《児童絵本》森の学校④ 未来のともだち!



 最近、

 くま先生は

 どこか様子が

 変ですよ。



 森の学校で

 勉強を教えてくれている時も


 ボンヤリしてたり

 ソワソワしてたり。



 何か別のことが

 ずっと気になるみたいです。



***




「きっと

 ぼくたちに言えない、

 かくしごとがあるんだよ」


 サンクくんは

 胸を張って言いました。



「聞いたら教えてくれるかしら」


 リノンちゃんは

 首をかしげています。



 今まで

 くま先生が

 皆にかくしごとなんて

 したことがありません。



「聞いちゃ

 いけないことかもしれないわ」


 ポリィちゃんが

 ひかえめに

 こっそりと言います。


 ちょびたくんも

 うなずきました。


 くま先生は

 今まで

 たくさんのことを

 話してくれました。


 話す必要があるなら

 きっと話してくれるはずです。




「くま先生…


 何かを

 悩んでいるんじゃなあい?」



 ヤンヤンちゃんは

 心配そうにつぶやきました。


 大人のくま先生が

 悩んでいることを

 皆に解決出来るとは

 思えません。


 でももしかしたら

 くま先生の

 力になれるかもしれません。


 くま先生ひとりより、

 皆で協力するのです。




「一体何が原因なのか、

 調べないとな」


「ぼんやりしている

 くま先生をほっとけないよな」



 チルルくんと

 ウーノくんが

 ピョコピョコと

 こうふんしながら

 言いました。



「でも迷惑をかけちゃダメよ」


 リノンちゃんが

 パタパタ翼を広げます。


 ドンタくんは

 難しい顔でう~んと

 考えています。



 どうしたらいいか

 皆なかなか

 名案がうかびません。



 ヤンヤンちゃんは

 パッと顔を上げました。


「お母さんたちに

 相談してみるわ」



 くま先生は大人です。


 大人の悩みは

 同じ大人の方が

 わかると思ったのです。



 皆は家に帰って

 お父さんお母さんに

 くま先生のことを

 どうしたらいいのか

 相談することにしました。




 ちょびたくんは

 家に帰ると


 いつもひとりです。



 ヤンヤンちゃんは

 家族がいます。


 リノンちゃんも

 家族がいます。


 チルルくんも

 ウーノくんも

 ドンタくんも

 サンクくんも


 森の向こうから来る

 ポリィちゃんも


 夜しか会えない

 アクビちゃんも


 皆みんな、

 家族がいます。




 ずっと

 ひとりぼっちだった


 はぐれオオカミの

 ちょびたくんは


 森の学校の

 皆と

 友達になれました。



 だからもう

 今では

 ひとりぼっちじゃありません。


 だけども時々

 皆が家族の話をする時


 ちょっとだけ

 胸がツンと痛くなります。



 この気持ちを

 わかってくれた


 だいすきな友達の

 カプリくんも

 今はいません。




 カプリくんは

 青虫でした。


 カプリくんの

 お父さんとお母さんは

 チョウチョウです。



 親子で一緒に暮らす

 皆とは違いました。



 カプリくんも

 ちょびたくんと同じ


 ひとりぼっちだったのです。




 ちょびたくんは

 今でも時々


 カプリくんの

 豆の木のお家に


 こっそり

 遊びに出かけます。



 他の青虫くんや

 チョウチョウさんたちには

 出会えますが


 カプリくんには

 会えません。



「また来ているね、

 あのオオカミ」


「豆の木を

 食べちゃったらどうしよう」



 森の学校の仲間以外は

 ちょびたくんが

 優しいオオカミだということを

 知らないのです。


 新しい友達には

 なれません。




 次の日、

 学校に行くと


 皆がわいわい

 楽しそうに話をしていました。



 くま先生の話です。



 リノンちゃんのお母さんは

 森のことを

 何でも知ってる

 物知りで


 皆のお母さんたちに

 色々な話を

 毎日届けているので


 森の大人たちは

 くま先生のことを

 皆知っていました。



「くま先生のお家に、

 もうすぐ

 赤ちゃんが産まれるのよ」



 女の子たちは

 特にうれしそうに


 キャアキャアと

 おしゃべりをしています。



「心配してソンしちゃったな!」


 ウーノくんは

 憎まれ口をたたきました。


 でも顔は笑っています。



「何かお祝いをしようよ」


「赤ちゃんが生まれたら

 皆で会いにいきましょ」




 くま先生が

 やって来ました。


 皆に

 赤ちゃんのことを聞かれると


 くま先生は

 恥ずかしそうに

 笑いました。



 家族が増える

 くま先生の幸せを思って

 ちょびたくんも

 とてもうれしく思いました。



「いつか

 森の学校の

 新しい仲間になるから

 楽しみに待っていてください」


 くま先生は

 少しかしこまって

 皆にお願いしました。


 くま先生の新しい家族が


 いつの日か

 ちょびたくんの

 新しい友達になるのです。



 くま先生が

 お父さんになったら


 赤ちゃんに

 くま先生を

 取られてしまうような


 そんなさびしい気持ちも

 本当はあったのです。


 でも

 かわいいこぐまの友達が

 増えたら

 すてきだと思いました。



 ちょびたくんは

 皆にまぎれて


「は~い」と元気に

 返事をしました。




             ~おしまい~




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る