとに私を追いかけてくる…可愛いけれど。


「ふふっ、ありがとう早瀬さん。

 早瀬さんも自己タイム更新したそうじゃない、おめでとう。」


「えっ、見ていてくれたんですかっ!?ありがとうございます!!

  私ももっと練習して冬海先輩みたいに早く走れるようになりたいです!」


「早瀬さんは大切な後輩だもの、いつも見てるわよ?

 目標にしてくれるのは嬉しいけれど、

 練習のし過ぎで怪我をしないように気をつけてちょうだいね?」


「ふぇっ?あ、ありがとうございますっっ!!

  じゃ、じゃあ私はこれでっ!失礼しまsっつ。し、しつれいします!!」


 そう言って私の可愛い後輩は自分の校舎の方に駆けて行った。

 可愛いわね…。驚いて、照れてる姿がこう…小動物のように可愛らしい。

 私の彼女になってくれないかしら。

  なんて迫ったら彼女、どんな顔をするのかしら…?ふふっ。


 っといけないわね。

  可愛い女の子を見るとついつい頬が緩んでしまうわ。気をつけなさい、私。


 

―――――――「香澄、暇」


「仕事してください会長。気だるげな雰囲気がお似合いじゃないですよ。」


「今日の分はもう終わったわよ…そうだっ!ラノベ読んでいいっ?」


 ベシッ


「学園に不要物の持ち込みをしないっ!

 まったく…会長がこれだから副会長の私が……ブツブツ」


 学園のマドンナである私の頭を容赦なく叩くこの子は私の幼なじみ。

 生徒会副会長にして成績は私に次ぐ2位。

 裏表ない性格は真面目で誰からも頼りにされるような、

 アニメでいう委員長キャラ。


 そして何よりも、「化けの皮を被っていない時の私」

 を知っている数少ない人物。

 つつみ 香澄かすみ

 私より少し低い身長で髪はショートカット、赤縁のメガネ。

 胸は…相変わらず大きいわね。「E」ずるい、羨ましい。世界よ滅びろ。


 そんな香澄と私だけがいる放課後の生徒会室。

 いまここには学園のマドンナはいない。


「香澄さん。私は仕事をおわらせたのだからもう帰ってもいいでしょう?

 大好きなライトノベルの新刊が今日、発売されるのだけど。いいわよね?」


 私はアニメ、ラノベ、ゲームが大好き。

 「化けの皮を被っていない」というのは…そういうことよ。

 

「はあ、あんたは本当にその趣味はどうにかした方がいいと思うよ…。

 学園のマドンナ様がアニオタで毎夜ラノベを読みふけってるなんて、

 あの可愛い後輩ちゃんが知ったらなんて言うか楽しみね。 」


「大丈夫よ!

 香澄が口硬いことは誰よりもよく知ってるし、信じてるから!

 それより、ねっ!いいでしょう?し・ん・か・ん! 」


「はあ…まあ、こなす仕事は終わらせたのなら…いいわよ…。

 その代わりもう学園に不要物を持ち込まないように!」


「あいあい!っじゃ、また明日!」


「はーい。気をつけて帰りなさいよ〜」


 今日は私の大好きなライトノベル

「俺の彼女と妹の間違ったラブコメ!」の最新刊4巻の発売日。

 作者が怠けたせいで半年も待たされてしまった。

 ちゃんと仕事をしてほしいものね。

 

 私は自転車に乗ると力いっぱい漕いで書店に向かった。


 それこそ、信号の赤色を青色だと錯覚するくらいに全力で…。

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