《児童絵本》森の学校② とくべつなともだち!
はぐれオオカミの
ちょびたくんと
小さな青むし
カプリくんは
大のなかよしです。
朝
学校へいくときもいっしょ。
何をするにもいっしょ。
おうちへかえるまで
ずぅ~っといっしょです。
二人は
あんまりいっしょだったので
ことばを
口にだしていわなくても、
そのときの
いきづかいひとつで
おたがいのきもちが
わかってしまうほどでした。
うれしいときも
かなしいときも
おっかないときも、
てにとるように
わかります。
森の学校のみんなは
なかよしでともだちだけれど
ちょびたくんにとって
カプリくんは
とてもとくべつな
そんざいだったのです。
ちょびたくんは
カプリくんにとっても
じぶんのそんざいが
おなじように
とくべつなんだと
おもっていました。
ある朝。
いつものように
ちょびたくんは
カプリくんのおうちへよって
カプリくんの
名まえをよびました。
これからいっしょに
学校へいくのです。
カプリくんは
いつものように
ちょびたくんの
ちょうど
手のたかさにあるはっぱから、
ちょこんと
かおをのぞかせて
「おはよう」と
でてくるはずでした。
だけど。
この日は。
まてども
まてども
カプリくんは
でてきません。
いいえ、それどころか
へんじのひとつも
きこえてはこないじゃあ
ありませんか。
ちょびたくんは
学校がはじまる
ギリギリのじかんまで
カプリくんを
まちつづけました。
一人きりでかよう
学校への道のりは
なんだか
いつもよりとおくって
ちょびたくんは
ぐったりしていました。
学校へいくと
ちょびたくんは
くま先生に
カプリくんのことを
そうだんしました。
くま先生は
「カプリくんは
おやすみです」といっただけで
ちょびたくんは
ガッカリしていました。
ほんとうは
「どうしたんだろう、
しんぱいだね」とか
「すぐにさがしにいこう」とか
いってほしかったのです。
きょうしつでは
そんな
ちょびたくんにきづいた
にょろにょろヘビの
サンクくんが
目ざとく
こえをかけてきました。
「どうしたのぉ? ちょびたくん。
なんだか元気がないみたいだけど」
かおをあげた
ちょびたくんに
「あれぇ?
カプリくんがいないよぉ?」
その
すっとんきょうな
サンクくんのこえに、
ちかくにいた
ともだちが
みんなあつまってきました。
なんだなんだ?
どうしたどうした?
でも
ちょびたくんは
なにをきかれても
だまって
くびをよこにふるだけです。
だって
カプリくんが
どうしてしまったのか
ちょびたくんにだって
わかりません。
「つまりこれはじけんね!」
リノンちゃんが
こうふんしていいました。
「ケンカしたわけでもないのに、
とつぜんすがたをけしたカプリくん…」
サンクくんが
しんみょうなかおつきで
うなずきます。
「学校がおわったら
カプリくんのいえにいってみよう」
いつもは
おっかないかおの
いのししドンタくんのことばに
ちょびたくんは
パッとかおを
かがやかせました。
ほうかごになって
サンクくんと
リノンちゃんと
ドンタくんが
やくそくのとおり
あつまりました。
ちょびたくんが
みんなを
カプリくんのおうちへ
あんないしました。
カプリくんのおうちは
まめの木です。
はっぱがたくさんあって
中のようすは
よくわかりません。
「どこにカプリくんはいるのかしら」
リノンちゃんが
まめの木のまわりを
とびました。
「まめの木を
なぎたおしたら、みつかるかな」
ドンタくんのことばに
サンクくんが
あわてていいます。
「カプリくんのいえをこわしちゃうだろ!
ボクが中を見てくるよ」
サンクくんが
ほそい体をうまくくねらせて
まめの木の中に
入っていきました。
ちょびたくんも
そとから
カプリくんのすがたを
さがします。
「
同じ色なんだもの みつからないわ」
リノンちゃんは
ドンタくんの
あたまにとまりました。
「おーい、いないのぉ?
カプリくーん」
ドンタくんがよんでも
へんじはやっぱりありません。
やがて
まめの木が
いっしょうけんめい
さがしつづけても
カプリくんを
みつけることは
できませんでした。
「明日になったら
かえってくるかもしれないわ」と
リノンちゃんが
ちょびたくんを
はげましてくれたけれど、
その夜
ちょびたくんは
ほとんど
ねむることが
できませんでした。
そうして
カプリくんは。
つぎの日も。
そのつぎの日も。
ずぅっと
すがたをけしたまま。
ちょびたくんは
なすすべもない日を
なんにちもなんにちも
すごしました。
森の学校のじゅぎょうで
えをかいているときも
ちょびたくんの
あたまの中は
カプリくんのことで
いっぱいです。
いつもなら
ちょびたくんのかいたえは
うっかりとおった
カプリくんのあとがついて
『がっさく』になりました。
今日は
なにをかいても
ちょびたくんのえは
カラッポです。
ぽとりとおちた
なみだのしずくが
じわ~り
えのぐのいろを
ひろげるだけでした。
だいすきなはずの
おひるのごはんも
あじがしません。
こんなに
おいしくないごはんが
あるでしょうか。
さみしくて
さみしくて
ちょびたくんのこころには
ぽっかり
あながあいてしまいました。
ヤンヤンちゃんが
ちょびたくんのために
お花のくびかざりを
つくってくれました。
かぜがそよぐたびに
やさしいかおりがしましたが
いつも
カプリくんののっていた
ちょびたくんのかたが
きょうは
ひんやりしていました。
その日のほうかごになって
ちょびたくんは
くま先生に
よばれました。
くま先生は
ちょびたくんに
いっさつのノートを
わたしていいました。
「これは前に
みんなにもわたしたノートで、
カプリくんのものだよ。
なんでも
じゆうにかいてもらっているけど、
ちょびたくんに
見てもらいたいページがあるんだ」
くま先生が
開いたノートに
カプリくんのさくぶんが
かいてありました。
ところどころ
インクがにじんで
よく
よめないところもあります。
「今日
ちょびたくんのかいたえをみていて、
おもいだしたんだよ」
くま先生は
「よんでごらん」と
ちょびたくんに
ノートをわたしてくれました。
ちょびたくんは
字をよむのが
まだあまり
とくいではないので
たいへんでしたが
いっしょうけんめい
よみました。
“ だいすきなともだちといると
あんまりたのしくて
わすれてしまうことがあります。
ひとりになるとおもいだして
かなしくなります。
もうすぐおわかれだなんて
さみしすぎていえません。
だって
春はとおすぎるんだもの…… ”
ちょびたくんが
よみおわるのをみはからって
「それから先生
しらべてみたんだけど」と
くま先生は
ぶあついおおきな本を
とりだしました。
くま先生が見せてくれたのは
『いきものずかん』でした。
そこには
カプリくんとおなじ
青むしくんが
たくさんえがかれています。
「ちょびたくんに
この本をかしてあげるから、
カプリくんのことをしらべてごらん。
何かわかったら
明日学校で
みんなにはっぴょうしてくれるかい?」
くま先生の手が
ずしりと
ちょびたくんのかたに
おかれました。
わたされた本も
おもたかったけれど
ちょびたくんは
だいじに本をかかえて
いえへといそいで
かえりました。
――その夜。
ちょびたくんは
ひさしぶりに
ぐっすりねむって
ゆっくり
ゆめをみていました。
たくさんの
ちょうちょさんとあそぶ
春の日のゆめでした。
~ おしまい ~
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