第31話 小は大を兼ねる
戦闘がメインという俺の予想は的中した。
そのフロアに存在する敵を全て倒せば、次の扉が開く仕組みのようだ。
俺達が――もといJKとアルチュールが苦労して倒したモンスター達は、まだ最初の試練だった。レベル四〇くらいの敵は、一番弱かったのである。
「うわぁっ! でかっ!」
扉――というか、壁ごと大きく横にスライドして次の道が解放されるのだが、開いた壁からいきなり鋼鉄の巨人が出てきた。
レベルは五〇。
さっきの蝙蝠や虫に比べて、そこまで強化されているわけではない。
が、とにかく大きい。
身長は二〇メートルくらいだろうか。お台場に行った時に見たガンダムがちょうどあれくらいの大きさだった気がする。
異世界に取材に行った時には、こんなに大きい敵と遭遇した事はなかった。
「アミューさん、ああいうのもそっちの世界にいるのか?」
「いるネ。遺跡の宝を守るスプリガンだヨ!」
なるほど、宝の番人か。
まさにダンジョンっぽくていいじゃないか。
「ホンモノのスプリガンは大きくて強いケド、ゲームだから攻撃できると思うヨ」
「それもそうか」
どれだけ大きさに違いがあっても、一ダメージの価値は同じだ。
ゲームで本当に助かった。
「よっしゃ、行くぜっ!」
俺はスキルによって取得した銃を取り出すと、スプリガンの顔面に撃ち放つ。
ようやくまともな武器が使えるようになった。
銃弾がスプリガンの顔に当たると、強烈なエフェクトと共にダメージが表示される。
どうやらMMOでもヘッドショットの概念があるらしい。弱点をつけば、それだけダメージが増える仕様なのか。
「ほい、せんせー! 新しい弾だよ!」
「サンキュー!」
JKから弾丸を受け取ると、新たに銃に装填する。
一度見たスキルを全て覚えられるというJKのチート技のおかげで、弾丸生成のスキルも使えるようになっていた。
銃や俺自身は弱くても、強力な弾があるおかげで戦力になるのだ。
「おらぁぁぁぁぁっ!」
叫びながら銃を放ち、スプリガンの足止めをする。
そこにJKとアルチュールが接近する。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「たぁぁぁぁぁぁぁっ!」
JKも剣を召喚し、アルチュールと息を合わせてスプリガンの足を斬る。
足にダメージを受けたスプリガンは大きくよろめいた。
そこへさらに二人のスキルが炸裂する。剣から放たれたビームのような斬撃が、文字通りスプリガンの胸元で爆発したのだ。
二人がかりの最強スキルをくらえば、レベル五〇のスプリガンもあっという間に電子の海に消えてしまった。
「やったぁ!」
「はい!」
ハイタッチをするJKとアルチュール。
なんだか高校の部活動を見ているようで、ほっこりする。
やはり女の子がイチャイチャするシーンは絵になる。
「そうだ、取材として写真に収めておこう」
俺はスマホを取りだし、写真を撮ろうとする――
が、そういえばこれはゲームだった。スマホなんて持っているわけがない。
クソッ、スクリーンショット機能はないのか!
何かそういう機能はないかとメニュー画面を呼び出すが――
「なんだ?」
さっきから画面の端を動き回っているものがある。
まさか飛蚊症か? いや、そうじゃない。
「きゃーっ!」
JK達の悲鳴。
「どうした!?」
「ま、まだ敵がいる! いるけど――」
「これは厄介です」
JKもアルチュールも身構えているが、敵の姿は見えない。
いや、よく見れば簡易ステータスが表示されている。
何かが高速で動いているんだ。
目を凝らしてその敵の名前を見ると――“クリーピングコイン”と表示されていた。
クリーピングコイン、つまり金貨の姿をした魔物だ。
怨念が取り憑いた金貨が動く、つまりポルターガイスト現象のようなもの。
「ひゃああああああっ!」
アミューさんも叫んでいる。
コインに襲われたのか!
JKもアルチュールもさっきから身もだえている。
「ふ、服の中に、モンスターがっ!」
「く、くすぐったいヨっ!」
女性陣が全員身体を押さえて震えている。
なるほど、服の隙間から入り込んで攻撃してくるモンスターなのか。
巨大なスプリガンは相手にできても、ここまで小さいモンスターだと逆に剣技が当たらないわけだ。
こいつは厄介だ。対処法は少ない。
「なぁ、服を脱ぐという手段は――」
「できるわけないでしょっ!」
やっぱりJKに怒られた。
「ひぃぃぃっ! アハハハハハハ!」
「くっ……! こ、これは……!」
「ニャーーーーーッ!」
身体を押さえて悶絶する三人。
いったい服の中でどのような攻撃を喰らっているのだろうか。
そしてなぜコイン達は俺に攻撃してこないのか。
で、結局どうしたのかというと――
GMに先制攻撃した罪で、アミューさんの権限でまとめて消滅させられた。
いいのか職権乱用!?
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