第12話


 講義が行われる会議室に到着し、空いている席に雲雀と共に座る。すでに何人かの人が座っていて、こちらに視線をやってくる。

 この講義を受けているのはほとんどが会社に雇われている軍人か軍人志望で、俺達のような自分で会社を運営している奴やフリーの存在は数が少ない。

 そもそもこの訓練所は人族の血が入っているか、人族の配偶者が居ないと受けられないのだが……純粋な人種が滅びかけているので種族がバラバラだ。

 ちなみに残念ながら俺達の知り合いは少ししか居ない上に一緒に入った同期は優秀なので既にここを卒業している。

 同期が居なくなれば種族が違うし、純粋な人なので遺伝子改造や特殊な力を持つ彼等と違ってステータスが低い上に子供の頃から訓練されてきた彼等と違って初心者なのだから避けられる。また、バディは雲雀が居るからますます組む事がない。


「本日の講義を開始する」


 講義の準備をしながら雲雀と待っていると、会議室の前方にある扉が開いて講師である軍人が入ってくる。階級は大尉だ。これが艦長や指揮官になるのなら左官教育も入るのだが、機動兵器のパイロットはそこまで含まれない。

 ここで貰える階級は卒業できれば少尉で、卒業できなければ貰えない。その場合は機動兵器を持っていたり、乗れたりしたとしてもただの無名な傭兵からスタートになる。


「まずは資料を配る。確認するように」


 前に立った大尉が操作すると、メールが送られてくる。添付ファイルのデータを開くと契約書が表示された。


「この契約書は実機による訓練を行う為に必要な物だ。我々が保有している機動兵器は旧式だが、とても高価だ。保険に入っているとはいえ、破損度合いによっては弁償してもらう事もある。当然、契約できない者には試験を受けさせないので、よく考えるように」


 受け取った契約書には言われた内容が詳しく書かれている。といっても、あくまで訓練による過度な破壊や命令違反などの時に徴収されるようで、普通に訓練をしている限りは保険の適応範囲内だ。


「基本的に命令通りに行動すれば問題ないようですね」

「だな。保険を適応して修理できる適応範囲もしっかりと書いてある」


 基本的に訓練ではペイント弾を使うので壊れる事はほぼない。壊れる可能性がある関節部分の部品は適応内なので安心だ。


「今回の試験はあくまでも宇宙で機動兵器、ガーディアンアースTYPE2に乗って輸送船の周りを移動するだけの簡単なピクニックだ。命綱や船から操作する自動制御システムも搭載してあるから、遭難するような事はよほどの事がない限りはない」


 安全対策は万全なようだ。教官が映像を映し出しながら説明してくれる。これでわかったのは命綱について。命綱は活動している映像を見た限りではロボットに括りつけてある鎖だ。おそらく、故障などで流されたり、持ち逃げたりしても鎖で引き寄せられることになる。


「これってフラグですか?」

「かもしれないが、まずないだろう」

「ですよね」


 緊急事態として考えられるのは海賊や隕石の接近など、色々な事が考えられる。まあ、アニメとかじゃないんだし、そんなトラブルイベントが起こるなんて事はまずないはずだ。


「向かう空域はE3だ。まず事故も戦闘も起きんので、上手く事が進めばここでバルーンを的にした射撃訓練も行う。各自、そのつもりで復習をしておくように。

 それと必要な物はリストで送信してある。準備して一〇〇〇には輸送船に搭乗しておけ。遅れる奴は置いていく。以上、解散!」


 教官が部屋から出ていくのを俺達は立ち上がって敬礼し、見送る。


「先輩、一〇〇〇なら移動時間を抜いて後一時間はありますね」


 雲雀の言う通り、現在の時刻は〇八三〇なので時間の余裕はある。


「まずはリストを確認して準備をする」

「宇宙服を着るのは時間がかかりますしね」

「そうだな」


 女性は特に時間がかかる。特に宇宙服は一人で着られるようにはなっているが、それなりに時間はかかってしまう。


「他の準備は……もしもの為にサバイバルキットと一週間分の水や食料、酸素や防寒具。それに遺書ですね」


 宇宙で遭難=ほぼ志望だからな。サバイバルキットは必須だ。これには沢山の物が詰め込まれている。例えば遭難した時に水分を無駄にしないために尿をろ過して飲料水に変えるキット。食べ物を判定して毒の有無を確認する機械など、本当に様々だ。これが有ると無いとじゃ生存率が大きく変わってくる。


「遺書に関してはアバターだから必要かどうかはわからないが……」

「一応でしょう。それにアバターも高いですし、誰かが拾って届けてくれるかもしれません。期待薄ですが」


 ジャンク屋とかも存在しているのでまず届かない。届いても遺品ぐらいだ。またアバターの復活だって一度は死亡しているので資産の引継ぎなどをしないといけないため、遺言書など用意しておかないと色々と拗れるらしい。

 このような遺言書の作成が出来た敬意には、こちらで殺されて間もなくリアルで死んだ事例があり、その場合はこちらに残った資産の扱いでかなり揉めたそうだ。なので、事前に遺言書を用意しておけばその通りに処理されるだけなので企業や個人としてはそのように行っている。

 隠されている事実として、本当にゲームで殺されてリアルでも死亡するなんて事はない……と思いたい。どうかはわからない。そもそも、未来の世界で仮想世界なんて俺が生まれた時代からは考えられない事だし、可能性は否定できない。


「先輩?」

「なんでもない。それよりも準備したら宇宙服に着替え、輸送船で予習しながら待機しようと思う。雲雀はどう思う?」

「確かにその方がいいですね。乗り遅れる事もありませんし、そのようにしましょう」


 雲雀も納得してくれたので、立ち上がって雲雀に手を差し出す。彼女は恥ずかしそうに頬を染めて照れながらも握り返してくれる。

 雲雀を引き起こし、一緒にまずは必要な物が用意されている資材管理部へと向かい、書類を書いて入る時に購入したサバイバルキットなどを受け取る。

 洗浄されているとはいえ、感染症などの病気を移されても補償はされていない。この事も含めて他人が使った物なんて使いたくもないので購入している。いや、嫁達の物なら使用済みでもいいかもしれない。意図せず口に含む時もあるしな。


「洗浄と消耗品の補充は……確認しました。保存食と推進剤は余分にください」

「二人分ですか?」

「はい。二人分でお願いします」


 雲雀が確認して購入している間に俺は宇宙服を受け取ってこちらも係りの人と一緒に確認する。壊れていたり、異常があったら即死とはいかないまでも高確率で死亡するからな。


「エアーチェック問題なし。次をお願いします」

「はい。密閉性を確認します……こちらも問題ありません」


 二人分のチェックを終えたら、宇宙服を持って移動する。雲雀がサバイバルキットなどを持ってくれているので少しは楽だ。ちなみに重量的にはエアータンクとかもあるし、デブリを防ぐために鉄とは言わないまでも、重たい素材が使われているのでこちらの方が重い。





 訓練所に併設されているアマノミハシラのドック。そこにある更衣室で宇宙服に着替える。当然、雲雀とは別の場所だ。

 重たい宇宙服を着込んでから更衣室の外に出るが、雲雀はまだ来ていないので目の前にあるガラスに隔てられたドックの中身に視線を向ける。

 ドックには停泊している訓練所所有の輸送船があり、そこにトラックに乗せられたずんぐりむっくりとした大きなロボット、機動兵器が運び込まれている。

 ガーディアン・アースTYPE2。全高15メートル。無数の装甲板が施されており、太った鎧のような姿で背中には大きな箱を背負われている。箱や足にはスラスターが設置されていて、移動や姿勢制御などに使う。

 ガーディアン・アースTYPE2は耐久と頑丈を求めた盾役のような機体だ。素人の訓練用としてはこれ以上ないだろう。乱暴に扱っても壊れにくくいので訓練用の機体として使われている。

 武装は手にライフルで、脹脛にミサイルポット。肩にバルカン。腰にそれぞれが選べる近接戦闘武器だ。基本的に武器は実弾でビーム兵器なども存在するが、どれも高価なので訓練所ではシミュレーターでしか使わせてもらえない。

 高速戦闘を考えてスキルを取ったので俺にとっては難しい機体だ。重すぎてスラスターを全開にしても碌に加速しない。もちろん、宇宙空間なので速度をしばらく出し続ければどんどん速度は増していく。

 だが、その分だけコントロールが難しくなって曲がれないし、Gが馬鹿みたいにかかる。

 ちなみに俺はスキルのお蔭で耐えらるから、かなりの速度を出して一気に方向を変えようとした。だが。その時にシミュレーター上で機体が空中分解して教官に怒られた事もある。


「まあ、想定していた機体ではないが、それでも実機に乗れるというのは良い物だな……」


 思わず呟いてしまったが、ロボットに乗って自由に宇宙を駆けるとか、最高じゃないか。それに広大な宇宙を戦艦に乗って旅をして、色々な惑星を探索して冒険や観光をするというのも楽しそうだ。

 もっとも、可能な限り安全が確保されているとう前提でだけどな。アバターだからこそやってみたいと思える。現実なら大人しく趣味としてロボットに乗り、宇宙ステーションを運営して商人になった方が無難だ。


「……あ、お待たせしました……」


 考えながら搬入されていく輸送船に目を向けていると、近くにある更衣室の扉が開いて雲雀が出てくる。

 雲雀は俺と同じ訓練所で貸し出されている重い宇宙服の女性用に身を包んでいるが、何かあったのか元気がなくなっている。


「どうした? 元気がないが……」

「なんでも、ありません……」

「なくはないだろう。話せ。これから実機に乗るんだ。何かあれば困る」

「それは……」


 話し辛そうにしているが、体調不良なら休ませないといけない。一応、雲雀のバイタルチェックを行うが、少し乱れはあるが体調には問題なさそうだ。そうなると、後は心の問題か。


「実は……」


 雲雀が口に出そうとしたら、女性用更衣室の扉が開いて複数の人が出てくる。出て来たのは20代前半だと思われる大学生くらいの女性と18歳ぐらいの高校生だと思われる少女だ。

 彼女達の耳が尖っていたり、獣耳が生えていたりはしていない。顔立ちも俺達と同じで、黒髪である事から日本人のようだ。確か、るり達と出会ったあの部屋に居た気がする。


「っ!?」


 すぐに雲雀が俺の宇宙服を掴んでくる。どうやら、雲雀の元気が無くなった原因は彼女のようだ。


「へぇ、その人がご主人様なんだ~?」

「あ、この人って確かロリコンの人ね」

「マジで~?」

「あの時、率先して小さい子に声をかけてゲットしてたわ」

「キモ。でも、雲雀にはお似合いかもね~?」


 ケラケラと笑っている。雲雀の表情を見れば彼女達を睨みつけているが、否定する事はできない。

 実際にるりやさんごを妻にして孕ませようとしているし、彼女達よりは外見年齢が高いとはいえ雲雀とも年齢は離れている。

 もっとも、年齢的にるりとさんごは16歳以上のはずだ。先生が宣言していたし、おそらく事実だとは思う。

 それに俺達はコールドスリープから目覚めたのだから、同じ時代の存在ではない可能性が高い。そうなると技術力の差から老化を抑えて若い姿で長生きするような物があってもおかしくはない。

 実際、ただの子供にしては二人の精神は外見年齢と比べると高いので、可能性がないわけでもない。


「ねえ、雲雀。奴隷になってロリコン野郎に身体を貪られるのはどんな気持ち? 教えてよ」

「私も知りたいかも。こうはなりたくないし~?」

「貴女達は……っ!」


 雲雀が拳を握りしめて唇を噛みしめている。こいつらの目的が何かはわからないが、雲雀に相手をさせるのは良くないな。そもそも誰だ?


「雲雀、誰だ?」

「……この人達は柏木さんの奥さんです……」

「ああ、なるほど。どうりで見覚えがあるはずだ」


 柏木の妻か。雲雀が忌々しそうに憎しみを込めているかのような声を出しているので、おそらく雲雀を嵌めた奴等か。それならしっかりと対応しないと駄目だな。


「なによオジサン。いやらしい目で見ないでくれる?」

「そうよ~私達は潤くんの物なんだから」

「ああ、そのような目で見る事は一切ない。誤解をしたらのなら謝ろう。俺は君達に感謝している」

「「「え?」」」


 二人に合わせて雲雀も良くわかっていないようで思わず不思議そうに聞き返してきた。


「先輩? どういうことですか? この人達は私を……」

「何、彼女達のお蔭で柏木の毒牙にかかる前に雲雀のような可愛らしい美少女を妻に迎え入れられたのだから、感謝のはかけるさ」


 そう言いながら、露出している頬に手を添えて撫でてやる。すると教え込まれている雲雀は手に頬を擦りつけてきた。


「それに雲雀はもう俺の女なのだから、前の男を気にする必要はない。そうだろう?」

「そう、ですね……確かにそうです」

「感謝しているのなら、お願いがあるんですけど~」

「なにかな?」

「雲雀を譲ってくれません~?」

「「は?」」


 思わず二人で聞き返してしまう。


「潤くんが連れ戻せっていうんだもん。もう他の人に買われて奴隷になったって言ったら救いだせってね~」

「そうそう。だから、渡してよ。雲雀は元々柏木家に入ったんだから問題ないよね?」


 馬鹿みたいな事を言っているが、雲雀の意見を聞いてみよう。本人がどう思っているかが大事だ。


「雲雀は戻りたいと思っているか?」

「いえ、まったく思っていません。先輩とルラちゃんとラピスちゃんが居るこちらの方が断然過ごしやすいです」


 良かった。ここで戻りたいとか言われたしばらく立ち直れそうにないからな。

 

「そういう訳で断る」

「は? 正気で言ってんの?」

「もちろんだ。だいたい渡せと言われて渡すと思っているのか? 考慮に値しない妄言を吐かないでくれ」

「まあまあ、落ち着いて~。じゃあ、購入代金を支払ったら渡してくれるんですね」

「先輩……」


 不安そうに雲雀が俺の宇宙服を掴んでくるので、彼女の頭に手を乗せて安心させてやる。


「まず二億を貰う。そうしたら考えよう」

「「なっ!?」」

「せ、先輩……」


 雲雀が涙目になってこちらを見詰めてくるが、安心して欲しい。あくまでも貰えば考えるだけだ。そう、考えるだけ。渡すか渡さないかを考えて綿なさいを選ぶだけだ。

 二億という金額は雲雀が負わされた借金一億と彼女から奪った機体の代金と考えれば妥当な値段だろう。これで借金を返済し、自由の身になってから改めて雲雀がどうするかを決めればいいと思う。

 もちろん、俺の嫁として居てくれるのなら歓迎するが、その辺りは雲雀の自由意思で決めてもらうべき事だからとやかく言わない。


「高すぎるわよ!」

「そうですね~足元見過ぎです」

「俺が雲雀を手に入れるために支払う事になった金額も含まれているのでな。最低でもこだけ貰わないと話にもならない」

「そんなの私達には関係ないじゃない!」

「雲雀にかかっている代金なのだから、関係なくはない。まあ、どうするかは任せる。雲雀、行くぞ」

「は、はい……」


 雲雀の手を掴んで輸送船に向かう通路へと移動していく。


「待ちなさい! それなら雲雀を賭けて勝負よ!」

「ルールと掛け金は?」

「私達と機動兵器による戦闘よ! 掛け金は雲雀! あんたが勝ったら雲雀を諦めるわ。こっちが勝ったら雲雀を貰う!」

「断る。話になっていない。俺達の方にメリットがないからな」

「……まあ、そうですね。私は正式に認められた先輩の所有物です。それを奪おうとしているのにそのような勝負を受ける理由なんてありませんよね」

「ああ」


 だいたい雲雀本人も俺の大事な妻だし、まだわからないが雲雀のお腹には俺の子供も居る可能性が高い。だというのに引き渡すとかありえない。


「ふざけんじゃないわよ!」

「ふざけていません」

「まったくだな。そもそも機動兵器による戦闘という事だが、どういうルールでやるつもりなんだ?」

「そんなの、当然それぞれが所有する機動兵器を使ってに決まってるじゃない!」

「生憎と俺達は動かせる機動兵器を持っていなくてな」

「それなら借りたらいいじゃない!」

「それでは公平ではないだろう。条件を揃える……いや、そもそもこちらが挑まれているのだから、やるとしても勝負のルールはこちらで決めさせてもらわなければ話にもならない」

「なんだかんだ言って負けるのが怖いんですね~。本当に男ですか~?」

「負けるのが怖いのは当たり前だろう。ただの模擬戦闘ならともかく、負けたら雲雀を失うというのではそもそも受ける理由自体が俺にはない」


 最低限、公平なルールに見せ掛けたこちらが有利なルールにし、確実に勝てるように布石を打たなければいけない。ギャンブルは余裕がある時にやるものだ。今みたいに雲雀を賭けてリカバリーができない状況でやるべきではない。


「あ、先輩。そろそろ行かないと予習する時間がなくなってしまいます」

「それもそうだ。行こうか」

「待ちなさい! このロリコン野郎!」


 無視して移動する。そもそもロリコン野郎というのなら、もっと年齢を下げてから来るべきだ。そうすれば万が一にも話を聞いてやるかもしれない。いや、あの性格ならないな。






 無事に輸送船へと到着し、搭乗手続きを開始する。係りの教官に敬礼してから挨拶をし、IDを送信して乗船許可をもらって船内へと入る。


「先輩……二億で私を売るんですか?」

「売る訳ないだろ」


 雲雀の頬を低重力の中で移動しつつ、むにむにしながら言ってやる。


「え? でも、考えるって……」

「考えるだけだ。冷静になったらわかるだろう?」

「えっと、つまり……二億だけ貰って考えるだけ考えてやっぱり止めたですか?」

「そういう事だな」

「き、汚いです……」

「大人は汚いんだ。だから、雲雀も借金を背負わされただろう?」

「そういえばそうでした……」

「相手に言質を取らせずに契約書はしっかりと確認し、できる限り有利な方向で契約する。

 相手が身内やこれからも付き合いたいと考える場合はどちらにも利益が出る形で契約する。

 後者が基本だが、相手がこちらにばかり不利益を与えようとしてきたのなら、こちらも家族や仲間を守るために敵対するのは当然だ」

「……これから、契約する時は先輩に確認してもらいます」

「俺だけじゃなくて家族全員で確認した方が良いな。とくにラピスが要るんだから、情報収集してもらって安全かどうかを確定させてから結んだ方がいい」

「そうします」


 とりあえず、雲雀の不安は解消されたようで笑顔を見せてくれた。一応、これで大丈夫だとは思うが、先程の女達が言っていた事から柏木は雲雀をまだ狙っているみたいだしな。



 目的の部屋に到着したので床に降り立つ。扉にある認証機械に手を充てると、自動で扉が開く。

 中に入り周りを見渡すと数人が席に座っていた。どうやら、俺達が一番先というわけではないようだ。


「雲雀、どこに座る?」

「窓際がいいですよね?」

「そうだな。じゃあ、あそこにしよう」


 輸送船で空いている席の窓際に隣り合って二人で座り、雲雀を窓際の奥に座らせてから廊下の方に座る。

 またアイツ等や別の奴が雲雀にちょっかいをかけてくるかもしれないから、雲雀を奥に送り込んでおく。


「それじゃあ、復習と予習をしようか」

「はい。プログラムをリンクさせます」

「頼む」


 椅子に取り付けられているシートベルトを装着し、雲雀から送られてきたプログラムのリンク要請を受託して訓練を開始する。

 網膜にコクピットの映像が映し出され、それぞれの詳しい説明が表示されていく。それが終われば雲雀と一緒に確認しながら動かし、操作ミスがないように身体に染み込ませていく。

 いよいよ実機による訓練だ。ここで失敗してやり直しとか絶対に嫌なので、出来る限りできる事はやりきる。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

宇宙を掛ける者達 ヴィヴィ @228177

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ